259.雨量規制(3)
「その大事故ってどんなの?」
「雨が降りやんでから6時間ほど経った頃に築堤が崩壊して、急行列車が脱線転覆したっていう事故。その2時間ほど前には別の列車が何事もなく通過してる。」
「不思議な事故ですね。」
「前夜から朝までに、それなりの降雨量はあったんだけど、それ自体は運転規制をするほどじゃなかったみたい。」
「ならば、他に条件があったんだ。」
「実はその数日前までは大雨が続いてて、連続雨量での運転規制が行われていたそうなんだよ。」
「その影響が残ってたんですね。」
「連続雨量が多いと時雨量の基準値を下げるってことだったよね。当日の朝までにそれなりの量の雨が降ったってことだけど、それには引っかからなかったの?」
「ここがポイントなんだけど、連続雨量は雨がやんで12時間経つとリセットされるんだ。実際に雨がやんでたのはそれよりずっと長くて、前の雨から2日程たってから降り始めたらしい。」
「それは悩ましいですね。12時間っていうのが妥当かはともかく、2日間待つのはさすがに長すぎます。」
「そもそも12時間っていうのはどうやって決まったんだろう。」
「そこは経験則ってことじゃないかな。長く使われている数値だし、通常はそれだけの時間で十分に水が抜けるんじゃない?」
「つまりここは普通の場所じゃなかったってことでしょうか。」
「そう。事故現場の築堤は『排水パイプ』も無いような古い施設で、加えて地盤も軟弱で雨の影響が遅れて出やすい性質の土だったんだって。」
「えっと、設備も土台もゆるんゆるんが長続きするって理解で良い?」
「そんな感じ。で、リセットまでを48時間に延ばした『累積雨量』ってのを、そんな箇所を対象に新設した。」
「そういう所って全国にどのくらいあるんだろう。」
「それはわからないけれど、盛土や地盤の改良は進めたんじゃないかな。」
「『排水パイプ』って盛土の脇からパイプが付きだしてるやつだっけ。」
「うん。『水抜きパイプ』ともいうそうだけど、のり面内の水を排水するために埋め込まれるパイプ。土留壁なんかに開いてる孔は『水抜き孔』っていうそうだよ。」
「そういうものの有無で安全性が違っちゃうんですね。」




