350.無限軌道(2)
「工事現場の軌道ってのは、どんな使われ方をされてたの?」
「規模の大きな工事だとメインで使う線路はある程度しっかりと作ったみたい。でもたとえば河川改修とかだと、河川敷の作業場所に合わせて都度敷きなおすこともしてたらしい。」
「それって大変なんじゃない?」
「そういうところは、路盤や道床は整えず、簡易な軌框を直に設置してたっぽい。」
「軌框ってレールとまくらぎを組み合わせたものだよね。」
「そう。梯子に似た格好で、長さや重さもそのぐらいの、人力でも容易に移動できるようなものがあったんだって。」
「ミニSLの線路みたいなものでしょうか?」
「俺はおもちゃの青いプラスチック製のレールも思い浮かべた。でもそんな簡単な感じで大丈夫なの?」
「使うのはトロッコとか、せいぜいが小さなディーゼル機関車程度で、スピードは出さないし、つながってて走れれば良いだけだから。」
「そういうものなんだ。」
「小規模な工事だと、突然に現れて忽然と消え去るって感じだったみたい。」
「幻の軌道って雰囲気だね。」
「うん。一般の人の目につきにくい工事現場の中だし、工事の都度敷設して、終わったらすぐに撤去しちゃうから、実態の記録は限られるらしい。」
「家の外壁塗装工事の足場みたいな印象です。」
「家の工事だと瓦を上げるリフトが線路っぽいよね。」
「まあ、移動が容易だとはいっても軌框の設置や撤去の作業は必要だから、その軌框自体を自身に装備したような無限軌道の機動性には敵わない。」
「そっか。予め軌框を組み立てておかないでも。自分で線路を敷きながら好きなところを走れる感じなんだ。」
「無限軌道の名前は伊達じゃないってことなんですね。」
「無限軌道って他の言い方は無いの?」
「履物の帯って書いて『履帯』ともいうらしいよ。」
「法令では『カタピラ』って言葉を使うって書いてあります。」
「苦し紛れに付けたのかな?な呼び名だね。」
「英語では『クローラー』っていう言い方もあるんですって。」




