304.軌道変位(10)
「なんか、頭が煮えてきて、変な幻聴が聞こえた気がした。」
「ま、あれこれ説明したけれどさ、要するに10m弦の正矢を5m間隔で測定した情報からは、元の線路の形状を推定することも可能だってことだよ。」
「たしかに測定間隔を変えたら、今みたいな計算は成立しなくなっちゃいますね。」
「でも、今聞いたようなことは、実際にはやってなさそうって言ってたよね。」
「そもそもの話なんだけど、線路を直す目的は『安全な走行』と『快適な乗り心地』であって、設計上の線形に戻すことじゃないんだよ。」
「そういえば、糸張りでの測定って、前後の位置との相対的な差異を測ってるだけでした。」
「このことからも絶対的な位置を求めることが目的じゃないってわかるでしょ。線路の歪みが基準を超えていないかってのを確認してるんだ。」
「じゃあさ、直す必要が無い状態の線路が全体的に平行移動したら、それは戻さないでも良いってこと?」
「極端に言えばそう。もちろん移動範囲の始終端には歪みが出るだろうから、これが大きかったら対処が必要。」
「たしかにそうだね。」
「この測定結果からは直すべき量を求めることも可能なんだ。そしてそのことが重要。」
「そっちが本来の使い方なんですね。」
「ただし、直す量を求めるときには『動かせない』箇所もあるから注意が必要。」
「どんなところでしょう。」
「踏切とか、橋とか。」
「ああ、それは動かせないや。」
「その前後で歪みが大きい時には、線路が緩やかに接続するように直す必要がある。」
「じゃないとガッタンってなっちゃいそうだね。」
「それから、ホームや架線なんかとは、近付きすぎず、離れすぎないように注意しないといけない。」
「線路を直すっていっても、周囲も意識しなくちゃいけないんだね。」
「構造物や、他にも隣の線路との間隔とかも考慮する必要がある。」
「架線だって高さだけじゃなくて、左右もズレすぎるとパンタグラフが外れたりしませんか?」
「高低の場合、通常は低い所を持ち上げて直すって方法を採るから基本的に高くなる一方。なので上がりすぎてないかの注意も必要。」




