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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第二章 空の果ての無重力/far from home
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34 希望につながる細い糸

 「ああ、そうだ。お前等、次の行き先、決まってるか?」

 

 馬車の窓からスザク先生が顔を出す。

 俺はみんなと顔を見合わせた。

 キリンとソラの行きたい国はまだ遠いけど、ドレイクはエクエスティアだろうし、スパナはヘルバスティア……どっちから行くか、まだ話してないな。

 「あ、いえ……エクエスティアか、ヘルバスティアか……」

 「じゃ、ヘルバスティアに向かってくれないか? 事情はまた、ゼスト先輩のとこに手紙送っとくからさ」


 スザク先生はそう言って、馬車の中に戻った。


 ***


 「今回はありがとうございました」

 「いえ、実際、資材が不足していたので、こちらも助かりました。なかなか、わがままな方でして。少しぐらい、花火の色が少なくても、気にしなければいいと思うのですが」


 「お元気でいただけるなら、それに越したことはありませんよ。リレニア商会の飛行船は、すみません。本当は、被害を出したくなかったのですが。古代竜は想定シナリオのうち、確率の低いルートだったので、少し対応が遅れました」


 「なに、一部損傷で済んだので、保険の範囲内です。空鯨の大半は、そちらの護衛艦で追い払っていただけましたからね。古代竜もありがとうございました。その分のお支払いは上乗せを」


 「それがですね。古代竜の群の方は、私たちではないんです。どうも家族連れだったようですが……何らかの要因が生じて、追い払われたようです」


 「何らかの要因?」


 「詳しくは調査中ですが、重罪人のハル・インバクタスが関係している可能性があります。また、分かりましたら情報共有します」


 「それは穏やかではないですね。ユリウス審理管理官。引き続き、よろしくお願いします。……ハルの弟君は優秀なようだ。くれぐれも、同じようなことにならないように、祈っています。盗みや強奪は、健全な商売が最も憎むものですから」


 「承知しております」

 マルカンティア宰相との通話器を置いた。


 「ハルモニア、アリアステル、ハルの行方は」

 「捜索中ですが……見失いました」


 ハルモニアがあっさりと言い放つ。


 「なんだか、嬉しそうですね」

 「まさか」


 アリアステルは、視線をあさっての方向に向けている。


 「……コテツ達を助けた、というのは、本当ですか?」

 「護衛艦からの映像を見る限り、リレニア商会の輸送船の前方2体、右方2体、左方1体の古代竜を、いっぺんに、上空に落としました。護衛艦も、撃墜の準備はしていましたが……わずかに間に合わない可能性がありました。その状況から見れば、あの行動は、そのようにしか見えません」


 5体の古代竜。

 その質量はいかほどのものか。

 それを、一瞬で、一度に。


 恐らくは、「重くする力」の逆向き使用で軽くしたか、「重さ」の向き自体を変えたか。


 いずれにしても、彼以外に同じことができる警邏官が何人いるか。

 ましてや、どこからともなく、空中に現れ、あっさりとやってのけ、消える。

 

 今、彼がどんなノードや、その他の力を組み合わせて運用しているのか。興味は尽きないが。


 「今回の行動の意味は不明です。しかし、分かっているでしょうが、彼は「ななつなぎの国々」共通の、指名手配、重罪人ですよ。気を引き締めて、捜索してください」


 ハルモニアとアリアステルが頭を下げた。

 

 気持ちは分からなくもない。

 もし。


 彼がコテツを助けたのだとしたら。

 

 彼が罪を犯した動機が全く不明であるところ。

 それは、彼が無実である、という、ごくわずかな希望に繋がる、細い糸にも見えるのだから。



読んでいただいてありがとうございます!

もしよければ評価★★★★★・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!


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