103話 計画修正
ガチャッ
僕とエレナさんは特級席から出た。
「第五皇女殿下、護衛いたします」
ドアを抜けると外で警備していた衛兵のうちの1人が護衛をすると申し出て来た。
「いえ、少し外の空気を吸ってくるだけなので護衛はいりません」
「しかし危険です。今日は平民など様々な者が来場していますので」
「エレナさんがいるので大丈夫です」
「しかし、、、」
「それでは」
僕は護衛を申し出て来た衛兵に大丈夫だと伝えて歩き出した。
衛兵は少し不服そうだった。
まあ皇女ともあろう者が1人、しかも南部では異質の女軍人だけ連れて歩くのが納得いかなたったのだろう。
「監視の意味もあるだろうね」
「そうですね。この闘技場のいたるところに視線を感じます。特にVIPエリアは所々まで監視されているようで居心地が悪いです」
「まあ各国のVIPがうっかり口にした機密を得ようとでも思ってるんでしょ」
「ですがこれではバレバレですね」
「そうだね」
客に交じって第一皇子の兵がいたるところで情報を収集しているがこれではバレバレだ。
こんな粗末な諜報とも呼べないもの北部の一兵卒でも気づく。
少し盗聴に気を付けていれば情報を抜かれることはないだろう。
「そういえば場所はどこだっけ?」
「緊急の会合は一般エリアの3階南廊下で行われる手筈になっています」
「了解、ハンナはもう来ているだろうし僕たちも急ごう」
「そうですね」
僕たちは衛兵が守るVIPエリアと一般エリアの境を抜けて指定の場所へと向かった。
廊下から屋外席へ出る出口からは歓声が漏れてくる。
もう第二戦が始まっているようだ。
第一皇子にも言ったし第四戦までには戻らなければいけない。
急ごう。
「やっぱりもういたね。ハンナ」
「申し訳ありません。私の失態です。公国中央への諜報不足でした」
ハンナは開口一番に謝罪してきた。
やはりこのことは把握していなかったらしい。
「謝ることはないよ。僕も把握できてなかったし、それよりこれからどうする?」
やはりハンナは公国のことになると責任感が強くなりすぎる節がある。
運営である第一皇子もサプライズにしてたし軍事・政治情報を中心に収集していたからこのことを把握できていなくても無理はない。
「はい、まず現段階で第一皇子と叔父がつながっているとは考えておりません」
「それは大方あってると思うよ」
現段階ではまだハンナの叔父率いる公国政府が第一皇子の正統派陣営に決闘会を使ってラブコールを送っている段階に過ぎない。
「しかし今後つながる可能性もありますのでその前に手を打ちます。計画していた公国内勢力への接触を前倒しして叔父の政府の処理能力を削ぎます」
「わかった。具体的な計画は歩きながら」
「かしこまりました」
僕たちは他人を装いながらゆっくり歩きながら話した。
ハンナは本来僕と話すことのできないはずの人間だ。
ハンナの叔父は奴隷市場に流してハンナの脅威は完全に排除したと思っている。
北部軍を動かせる僕と普通に話しているところを見られたら計画が全部無駄になってしまう。
「叔父と第一皇子の接近は避けられないでしょう。最悪公国国内で抵抗している貴族達への攻撃に正統派陣営の私兵が参加する可能性もあります」
「そうなれば公国の内戦は僕と正統派陣営の代理戦争になってしまう。それは避けたいね」
「はい、幸いまだ接触し始めた段階ですので軍事支援を引き出すには時間がかかります」
「どれくらいと見積もってる?」
「正確には不明ですが叔父が残存勢力の掃討を大規模に始めたタイミングで第一皇子も支援を発表するでしょう」
つまりハンナの叔父が決断する前にこちらから仕掛けなければならない。
これは急いだほうがいいな。
「叔父と関係のある傭兵団とその現在地を特定しました。公国への最短の街道も算出済みですので明日にでも諜報部隊員と北都から来た文官達で構成した交渉団を南方諸国へ派遣します」
「交渉は抜かりない?」
「はい、買収用の資金はすでに各国家の通貨で準備していて交渉役の文官は総督閣下に交渉の訓練を受けている先鋭達を派遣してもらいました。計画ではもしもの時用に各国を脅す武力も用意する計画でしたがしょうがないですので出発してもらいます」
「3伯爵家への接触は?」
「それも交渉団と同時に密使を派遣します。諜報部隊がすでに各領地に拠点を設置したので何もなければ順調に進むでしょう」
「わかった。抜かりないようだね」
ハンナは準備万端のようだ。
本人は早めに用意して更に訓練を積ませるつもりだったようだがこの際ちょうどいい。
「活動開始を正式に最高司令官として許可する。北部軍の兵力動員は僕の名前を使って」
「ありがとうございます。期待に必ずお答えします」
ハンナは計画前倒しに対する僕の許可に深くお辞儀した。
「姫様、そろそろ第四戦が始まります。第一皇子も不審に思い始めますのでそろそろお戻りください」
エレナさんがそう告げてくる。
ハンナの計画前倒しの概要を聞いていたらすっかり時間がたってしまったようだ。
「わかった。それじゃあハンナ、また夜に」
「はい、いってらっしゃいませ」
僕はハンナと別れて急ぎ足で第一皇子が待つ席に戻った。
次回投稿は火曜日です。
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