102話 予想外
「始め!」
第一皇子が壇上で手を振り下げると本選の第一線が始まった。
「うおー!」
「ここだ!」
フィールドでは2人の選手が剣をぶつけ合っていた。
2人とも金と銀で装飾された派手な鎧を着こんでまるで自分がこの世界で一番強いかのような自慢気な顔をしていた。
「やれやれ、主催者も大変だ」
第一皇子が戻って来て椅子に深く座った。
第一皇子はそんなことを言っているが彼も自慢げな雰囲気だった。
どうせ帝都一の決闘大会を僕に見せつけているつもりなのだろう。
「第一戦の選手は確か両方が貴族の子息でしたよね」
僕が第一皇子にそう言う。
「ああ、それぞれ西と東の国境を守る家の出だ。くだらない平民のお遊びではなく本物の剣術を見せてくれるだろう」
「ふふっ、そうだと良いですね」
僕は笑って見せる。
僕の目の前で行われているのは決闘でも剣術のぶつかり合いでもない。
ただのお遊びだ。
第一皇子は平民の戦いがお遊びだと言うが僕にとってはこっちの方が程度の低いお遊びに見える。
まあ平民も貴族も南部である限りお遊びに変わりはないが。
「貴族の選手の鎧は家が出すのですか?」
せっかく招待されたのだ。
主催者が隣にいることだし解説役として利用してやろう。
「ほとんどそうだな。この大会での好成績は家の名に箔をつけることになる。だから親たちも高額な装備に金を惜しまない」
「しかしたまに簡素な装備で参加している貴族もいるようですが?」
実際中には年季の入った装備でこの大会に参加している。
強さは他と変わらないため思い入れのある装備というわけでもなさそうだし何故だろうと思っていた。
「ああ、あれは没落寸前の貧乏貴族だ。領地が小さいから稼げずにいて影響力も小さいからどの陣営にも入れてもらえない。それでいて隠居したいわけでもないから中立派貴族にもなれない。まあ哀れな奴らだ」
「そうだったのですね。北部にはそのような部類の貴族はいないので勉強になります」
隙あらば間接的に南部をディスっていく。
こういう性格の悪さは少し自信あるのだ。
にしてもそうか、今思ってみれば南部は北部に比べて貴族が異常に多かったな。
北部と南部で面積は変わらないから領地が小さくなるのは当然か。
北部だと最悪領地がなくても身分にかかわらず北都から支給される金で困ることはないが南部は大変そうだな。
「おお!」
「うおー!」
「やったぞ!」
「予想通りだ!」
会場が盛り上がる。
どうやら決着がついたようだ。
パチパチッ
「見事な試合だ」
第一皇子が拍手する。
パチパチッ
こんなお遊びまったく感心しないが会場全体からみられているし一応社交辞令で拍手しておく。
「皆さま!盛大な拍手ありがとうございます!次の試合は本選初の外国推薦のゲストです!」
外国推薦、帝国と関係がある国が指定するいわば「我が国の威信を知らしめて来い」と言われた者達だ。
いろいろな意味で負けられないだろう。
その証拠にある程度勝ち進むまで外国推薦同士は当たらない。
予選と違って相手も貴族が多いためわざと弱いやつをあてているわけでもないが本人達がうまくやれば外国推薦として本選の上位には行けるようになっている。
「そういえば今回は特に外国推薦が多いらしいですね」
「ああ、今回は過去最多だ。一国1人の原則は変わっていないからより多くの国がこの決闘会に参加していることになるな」
第一皇子は自慢げに言う。
そう言う言ことか。
「第一皇子殿下は外国にも強い影響力をお持ちのようで」
「ははっ、まあそうだな」
僕がそう言うと第一皇子は満面の笑みを浮かべた。
やはりそうか。
恐らくこれは皇位争奪戦の一手だろう。
諸外国に多くの影響をもたらす帝国の皇位争奪戦では国内貴族だけではなく諸外国の王の支援も重要になってくる。
第一皇子はこの決闘会を隠れ蓑に諸外国との関係を強化したのだ。
過去最多の外国推薦の出場ということはそれが成功したのだろう。
諜報部隊からの報告で各陣営が諸外国との関係を強化しようとしているとは知っていたが今のところ正統派陣営が一歩抜きん出ているようだ。
「そういえばここだけの話だが4戦目にサプライズでバーレル公国の推薦が来るぞ」
「なッ!?」
「そこまで驚くことか?」
失態だ。
急な出来事にあからさまに驚いてしまった。
「まあ今バーレル公国は政治的に不安定だからな、驚くのも無理はない。だが以外にも新大公が中央の粛清を早く済ませてすでに最後の反対勢力に攻撃する準備を整えている段階らしい」
「第一皇子殿下はどう思われているのですか?」
「小国の内乱など興味ない。まあ仲良くなっておいて損はないだろうな。新大公は冷酷との評判だ。いろいろと優秀らしいからな」
「そうですか、、、」
これは、、、
対応は本人に聞いた方が良さそうだな。
チリンッ
僕は机に置いてあるベルを鳴らした。
「エレナさん」
ガチャッ
室内とバルコニーをつなぐドアが開いてエレナさんが入ってきた。
「はッ!」
「少し離席するから護衛をお願いします」
「かしこまりました」
「ん?どこか行くのか?」
第一皇子が聞いてきた。
「少し外の空気を吸ってきます。第一皇子殿下のサプライズまでには戻ります」
「そうか」
第一皇子は特に疑いもしなかった。
次回投稿は日曜日です。
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