342.ロングレール(1)
「ユウが言ったレールの隙間を無くすっての、それって『ロングレール』にするってことだよね。」
「ああ、そうですね。」
「ロングレール化はレールの弱点のひとつである継目をなくすことだけど、これによって衝撃や騒音を低減するのと同時に、保守の手間も削減できる。」
「乗り心地も良くなるよね。」
「あ、でもレールが長くなったら、そのぶん伸び縮みする量も増えるんじゃないですか?」
「実はロングレールの場合、伸縮するのは両端のそれぞれ100mぐらいなんだって。」
「へえ。不思議ですね。」
「それでも普通より多いのは確かなんで、両端には『伸縮継目』っていう特殊な継目を使ってるよ。」
「どういうの?」
「斜めにカットしたレールと、それに沿って外側へ向かうレールを組み合わせて造られてるんだ。」
「『伸縮継目』で検索したら写真が出てきた。」
「へえ、こういう仕組みなんですね。」
「拡大する継目って意味のexpansion jointを略して『EJ』ともよばれてる。」
「ロングレールって、今回乗ったような路線にも広がってくんでしょうか。」
「そうはならないんじゃないかな。敷設の条件を満たすことが難しいと思う。」
「条件って厳しいんですか?」
「うん。あと、保守の手間を軽減とは言ったけど、レール交換は基本的に全取り換えだし、部分交換でも定尺レールを1本単位で扱うのとは比べものにならない作業量になる。」
「ああ、作業の人手が足りなそう。」
「人手もお金も掛かると思う。」
「レールの弱点っていうと、分岐器もそうじゃない?」
「うん。あとは急曲線もだね。車輪が当たって削れたり変形したりする。」
「あの硬そうなレールが変形しちゃうって、すごい力がかかるんですね。」
「近くの漁港を出入りするトラックの積み荷から落下した塩水で、レールが腐食して折損したなんていう事故もあったよ。」
「嘘か実か脱獄で鉄格子に使うっていう手段に似てるね。」




