銀竜の泉
洞窟の内部は意外と広かった、しばらく階段状の縦穴を降りると、中央に膝下程の深さの水路が流れる横穴に出た。
「六時間かな……」洞窟内探索では【太陽石】という魔力のこもった魔法石使う。軽い衝撃を与えると松明くらいの灯りを放つ。
ハインラインは太陽石を灯らせると時計を出して時間を確認する、持ってきた食糧の残りとペルソナとの戦いの疲労を考えると、あと六時間位が探索の限界かもしれない。
幸い水路の水は綺麗でだったので、鎧を外して顔と四肢を洗った。
「ああ、冷たくて気持ちいい……」
水路に裸足を浸けたまま袋からパンを取り出し一口目を噛みしめる。今朝ファーヴェニールが焼いてくれたパンは、まだ香ばしさを残し、柔らかい。
「旨い……」
こんなに旨いパンを毎朝食べて、城で仕事して、帰ってファーヴェニールと一緒に少し飲みながらご飯を食べて、一緒に寝て、一緒に目を覚まして、休みの日には二人で出かけて、いつか子供ができて、そんな生活がずっと続くようにと考えながらパンを味わった。
だから王の言うように銀竜に限らず、竜はまだ若いうちに退治しておかなければならない、大きく成長した竜は人間の力では手が付けられなくなってしまうからだ。
【後悔するぞ】老魔法使いの言葉が頭をよぎるが、それよりも銀竜を退治してファーヴェニールとの平穏な生活を想像してしまう。
足を拭き鎧を装備し時計を確認する、「あと四時間、行くか」
洞窟の深部へ向けて歩き出した。
※ ※ ※
洞窟内は水路を流れる水の音と私の足音、鎧のスレる音が響いている。
魔物やクリーチャーの気配はない、静な場所だ、太陽石の灯りが小さくなってきたので、また衝撃を与えて光を強くする。そんなことを何度か繰返し、一本道のこの静な洞窟を導かれるように歩いた。
それから、大きな空洞に出たのは、先程の食事から二時間程立った頃だった。
微かに青白く光る岩肌を這う様に水が流れ、一面に水が貯まっている、中央に丸い石舞台のような場所があり、木の枝葉が敷かれてあってその中央に黄金の果物をつけた林檎の木が勢い良く伸びていた。
「ここが銀竜の泉……」
ハインラインはこの場所のあまりの美しさに息を飲んだ。




