ファーヴェニール
扉を開けた娘は微笑みを浮かべ言った。「騎士様、どうぞ中にお入りください、たいしたお構いは出来ませんが、旅の疲れを癒して下さい」この娘の名前はファーヴェニールといいこの森に一人で棲んでいるという。
ファーヴェニールは美しい娘で銀色の長い髪、見つめられると吸い込まれるような黒い瞳、艶のある唇が動く度に癒しを感じる穏やかな声、世界の全てを引換にしても見ていたいと思える笑い顔。彼女の全てが完璧だと思った。
そして余計であるが(本当に騎士で良かった)そう思った。
この国では騎士をもてなすと守護天使がその家に幸運をもたらすと信じられている、だから騎士はどの家に訪問しても歓迎された。
「感謝いたします、銀竜討伐の途中で、食糧が底をつきました、よろしければパンをお分けいただけましたら幸いです」
「さあさあ、ちょうど夕食の準備をしていたところですので御一緒いたしましょう」
ハインラインは鎧を外し、裏の小川で疲れた足を洗い、キュラソーに水を飲ませた。
小屋に戻るとファーヴェニールが用意してくれた温かいスープとパンを味わった。
「パンが焼きすぎだったらごめんなさい、固くないですか?」ファーヴェニールが言う。
「いえいえ、美味しいです、パンは少し固いくらいが良いんですよ」
お互い、誰かと食事をすることが久しぶりで、とても楽しいひとときになった。その夜は彼女の厚意で納屋に泊めてもらうこととなり、夜遅くまで今までの私の旅の話や、彼女の生立ちなど話した。
※ ※ ※
翌朝、二人で朝食を食べると、ハインラインはもてなしのお礼として薪を割り、小屋の修繕をしたり、狩りで獲物を捕まえたりした。
喜ぶファーヴェニールの顔が見たくて、ハインラインは張り切って働いた。
二人はまもなく運命のように引かれあうようになり、ハインラインはファーヴェニールの小屋を拠点に銀竜の棲む泉の探索をするようになった。




