222.営業キロ(3)
「ふと思ったんだけど、線路脇に『キロポスト』ってあるじゃない。」
「うん。」
「工事で線路の延長が変わって『改キロ』をしたとき、キロポストってどうしてるの?」
「通常は変えない。工事個所から終点まで全部を移設するって大変でしょ。」
「確かにそうだね。」
「でもそれだと営業キロと違っちゃいますよね?不都合は無いんですか?」
「変えちゃった方が不都合が生じるんだよ。」
「そうなんですか?」
「キロポストなんかを『距離標』っていうんだけど、それが示しているのは起点からの『距離』と同時に、その場所の『位置』なんだ。」
「それって同じじゃないの?」
「工事で線路の延長が変わると、そこから先の区間は何もしてなくても起点からの距離が変わるよね。」
「あ、そっか。『距離』が変わっちゃっても『位置』は変わってないのか。」
「線路の設備の位置を管理するのって、起点からの距離が一番わかりやすいんだよ。でも、その値が変わっちゃうと面倒なことになる。」
「住所みたいに使いたいってことですね。」
「そう。起点からの距離を設備の位置を管理するのに使う場合には、特に『キロ程』などの言い方をするそうだけど、途中で距離の増減があっても、その先の『キロ程』は変えたくないんだ。」
「なら、短くなった場合はその『キロ程』の途中抜けが起きたりするの?」
「たとえば線路延長が40m短くなったときには、10k960mの位置と11kmの位置を同じ地点とみなすって感じで調整を行う。」
「そうやって11kmから先ではキロ程が変わらないようにするんだ。」
「逆に線路延長が40m長くなったときには、11k40mの位置と11kmを同じ地点にする。」
「40m分ダブるの?」
「そう。キロ程の途中抜けが起きるのを『ブレーキメートル』、重複を『ダブルメートル』っていう。他にもいくつかの言い方があるみたいだけどね。」
「踏切、トンネル、架線柱、橋梁…。事業者ごとに異なるけど、線路の設備って、探してみると結構あちこちにキロ程が書いてあるんだよ。」
「帰りに見てみよう。」
「直接書いてはいなくても、まくらぎやレールなんかの材料、曲線位置とか線路の形状、そういったものの位置は全部このキロ程で台帳管理してる。」
「それを変更するなんて、途方もないことだって気がついたよ。」




