双子襲来
黄金色の穂を垂らした麦が、風にゆれる田園の間の道を、ゆっくりと一頭立ての馬車がゴトゴトと車輪をを揺らしながら進んでいきます。
御者は若い青年で、麦わら帽子を、かぶり、鼻歌を歌いながら手綱を握っています。とても綺麗な顔立ちの穏やかそうな好青年といった感じです。
「セシリー姉さん、起きてる? もうすぐハイドランドの国に入るよ」
青年は後ろの荷台に座っている、双子の姉のセシリーを呼びました。
「起きてるわよ、アイン」
アインは前を向き、車輪の揺れと同じ方に首を揺らしながら「今度の国に母さんの仇の一族は居るかな?」
「知らないわよ、もう八百年も前の事よ、仇の張本人なんて生きていないし、その子孫だって滅んでるかもしれない、人間の寿命なんてせいぜい百年程度なんだから」
馬車の荷台をぬける風に銀色の髪をなびかせてセシリーは少し面倒臭そうに答えました。
※ ※ ※
馬車が国境の石橋を渡り、幾つかの集落を通り過ぎると、遠くに立派な御屋敷が見えてきました。
近くで畑仕事をしていた農夫が馬車に気付いて声をかけてきました。
「おーい、旅の御方、ハイドランドに、何の用で来なさったかね?」
アインは馬車を止め、麦わら帽子のつばを上げて農夫に言いました。
「こんにちは、私達姉弟は方々を旅して、その日暮らしの何でも屋みたいな者です」
「そうかね、だども悪い事は言わねえ、面倒事に巻き込まれる前に引き返すか、さっさと通り過ぎた方がええよ」首に掛けた布で顔の汗を拭きながら、心配そうな顔で農夫が言いました。
荷台の荷物を背もたれにして座っていたセシリーが、むくりと起き上がると「面倒事っていうのはどういう事?」と農夫に聞きました。
農夫は荷台から急に顔を出したセシリーにびっくりしましたが、それ以上にかのじょの美しさにおどろきました。「こりゃあ驚いた、こんなに綺麗な人、オラ今まで見たことねえ」
「そんなことどうでもいいから、訳を話なさいよ」
「セシリー姉さん、言い方が悪いよ」
アインがセシリーをたしなめます。
セシリーの迫力に怯んだ農夫は苦笑いをしながら言いました。
「今、ハイドランドは公爵家と摂政家の中が悪いでな、元々はドラゴンスレイヤー様の一族なんだから仲良くすれば良いものを、身分の高い御方は大変なんだな」
農夫の言葉に二人は顔を見合せてうなづきました。
「仇はこの国、ハイドランドで間違い無さそうだね」
「そうね、やっと見つけた」
「おじさん、どうも有難う、気を付けて進むよ」
二人は農夫にお礼を言ってハイドランドの国へ向かって馬車を進ませました。




