平穏と疲労する野球部
祝勝会を終えた俺達は各々の日々へと戻った。
演劇部は自由な演劇をし、杉谷は俺へと絡み、野球部も部室へと集まって野球談義をしながら時間を潰す。
そうなりたかったと俺は最近思っている。
「どうするのよ? この状況」折原は机に突っ伏しそう嘆く。
「どうするも何もどうも出来へんやろ?」あの阪田さんもお手上げの様子でボーッと頬ずえをつく。
野球部が悩んでいる理由……それは「また私の所に来たんですけど……入部届けが……」大村先生に運ばれた小冊子ほどの分厚さもある入部届けが机の上に置かれる。
そう俺達の悩みはこの入部届けである。
この前の野球勝負でこの野球部の事を知らしめてしまい、入部希望者が増えたのだ。
傍から見れば喜ばしい事なのだが……
「部員が増えるのは嬉しいんですけどねぇ〜」そういい束の中から入部届けを1枚スっと手に取る。
そう簡単に喜べないのが実情だ。
そしてその原因は俺の前でお茶を飲んでいる千葉さんだ。
野球部の存在を知らしめて入部希望者が現れた所までは良かったのだが俺達の頭を抱えさせる理由は入部理由にある。
「あの、試合を見て感動したから」
「野球部の存在を知り面白そうと思ったから」など
野球部への入部理由が浅く、目の前にいる千葉さん(一応高嶺の花)目当てなのだ。
物によっては「千葉さんがいるから」なんて建前すらない本音に忠実なものもあった。
しかし、部長である千葉さんが目を通さない訳にもいかず、俺を含んだ部員全員で入部届けを見る日が3日ほど続いていた。
「どうするのよ? これ、あんたのせいじゃない?」
疲弊からか、折原は少し変わった文法の日本語で千葉さんへとあたる。
だが、千葉さんは余裕の表情を浮かべ「あら、私のせいだとは決まっていないじゃない」と入部届けを見ながら答える。
「まぁ、それもそうやな?」
入部届けを疲れながら見る俺と折原とは違い阪田さんと千葉さんは余裕そうな表情で見る。
「よく疲れませんね?」疲弊混じりの俺の質問に顔色1つ変えず「生徒会で慣れているから」と返す。
「うちも、風紀委員でやってた事やから2人ほどではないけど、流石に3日連続はキツいわ」阪田さんは身体を伸ばしそういう。
「それに、これじゃあ野球部の活動もできないしね?」
「それはそうだ」
「何とかせんとアカンのはそうやしな〜」
全員入部届けから目を離さずに会話だけの会議が進んでいく。
「皆さんは何かいい案無いんですか?」
「もう、いっその事断ってしまうか?」
疲れており、半脳死状態の俺達はそんな案しか出てこない。
「そ、それは困ります、部活動は分け隔てなく入部する権利がありますから」
「何か適当に理由をつけて断ってしまえばいいのに」
「ダメよ? 中には本当に私たちと同じで野球の好きな人がいるかも知れないから?」
阪田さん達と千葉さんの意見は2つとも間違ってはおらず、どちらとも決めきれないのも困った点だ。
「何か、いい折衷案があれば……」
俺は黙りこくった時に1つの事を思い出しそれが解決案になるのでは無いかと思ったのだ。この作業からの解放という喜びの可能性がある余り俺はイスから立ち上がり「そうだ! その手を使おう!」




