363.トンネル(1)
「学校の周辺とかを散策してて思うんですけれど、東京の都心って意外と急な坂道が多いですよね。」
「関東平野っていうけれど、言うほど平らじゃないんだよね。台地と、川で侵食された低地とが入り混じってる。」
「JRの市ヶ谷駅なんかも、ホームから階段をのぼった崖の上に駅舎があるよね。」
「その一段高い駅前からは更に上り坂になる道までありますから、けっこうな高低差がありますね。」
「あれ?でもさ、松本では街中の坂道って見慣れてたりしないの?」
「松本の市街地は扇状地のなだらかな傾斜の上にあるんです。だから急坂っていうと山際まで行かないと無くて、街中では見かけないんですよ。」
「市街地に関しては松本よりも都心の方が『山』っぽいのかな?」
「そうかもだよ。ほら、渋谷周辺なんて、特に東京の高低差を実感できると思わない?」
「そっか。JRの渋谷駅ってすり鉢状の谷底にあるんだっけ。」
「うん。渋谷川があった近くの一番低い場所を走ってる。しかも一応高架だっていうのに、脇の斜面から出てきた地下鉄銀座線の下になってる。」
「JRが地下鉄の下を走るっていうと、四ツ谷もそうだっけね。」
「で、そのJR中央線は丸ノ内線の下をくぐるとトンネルに入ってくよね。」
「地下鉄は別ですけれど、都心を走る路線って土地に高低差がある割にはトンネルがありませんよね。」
「なるべく高低差が無くて、トンネルも作らずに済むようなルートを選んだんだろうね。」
「市ヶ谷付近の中央線とか、あと東北線の上野より北の方とか、崖下に沿うように線路が引かれてるのもトンネルを作らないためなのかな。」
「そうなんじゃないかな。地図を思い出すと、どちらも台地に沿うようにぐるりとカーブしてるよ。」
「台地側と低地側の間って、線路を敷く用地を確保するのにも丁度良い場所だったんでしょうか。」
「古い地図を見ればわかるのかもしれないけれど、街にするのにも畑にするのにも半端な場所だったのかもしれないね。」
「このあたりって周囲よりちょっと高ければ山って呼ぶみたいな感じありません?」
「そうだね。戊辰戦争の舞台のひとつにもなった上野の山とか、NHKが最初に置かれた愛宕山とか。」
「そういえばアジサイ見に行ったのも飛鳥山だったね。」




