107話 未来の契り
「一番奥の部屋に行きましょう。公国の使節団はそこです」
「了解しました」
見張りの死体の処理が終わると隊長はヘイを率いて私についてきた。
使節団のエリアからはフィールドは見えない。
使節団はこの大会に合わせて政治的な交渉を第一皇子とするために来ているからだ。
その代わり各部屋は豪華絢爛そのもので第一皇子が各国に財力を見せつけるために金銀が多用されていた。
中にはシャンデリアが釣り下がるほど天井が高い部屋もある。
「廊下は出入り口に比べて静かですね」
「そうですね」
正面と裏口にはあれだけ入念に警備を置いていたにしては各部屋に繋がる廊下は静かだ。
まあ使節団が交渉する内容には黒いものも含まれているし盗み聞き防止のために当然だろう。
「目的の部屋までの経路、確認終わりました」
「ありがとうございます。行きましょう」
1人の兵が先行して経路に人がいないことを確認してくれた。
このエリアは大小さまざまな部屋があるため廊下が入り組んでいて見張りと鉢合わせしたら大変だ。
私たちは廊下の一番奥の部屋、公国使節団の部屋に着いた。
「隣の部屋が空いています。入りましょう」
公国の隣の部屋は空き部屋だったはずだ。
私たちは隣の部屋に入った。
部屋に入ると兵達が手慣れた手つきで盗聴を始めた。
壁の薄い部分を探してコップのような盗聴用の道具で隣の公国の部屋の会話内容を探り出した。
「聞こえます、どうぞ」
セッティングが終わると隊長が場所を開けてくれた。
私は耳を道具に当てて隣部屋の会話内容を聞く。
複数人の声が聞こえてくる。
「やはり余裕だな」
「我が公国の筆頭騎士が負けるわけないでしょう」
「しかし卿も運がよかったですな」
「何がですか?」
トーズの声だ。
離れ離れになってから結構経つが声は変わっていないようだ。
「ほら、卿は失脚して売られたハンナ令嬢の婚約者だったでしょう?卿は粛清の対象にならなくてよかったですなと」
「そう、、、ですね、、、」
トーズの声は苦しそうだった。
建前のために無理やり絞り出している声だというのが見え見えだ。
話しかけてる使節の一人もそれをわかっていてからかっている。
「それはそうと第一皇子との会談の予定は取れたのか?」
別の使節らしき者が話し出した。
この声は聞いたことがある。
叔父にゴマをすっていた貴族の1人だ。
「それが大会中は会談を受け付けていないらしい。」
「なに?毎年当日決定の会談が行われていたではないか?我々もそれ目当てで来たのだぞ」
「恐らく例の第五皇女のせいでしょう」
「ああ、あの偉そう開会式での賜っていた小娘か。小娘のくせに偉そうにするわ」
「しかし北部では支持が絶大だと聞きます。仲良くなっておいて損はないかと」
「まあ第一皇子と連絡が付いたら考えてみるとしよう」
今にでも突入してトーズ以外皆殺しにしてやりたいところだが抑えて計画を進めよう。
「隊長、お願いします」
「了解しました」
私の命令を聞いて隊長は部屋を出て行った。
トントンッ
しばらくすると隣の部屋にノック音が鳴った。
「トーズ卿はいらっしゃるでしょうか?」
隊長が係のフリをしてトーズを呼ぶ。
「はい、ここにいます」
「次の試合のために武器の確認と申請をお願いします。ご本人様だけで結構です。すぐに終わります」
「わかりました。今行きます」
「他の使節選手の方々も待っておりますのでエリアの入り口でお待ちしております」
ガチャッ
隊長が駆け足で私たちのいる部屋に戻ってきた。
その後トーズが部屋を出て行くのが確認できた。
「では行ってまいります」
「公国の名に泥を付けないでくださいよ」
施設の一人が馬鹿にするような口調で言う。
ガチャッ
トーズは何も言わずに部屋を出た。
使節団の部屋の扉が閉まる。
それを確認すると私も羽部を離れて部屋を出た。
トットットッ
私は悲しそうに歩く幼馴染に後ろから話しかけた。
「トーズ・フォン・ベリアル、あなたが未来に契りを交わす者は誰だ?」
トーズは振り向いた。
「ッッ!」
トーズは驚愕してその次に涙を浮かべた。
先ほどの無感情な顔からは想像できないほど目じりを赤くし顔を濡らした。
そして私の前にかた膝をついて言った。
「あ、、あなたです。我が主君、公国の主、そして、、、、我が愛しき人。ハンナ」
次回投稿は火曜日です。
読んでくれてありがとうございました!
もし面白い・続きが読みたいと思っていただけたらブックマークや広告下の☆☆☆☆☆でポイントを入れていただけるとうれしいです!
評価はモチベに繋がりますのでよかったらお願いします!




