行くな! 行くな! 超えるな!
俺の放った球は山なりの軌道で真ん中高めにいっている。
打たれたと思ったが、逆に今までとは全く違う遅い球にタイミングを外され外へと飛んで行った。
フラフラと上がる球の下に右翼手の武田さんが入り、ガシッと掴んだ。
その瞬間、試合は決まり俺たちの野球部が存続する事が決まった。
三次さんはガクリと膝から崩れ落ち、折原たちはマウンドに集まり盛り上がっていた。
それを後ろからそっと眺めていると「最後の球、正野みたいだったわね?」
「やめてくださいよ千葉さん、弄るの」
「でも、どうして山なりボールを投げたの?」
「あぁ、あれは色々考える中で混乱して十五秒以内に投げないとって思って」
千葉さんはフフっと笑い「それは、今回ルールに入れてないから問題無いわよ?」
「えぇ! そうだったんですか? だったら教えといて下さいよ?」
肩を落とし話すと千葉さんは手を付き「えぇ、すまなかったわ……でも結果オーライって事でね?」
「はぁ〜」
俺のため息に構わず千葉さんはマウンドを指さし「ほら皆が私達の事を呼んでいるわよ?」と俺の気持ちを考えず話を変えた。
マウンド付近には決勝点の小林さんにしっかりと火消しをしたラフィーさん、最後にヒットを放った平野さんそれに俺をリードしてくれた杉谷に最後のアウトを取った武田さんと野球部に協力してくれた仲間達がワイワイと喜びを分かちあっていた。
「ちょっと! 早く来てよ! 阪田さんが胴上げするって聞かないから!」
焦りながらもそこには少し笑顔の混じる折原が俺と千葉さんを手招きし、「ほら! 胴上げ投手の鈴木くんがはよこうへんと始まらへんやんかいな! ほら千葉さんも後で胴上げしなあかんにゃから!」阪田さんが賑やかに呼び込む。
「あ、あの? 危ないから胴上げはダメなんです〜」
そして大村先生がストッパーをする。
「千葉さんが目指した野球部になりましたか?」
「えぇ、鈴木くんのお陰でね?」
一寸の曇りもない笑顔を見て俺は思い出した。
(そういえば、最初俺が部活に入ったのは千葉さんの野球愛に答えたかったからだったっけ? でも今は少し違う気がするな? なんだろうか……)
俺は笑顔の千葉さんの顔を見合わせる。
「早く行かないといけませんね?」
「えぇ」
俺と千葉さんはその騒ぎの渦中に飛び込み喜びを分かち合うのだった。




