354.架線(2)
「その振止ってのが左右から付いてはいたけれど、架線がジグザグだったかは気付かなかった。それにどうしてジグザグ?」
「ひとくちに架線って言うけれど、そのうちパンタグラフと直接接触して電気を供給する線を『トロリ線』って言うんだ。」
「あーそれ、どっかで聞いたことある。」
「そのトロリ線が、ずっとまっすぐだと、パンタグラフの同じ個所ばかりと接触し続けて、そこだけ摩耗しちゃうでしょ。」
「そっか、だからわざと左右に振ってるんですね。」
「ただし、トロリ線のレール中心からのズレを『トロリ線偏位』っていうんだけど、これが一定以内に収まるようには管理してる。」
「そうじゃないとパンタグラフから外れちゃうんだね。」
「ところで、前に話した『軌道変位』は、位置が変わるっていう意味で変更の『変』の字を使ってるけど、トロリ線偏位は違う字を使ってる。」
「変じゃないへん?」
「トロリ線の場合はにんべんの偏るって字なんだ。」
「偏光グラスの偏ですか?」
「そう。さらに昔の資料だと『位』の方をひらがなで書いたものがある。」
「ということは、実は難しい字を使ってたってことでしょうか。」
「うん。こっちもにんべんなんだけど、それと奇妙の奇を合わせた『倚』っていう字を使っての『偏倚』だったみたい。」
「そんな字あるんだ。」
「偏も倚も、どちらもかたよるって意味があるらしいよ。」
「トモの知識も偏ってると思う。」
「偏倚って言いたいの?」
「う~ん、むしろ変態的かも。」




