252.雨(2)
「電車って雨で滑るものなんだね。」
「うん。速度を上げてる時に滑れば『空転』、ブレーキをかけてる時に滑れば『滑走』ってことになる。」
「空転っていうのは車輪の空回りで、滑走はレールの上を滑っちゃうってことですね。」
「うん。空転したら加速をやめる、滑走したらブレーキを緩めるってのが基本的な対処方法。」
「普段でも急加速とか急減速とかすれば起きちゃいそうなことだね。で、それが雨でレールが濡れてると余計に起きやすくなるってことなんだ。」
「そう。空転が起きるとスピードが上がりにくくなる。滑走はオーバーランの原因になるから、起きそうなときは早めにブレーキをかける。どっちも所要時間が増える原因。」
「そうやって、雨が遅れの原因になるんですか。」
「最近の電車は軽量化と加減速性能の向上で滑りやすくなってるらしいよ。」
「そうなんだ。」
「そのかわり、空転や滑走を検知するとモーターの回転を制御して『再粘着』の状態にする仕組みも進化している。」
「なら運転士さんの負担は減ってるのかな?」
「そうかもね。だけど空転が起きにくいように加速を抑えたり、ブレーキを早目にかけるとかの工夫はしてると思う。」
「そういう加減は必要なんですね。」
「雨の日に電車に乗ってて『きゅい~ん、ひゅい~ん』みたいな加速中のモーター音が、途中でちょっと変調して電車もガクガクってする時ってない?」
「あ、ある。」
「あれが、空転が発生して回転数を調整してる時の音と動きみたいだよ。」
「うん。なんか喘いでるみたいな、不健康そうな音だった気がする。」
「空転や滑走は、落ち葉の季節も要注意だね。」
「あ、小海線で『落ち葉による空転』とか聞いたことがあるのを思い出しました。」
「バナナの皮みたい…。」
「機関車や、勾配区間の電車とか気動車では『砂箱』と『砂まき装置』を備えてて、空転が起きるとレールの上に砂を撒いて粘着力を上げてるよ。」
「山道で『砂箱』って見たことがありますけど、あれとは違うんですよね?」
「『滑り止めの砂』ってことで、合格祈願のお守りもあったよね。」




