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110話 破砕


「なんだ?このふざけたボンボンは?」


 私は怒っている。

 予選を通過して本選に来たはいいものの礼節に欠ける弱そうなやつしかいない。

 殿下も今日は正式に私の試合を見に来られている。

 もっと手ごたえのありそうな者と戦いたかった。

 だがここには容姿端麗なだけのチャラい男しかいない。

 カット・フォン・レオルドと言ったか?

 そいつは見るからに動きにくそうな金色のフルプレートを着て体格に合わなさそうな大きな両手剣を持っている。

 

「強敵を用意したと第一皇子殿下からは聞いていたが私の聞き間違えだったかな?品性に欠ける黒鎧を着た華奢な少女しかいないぞ?」


 男が煽るように言ってきた。

 ああ、これはだめだな。

 見た目に反して強いことを期待したがダメそうだ。

 予選ではたたき上げの者達と戦えた。

 もちろん弱かったがこの者はそれ以上に弱そうだ。


「弱そうなのはあなたでは?その鎧、見るからに弱そうです。戦場ではあなたのように自身だけが積みあがった者が一番最初に死んでいくのです」


 私は煽り返した。


「なにを!」


 案外すぐにキレた。

 まあこの類の者は沸点が低い。

 王国との戦線でもよくこんな王国兵を見かけたな。 

 全員2日以内に死んでいたが。


「ちょうどいい。せっかくですから戦場の基本を1つ教えてあげましょう」

「なに?」


 そう言って私は兜をかぶった。 

 この鎧は軍の指揮官用の鎧を自分で改造した愛用品だ。

 前進オリハルコンでできていてその下にも更にオリハルコンの鎖帷子を着ている。

 だがオリハルコンだけあって軽く、動きやすい。

 兜には戦場で指揮官の位を表す兜飾りがついている。


ジャキンッ


 私は何も言わずに剣を抜いた。


「両者構え!」


 相手は教えられる内容がわからず混乱していたがそれをよそに試合は始まった。




ー--------------




「始まったようだな」


 第一宏至が自慢げに言う。

 負けるなどつゆほどにも考えていないようだ。


「そうですね2人の雄姿を見ましょう」


 雄姿と言っても相手の方は瞬殺されるだけだろうが。


「両者構え!はじめ!」


 司会が開戦を告げる。


「はッ!」


 相手の騎士が走り出す。

 キラキラした鎧は見た目通り重そうだ。

 騎士は必死に走っているがあまりスピードは出ていない。


ドンッ!


 ある程度近づくと相手の騎士が踏み切った。

 重そうな両手剣を高く掲げ、振り下げる。

 誰もがリールの兜に剣が叩きつけられると思ったが結果は違った。

 

バリンッ!


 何かが割れる音がフィールドに響いた。

 それと同時に唖然とする相手騎士が見えた。

 騎士の重厚な両手剣がリールの軽そうな片手剣にはね返され接触点から放射状にひびが広がりガラスのように割れたのだ。






ー--------------





「装備は身の丈に合った機能性重視の物を着けろ、これくらいは教えてやる。戦闘の基本中の基本だがな」


 私は砕け散った自分の剣の破片を見て唖然とする騎士に言った。

 にしてもやはりオリハルコンは軍事界に革命を起こしたな。

 鋼鉄の剣がガラス同然だ。

 

シュッ!


 少しその間抜けな姿を眺めた後剣を首元に突き付けた。


「降参するか?それともまだ戦うか?」

「こ、、降参する、、、、」


 騎士は悔しそうに言った。


「勝者!リール・フォン・フォーク!」


 会場は静まり返っている。

 恐らく殿下と北部軍の者くらいしか状況を理解できてないだろうな。


次回投稿は金曜日になります。



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