361.沿線風景(2)
「先週は、ちょっとだけ教えてもらうつもりだったのが、架線の講義になっちゃって参ったよ。」
「僕がわかる程度の話だから、あれってまだ序の口だよ。」
「うへえ。それのおかげで、今日来る時もつい架線に目が行っちゃって困った。」
「景色でも眺めてればって言われてたじゃない。」
「毎日のことで見慣れた景色になっちゃってるからなぁ。」
「だけど、ここいらの外濠沿いとか新宿御苑、あとは東中野の桜並木とか、中央線の沿線は季節の移ろいを感じられるところが多いじゃない。」
「たしかにそうなんだけどさぁ。」
「ボクはナオさんが羨ましいです。」
「そう?」
「都営新宿線だと外を見れるのって船堀から東大島の間だけですよ。」
「あ、地下鉄で来てるんだっけね。JRは考えなかったの?」
「通学定期、新宿線の方がJRより少し安いんですよ。それに加えて本八幡で座れるのが魅力で。」
「それは大きなアドバンテージだ。」
「その代わりに時間があるときは途中の駅で降りて街歩きしてます。」
「そうなんだ。」
「神保町の古書店街とか、先日行った住吉の公園とか。あと大島の商店街なんかも楽しいです。」
「車窓風景が少ない代わりに、そうやって楽しんでるんだ。」
「ぶらぶらと次の駅まで歩いたりもしてます。」
「健康的だね。」
「トモは電車に乗ってるときは何見てるの?」
「四ツ谷のホームの工事とか、中野駅の工事とか。」
「他は?」
「ボーっとしてることが多いかな。」
「たしかに前に車内で見掛けた時に、魂抜けたみたいな表情してたっけ。」




