表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星の採掘師たち  作者: 鋼玉 九兵衛
17/18

竜の洞窟

『アイちゃん! もう、こんなとこで寝て…。 学校は?』

『うるせぇな…サボりだよ。』

『アイちゃん、ケガしてる。 またケンカしたの? もうやめようよ。』

『ふっかけてきたのはあっちだよ。 たいした傷じゃねぇよ。』

『手当てしてあげる! 私の家行こ! ほら、早く!』

『おい、ミュウ! 引っ張るなよ! …ったく。』









(…あれ、なんか夢見ちゃったな。 確か俺、穴から落ちて…)


アイドは上体を起こして辺りを見渡す。背中が少し痛むが、無事なようだ。頭上から、ロロクの声が降ってきた。


「アイドーッ!!! 無事か!?」

「…はい! あんまり深くなかったみたいで、無事です! ただ…」


アイドは落ちてきた穴を見上げてため息をつく。


「登るのは無理そうです。」

「そうか、キバンさんの宿に非常用のロープのはしごがあるはずだから持ってくる! ちょっと待ってろ!」

「わかりました!」


ロロクの足音が遠ざかっていく。ふと、アイドは背後に違和感を感じ、振り向く。


(なんかあっちの方が明るいな? 空気もあっちから流れてきてるみたいだ…)


アイドは灯りに引かれるように歩き出す。すぐに、壁に大きめのほら穴が開いているのが見え、中から明かりが漏れ出ていた。


「なんだここ…」


呟きながらほら穴を覗くと、巨大な黄色の目玉と目が合った。


「!!」


思わず耳を伏せる。巨大な、黒い鱗に覆われた生き物だった。トカゲのような顔に蛇のような長い体。短めの前足と後ろ足には鋭い爪が生え、グルル…と唸る口からはびっしりと鋭い歯が並ぶ。アイドを遥かに超える大きさで、高さは5mはあるだろうか。尾の先まで伸ばすと15mくらいになりそうだ。


「へ、へ、蛇のオバケだ!!!!!」


アイドは腰を抜かしてどさりと尻もちをついた。


(食われる…!!!!)


「アイドではないか!」


突然、聞き覚えのある声が聞こえた。生き物の脇からライオンのギベオンが驚いた顔をしながら現れた。


「ギ、ギベオンさん!?」

「どうやってこんなとこまで来たんだ? 採掘場からは離れているはずだが…」

「俺は…違法採掘師が爆薬を使ってめちゃくちゃな採掘をしてるのを捕まえて…。 爆破された跡に穴を見つけて覗き込んでたら落ちちゃったんです。 落ちた所から明かりが見えたから、ここに…」

「なるほど…。 違法採掘師がこんなに近くまで掘り進めていたのだな。 見つかったのがアイドで幸運だった。」


ギベオンは呑気に話し続けているが、アイドは震えながら生き物を指差した。


「あ、あの。 ギベオンさん。 その蛇のオバケは…?」

「あぁ、この生き物は『竜』と言うんだ。」

「リュウ? …初めて見ました。」

「竜は希少で強く賢い生き物でな。 シシノホシが竜を悪用し、他の星の侵略に使おうとしていたのを知ったため、ネコノホシに来る前に私が卵を盗んできたのだ。」

「侵略…!?」


ギベオンは竜の体をぽんぽんとあやしながらも、険しい顔つきになった。


「既にいくつかの星のかけらで竜を使った戦闘の実験をしていたのだ。 その竜は老いていたためほどなくして死んだが、こいつはその竜の子どもだ。 シシノホシにはもう竜はいない。 私はこいつと共にシシノホシへ戻り、シンシャの政権を倒す!」

「政権を倒すって…この竜を戦闘に使うんですか!?」

「攻撃をするつもりはない。 民に危害を加えてしまう可能性があるからな。 だが紅獅子の連中は竜を利用していたから竜の恐ろしさを知っている。十分な牽制になるだろう。」


アイドは何とも言えない気持ちで竜を見つめた。竜はギベオンによく懐いているようだ。体をあやされて目を細めている。


「アイド! いるのか!?」


たったったっと足音が聞こえてロロクが顔を出した。


「ロロクさん!」

「まったく僕が待ってろと言ったのに…」


説教を始めようとしたロロクだが、竜を見つけて固まった。


「あなたは、確かロロクさんだったな。」

「あ、ロロクさん、この生き物ははギベオンさんの竜で…」


アイドは説明しようとロロクに話しかけたが、口を閉じた。ロロクは震えていた。恐怖と、怒りに震えていた。耳を伏せ、尾を膨らませ、牙を剥いて、シャアァァという威嚇の声を上げていた。


「ロ、ロロクさん…?」

「…お前、ギベオンと言ったか。 この化け物がどれだけ恐ろしいか知っていて飼っているのか?」


ギベオンは真っ直ぐロロクを見つめて黙っている。


「こいつは僕の父を食い、僕の体に一生残る傷をつけた化け物だ!!! 」

「えっ!?」


アイドは驚いてロロクを見る。


(確かにさっきシシノホシのライオンが星のかけらで戦闘実験してたって言ってたけど…その時にロロクさんとお父さんは巻き込まれてたのか!)


「その化け物を生かしておくわけにはいかない!!」


ロロクは短剣を抜く。


「殺す…!!」


短剣を振りかざして竜に突っ込む。とっさにアイドはロロクの前に両手を広げて立ち塞がった。


「待って! ロロクさん!!」

「アイド!! どけ!!」


ロロクは牙を剥いてアイドに叫ぶ!


「ロロクさん、そんな無謀に突っ込んでも死んじゃいます! それに、この竜はロロクさんたちを襲った竜じゃない! ギベオンさんが卵から育てた竜です!」

「関係ない! 化け物がどうやって父を食ったか知ってるか!? 思い出すだけで吐きそうな凄惨な殺し方だった!!」


ロロクは怒りで興奮している。アイドは唇を噛み締めた。


「ロロクさん。」


ギベオンが前に出た。ゆっくり膝をつき、こうべを垂れた。


「我々ライオン達の犯した過ちで、あなたのお父様が命を落とされたこと。 あなたの心と身体に深い傷を負わせたこと。心よりお詫びいたします。」

「ギ、ギベオンさん…」

「そんな過ちを繰り返すわけにはいかない。 紅獅子の連中は過ちに気づかず同じことを繰り返している。 奴等の暴走を止め、シシノホシに平和をもたらすため。 この子はその希望なのです。」


竜はキュウ、と鳴いてギベオンを見つめる。ギベオンは竜を撫でながら続ける。


「私はライオン達だけでなく、他の星の方々も救いたいのです。 私を逃してくれた猫の少女、ミュウも。」


アイドははっとした顔でギベオンを見た。アイドの目に涙が溢れる。


「あなたの気持ちは痛いほどわかります。 しかし、今はどうか堪えて頂けないでしょうか。」


ロロクはギリっと歯を噛み締め、ギベオンを睨みつけていたが、やがて口を開いた。


「…お前の星がどうなろうと、僕の知ったことじゃない。その化け物を許すつもりもない。 ただ…」


ロロクは涙目のアイドを見て、続ける。


「アイドの恋人を救うと言ったな。 アイドのためなら、ここは見逃してやる。 その化け物を僕の前に二度と見せるなよ。 次はない。」

「かたじけない…」


ギベオンは再びこうべを垂れた。ロロクは踵を返し、ほら穴を出て行く。


「アイド、帰るぞ。」

「は、はい! ロロクさん、ありがとうございます!」


アイドはロロクのあとを追いかけようとしたが、ギベオンの方を振り返る。


「ギベオンさん、これからどうするんですか?」

「ここもバレてしまったし、他の星に移るよ。 なに、ここ以外にもいくつか巣はあるから大丈夫だ。」

「…俺、ミュウのためならギベオンのことなんでも手伝います。 またいつでも来てください。」

「…ありがとう、アイド。」


ギベオンはふっと笑った。アイドも少し笑って、今度こそロロクの後を追いかけて行った。









「社長もアイドも遅えなぁ…」

「トモル、あんた今日もシマちゃんとこ行ってたの? 店番どうしたのよ。」

「いいんだよ、お客なんて来ねえし! スズちゃんこそ今日も来てるけど仕事はどうしたぁ?」

「私はオフなの!」


ロロク貿易でトモルとスズが言い争いをしていると、会社の裏からドカン!と音が聞こえてきた。


「お、帰ってきた。」

「どういう着陸をしたらあんな派手な音が出るのよ…」


2人は急いで裏へ回る。見慣れたエイ型の船がプスプスと言いながら地面にめり込んでいた。中からロロクとアイドがもたもたと出てきた。


「今日は一段とひどい着陸だな! アイド! タンザナイトは採れたかぁ?」


呑気なトモルを横目に、アイドは俯きながら社宅へ向かう。


「お、おい?」

「ごめん…疲れたから、また明日。」


トモルは不思議な顔をする。


「なんだぁ? アイドのヤツ。 珍しく元気ねぇな。」

「僕もちょっと休ませてもらうよ。」


ロロクも社宅へ向かう。アイドよりだいぶやつれた表情だ。


「ちょっと待った!」


スズがロロクの腕をぐいっと引いた。


「な、なんだよ。 小娘!」

「…今からちょっと付き合ってくれない?」


続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ