311.位置称呼(1)
「高速軌道検測車の展望側ってのが気になる。」
「そっか。じゃあ、突然だけど車両の前ってどっちだと思う。」
「ほんとに突然だね。」
「運転席のある方じゃないんですか?」
「それも一つの基準。だけど両方に運転席のある車両もあるし、運転席が無い車両もあるよね。」
「あ、きっと設計図で決めてるんだよ。設計図でこっち側にした方が前とかって。」
「う~ん、残念。設計図では前を左側にするって決めてあるけど、それってつまり設計図に起こす時点で前後が決まってるってことなんだ。」
「なるほど、そうだね。」
「左が前って聞いて、魚を盛りつけるときに頭を左にするのを連想しちゃいました。」
「国鉄の規定で、車両は前位と後位っていう向きを決めることになってて、たとえば蒸気機関車ならば煙突のある方が前位とかの条件が示されてた。」
「あー、たしかに蒸気機関車って煙突が左側の図が多いかもしれない。」
「更に前位側の方を向いて、前位側の右側を『1位』、左側を『2位』、後位側の右側を『3位』、左側を『4位』って呼ぶことになってる。」
「この『位』っていうのは『順位』のことじゃなくて、『位置』の意味で使ってるんですね?」
「そう。これを『位置称呼』っていうらしい。」
「へえ。」
「客車の場合はブレーキ操作機器、つまり手ブレーキを備えている場合、その反対側が前位っていう条件があって、マヤ車の場合はこれが当てはまる。」
「マヤ車って何ですか?」
「あ、説明してなかったっけか。高速軌道検測車は『マヤ34形』っていう形式の車両で、それにちなんで『マヤ車』って呼ばれてたんだ。」
「そうなんですね。」
「マヤ車は検測する時の車両の向きが大事なんだけど、この場合は『展望側』と『車掌室側』っていうふうに車両の方向を区別していた。」
「客車の手ブレーキって車掌室にあるんだっけ。」
「そう。」
「それならば、さっきの『展望側』に向かってっていうのは、車両の前位側に向かってってことなんだね。」
「水準の基準が展望側に向かって右ってことは、レールの左右別とは関係なく、車両側で左右を決めてるってことだよね。」
「そうだね。」
「ってことは。マヤ車の向き次第で実際のレールの左右とは逆になるってこと?」
「混乱するでしょ。」
「してる。」




