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鉄道は鉄の道  作者: 宇美八潮
第二部「2年生編」
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306/371

306.軌道変位(12)

「数学な話はこれで最後だよね?」

「多分。」

「大丈夫かな?」


「保線では『正矢(せいや)』ってことで説明したけれど、実は三角関数にもこれと同じ性質の情報があって、同じ漢字だけど『正矢(せいし)』って呼んでいるんだって。」

「矢(や)って矢(し)とも読むんだ。」

「あんまり使わない読み方だけどね。『一矢(いっし)を報(むく)いる』なんて言うでしょ。」

「ああ、あれって矢(や)の字だったっけ。」


「で、英語ではこの正矢(せいし)を『versine(ヴァーサイン)』って呼んでる。」

「ひょっとしてサイン・コサインと関係する?」

「そう。接頭語のver(ヴァー)には向きを変えるって意味があるらしい。詳しい話はネットで調べてね。」

「トモもそろそろ面倒になってきたらしい。」


「計算式で正矢(せいや)はversine(ヴァーサイン)の頭文字をとって『V』で表すことが多い。フランス語で『矢(や)』を表す『flèche(フレシュ)』の頭文字『f』を使うこともある。」

「フランス語は三角関数と関係ないネーミングみたいだね。」

「X座標については、さっきのAの位置を0番目として、そこから何番目かを『n』で表す。『n-1』とあればn番目の位置の1か所手前、つまり5m(メートル)手前の測点ってこと。」

「あー、プログラミングの配列とかテーブルみたいだね。」

「うん。なので、何番目かについてはプログラミング風に [ ] (大かっこ)で表すね。」

「わかった。」

「それでY座標の求め方なんだけど、Y[0]とY[1](0番目と1番目)は0.0だから、対象はY[2](2番目)以降でこんな式になる。」


・ Y[n] = Y(Y座標は1つ前の)[n-1] + (Y(Y座標に、2つ前から)[n-1] - Y(1つ前へのY座標の)[n-2]) - (変化量を足して、1)(2 × V(つ前の正矢の)[n-1])(2倍を引く)


・ Y[n] = 2 (Y座標は1つ前のY座)× (Y[n-1](標から1つ前の正矢を) - V[n-1](引いたものを2倍して)) - Y[n-2](2つ前のY座標を引く)


「式がふたつあるけど。」

「上の式はさっきの説明どおりに書いたもので、下の式はそれの変形。どっちでも答えは一緒。逆に、この式を使って線路の形状から10m弦正矢(メートルげんせいや)を計算することも可能。」


・ V[n] = Y(正矢はY座)[n] - (Y(標から、前)[n-1] + Y(後のY座標)[n+1]) ÷ 2(の平均を引く)

「こーゆー計算式を教えてもらっても、使う機会は無いと思うな。」

「ネットで高低や通りの波形図が載ってることがあるから、そこに定規あてて測ったのを使ってみるとか。」

「どんなところに出てるんですか?」

「研究発表とか、運輸安全委員会の報告書なんかだね。」

「表計算ソフトで試してみましょうか。」

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