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104話 公国の騎士


ガチャッ


「ただいま戻りました」

「お帰り。まもなく始まる」


 僕は席に戻って第一皇子の隣に再び座った。


「そういえば公国では新大公の支持が揺らいでいるらしい。まあ国としての権限を持っているならば何でもいいが」

「外国の情勢には疎いのでわかりませんが君主が変わった後の国はどこも不安定ですからね」


 僕は何も言わないことにした。

 余計に会話を広げると下手に情報を与えてしまうかもしれない。


「会場にお越しの皆さま!」


 フィールドで司会が注目を集める。


「第四戦で戦う選手をご紹介しましょう!サプライズ登場です!国として今回が初出場のバーレル公国の選手!トーズ・フォン・ベリアル卿です!」


 司会の紹介と共に茶髪の青年が出て来た。

 ハンナと僕より少し年上だ。

 着ている鎧は恐らく大金をつぎ込まれているのか金銀に光っていて彼自身しっかりとした覚悟をもった顔をしている。


「あれが公国の、、、」

「興味があるか?やはりそうだろう。私も初めて見たときに良い騎士だと思った。公国のみならず諸外国に知られる有名な騎士を多く輩出してきた名家の出だそうだ」


 第一皇子の言うように良い騎士だ。

 初めて第一皇子と意見が一致した。

 だがどこか彼自身に違和感を感じた。

 ハンナの敵である叔父の代表として来ているはずなのにあまり悪い印象が湧かないのだ。


「大公が送ってきた親書には公国一の騎士を送ったと書かれていた。小国の割には良い騎士を送ってきたようだ」


 対戦相手は意外にも一般から勝ち上がってきた者だった。

 一般から勝ち上がってきたということは確実に実力者だろう。


「両者!剣を抜いて!」


 司会が戦闘準備を二人に促す。


「本選第四戦!はじめ!」


 司会が開戦を告げると両者一気に走り出した。


「うおー--!」


 対戦相手は声をあげながら突進してくる。

 対する公国の騎士は静かに走り出した。

 剣を両手でしっかりと持ち一歩一歩がしっかりとしている。


「ぶつかる、、、」


 僕がぼそっと言った次の瞬間両者が接触した。

 体格の良い対戦相手の大剣は力強く公国の騎士に叩きつけられ騎士も剣でそれを受ける。

 

ジャキンッ


 騎士の剣が押されて相手の剣が迫り騎士は避ける。

 相手の剣はそのまま地面に当たる。

 地面はえぐれ相手の力強さを示している。


「やっぱり期待外れだったか?」


 隣の第一皇子がその様子を見て残念そうな顔を見せた。

 どうやら第一皇子は騎士が負けると思っているようだ。

 

「それはどうでしょう?」


 僕はぼそっと言った。

 あの騎士はまだ力を出し切っていない。


「うおー!」

「やれ!」


 会場はサプライズ登場の選手ということもあり盛り上がっていた。

 選手たちの剣のぶつかり合いも次第に激しくなっていく。


「白熱しているな」

「まあそうですね。他の選手たちに比べて長引いているのは事実でしょう」


 いつも見ている北部の模擬戦に比べればお遊びに過ぎないがこの大会でリールを除けばあの騎士やその相手がトップレベルの実力を持っていることは明らかだろう。


「そういえば相手は一般から進んでいますが外国の推薦選手と当ててよろしかったので?」


 皇国は味方になったらある程度力になる。

 弱い選手を当てて接待しておいても損はないはずだ。

 

「ああ、それなんだがな。あの騎士から強い相手にしてくれと頼まれたのだ」

「珍しいですね」

「まあ公国一の騎士だと聞くから疑いもなくそうしたのだが期待外れだったようだな」


 第一皇子は必死に攻撃を受け流しているように”見える”騎士を見て言った。


「まあ観客を盛り上げてくれたのはよかったがな」


 第一皇子は騎士の敗北で終わると思っているようだ。


ガキンッ!


 2人の剣が激しくぶつかった。

 2人はお互い体制を立て直すために後ろに下がった。

 2人ともかなり消耗しているようだ。

 これくらいで息が上がるなんて、情けないな。


「次で決まりますね」

「そのようだな」


 さあ、見せてくれ。

 君の実りょk、、、

 ん?


 騎士の様子が変だ。

 どこかを見て目を見開いて完全に固まっている。

 まるで亡霊を見たような顔だ。

 

「あの方向は、、、ッッ!」


 ッしまった!

 あの方向はハンナの席だ!

 僕がハンナの席を見る。

 ハンナの席は最上段で僕から見て右側だ。

 しまった、、、

 案の定ハンナも騎士を見て固まっている。

 やばい、このままだと公国に関する計画が全てばれる。

 それだけじゃない、計画に関わっていた軍や諜報部隊の実力もばれてしまう。


ガタッ


「ん?どうした?」


 僕は勢いよく席を立った。

 そしてなるべく平静を装いながら言った。


「少しお手洗いに」

「ああ、そうか。見どころなのだがな」

「すぐ戻りますのでご安心を」


 幸い第一皇子はまだ気づいていないようだ。


「では」


 僕は気づかれない程度の早歩きで部屋を出た。


「エレナさん、護衛を」

「はっ」


 部屋を出て廊下を曲がった。

 もう部屋の前の衛兵からは見えない。


「エレナさん、まずいことになった。今すぐ諜報部隊・暗殺部隊を招集して」


 僕がそう言うとエレナさんが驚いたような顔をした。

 エレナさんはフィールドが見えない室内側で待機していたためまだ状況がつかめていないようだ。


「何があったのですか?」

「公国の騎士にハンナを見られた。両者の反応からして騎士は完全に確信している」

「ッ!」

「外で待機している全部隊に通達、公国関係の者は誰一人としてこの闘技場から出さないで、それから諜報部隊と暗殺部隊には騎士を捕縛、無理なようなら最悪殺傷を許可すると伝えて。なおこの命令は第一皇子側には悟られないように」


 エレナさんは僕からの命令を聞くと一気に戦場で見る顔になって敬礼した。


「はッ!最高司令官閣下からの命令、確かに受け取りました。帝都遠征隊第一大隊、最優先命令を実行します」


 そう言ってエレナさんと僕は走り出した。

次回投稿は金曜日になります。



読んでくれてありがとうございました!




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