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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第三章 その手を離さないで/never let me go
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22 島間交流4/その夜に向けて祝杯を

 困った。

 リオの方が、まだ速い。

 いや、ドレイクの動きを見たせいでそう感じるのか。

 

 あいつはひどいもんで、見えないだろうと思ったのか、体がうずいたのか、何度か相手の後ろに回り込んでいた。

 対戦相手も、観客も気付かなかったと思うけど……。

 

 俺の相手である、陽光島の中堅の選手はファルタという名前で、引き締まった体つきと鋭い一重の目が印象的だった。


 まぁ、強いのだと思うけれど。


 前蹴り、軸足を移しての回し蹴り上段、から変化して下段蹴り。

 それを全てかわす度に、歓声が上がる。

 

 歓声が、次第にどよめきに。


 いや、まずいか。

 

 目立ちたい訳じゃなくて、リオのどうしても今回、チームとして勝ちたい、という熱意に押されての出場だったが。適当なところで終わりにしないと。


 相手の隙を見て……。


 ふと、視界の端に映った赤い瞳に視線が奪われてしまった。

 キリンがじっと見ている。



 え、怒ってる?



 いや、喧嘩してそれっきりだから、ずっと怒ってるのか?


 そんなに怒らなくたっていいじゃないか。

 そんなに悪いことしたかよ。


 あーもう、なんなんだよ、あいつは……。


 そもそも、勝手にチーム分けして、俺じゃなくて、ドレイクとスパナと組むって言って。

 黒男に襲われたって、一人で何とかするって。 


 俺の力なんて必要ないって……。


 「コテツ!」

 

 「あ」

 

 リオの声で、我に返る。 


 こめかみの辺りに回し蹴りが迫っていた。

 

 速く動く力を発動させ、すんでのところで左腕の籠手でガードする。


 籠手が紫に染まる。

 

 相手のポイントだ。


 もう1ポイントで、負ける。

 

 勢いづいたファルタが、速度を上げて迫ってくる。

 

 一瞬。

 


 キリンが心配そうな顔をしたのが見えた。


 次の瞬間、野外の特設会場が静まり返った。


 上段蹴りをかわしざま、胴にたたき込まれた俺の掌底、弱めの「砲撃」(フラルゴ)で、ファルタ会場の端まで吹き飛ばされた。


 審判がファルタに近づき、赤い旗を振る。


 爆発したかのような、生徒達の歓声が響きわたった。


 「勝者、コテツ!」

 

 ……やり過ぎた気がするが……。

 とりあえず、リオも喜んでるし、良いか。怪我しないくらいには力を抑えたけど。


 怒ってるのか、心配してるのか。


 情けないことに、キリンの心配した顔を見て、嬉しいと思った自分がいた。

 何考えてんだ俺は。

 キリンは……。

 

 いつの間にか、姿を消していた。

 

 俺はため息をつきながら、笑顔を作ってリオの方に向かった。 


 ***

 

 大将戦は、一進一退の攻防を制した、リオの勝利だった。

 陽光島の選手も強かったのだが……。

 

 終盤、ミルカの声援で、明らかに動きの良くなったリオの気迫が勝った。 

 

 しかし、不思議なもので、別に自分の島の選手を応援する、というものじゃないんだな。


 白銀島のリオの応援を全力でする陽光島のミルカ。それに対して、誰も違和感を持っていないようだった。

 そもそも先鋒のラシャの試合の時だって、ラシャの彼女だという、陽光島の子が声援を送っていた。ドレイクが無慈悲に倒していたが……。

 

 控え室で、リオが俺とラシャにコップを持たせ、ヤシの実のジュースを注ぐ。

 

 「ありがとう、コテツ。今回はどうしても勝ちたかったから……卒業の前に、ね。勝って、ミルカと祝杯を上げようって。ほんと、いくらお礼を言っても足りないくらいだよ。向こうも強い助っ人を用意してるって聞いてたから……」

 

 ラシャがため息をつく。

 「俺も、卒業の前に良いとこ見せたかったんだけどな」

 

 「ま、チームとしては、勝ったんだから、さ


 「くっそ……リオ、このやろう」

 ラシャがリオにヘッドロックをかける……、が二人とも笑ってる。

 

 「ま、俺はリリアに慰めてもらうことにするわ」

 

 「やっぱり、彼女の前では勝ちたいもんなのか?」

 

 俺は素朴な疑問を二人に投げかけた。

 

 「当たり前だろ? 勝った方が、夜のデートの会話も弾むってもんだ」

 

 ……。

 

 「夜のデート?」

 

 何やら怪しげな言葉じゃないか……。

読んでいただいてありがとうございます!

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