22 島間交流4/その夜に向けて祝杯を
困った。
リオの方が、まだ速い。
いや、ドレイクの動きを見たせいでそう感じるのか。
あいつはひどいもんで、見えないだろうと思ったのか、体がうずいたのか、何度か相手の後ろに回り込んでいた。
対戦相手も、観客も気付かなかったと思うけど……。
俺の相手である、陽光島の中堅の選手はファルタという名前で、引き締まった体つきと鋭い一重の目が印象的だった。
まぁ、強いのだと思うけれど。
前蹴り、軸足を移しての回し蹴り上段、から変化して下段蹴り。
それを全てかわす度に、歓声が上がる。
歓声が、次第にどよめきに。
いや、まずいか。
目立ちたい訳じゃなくて、リオのどうしても今回、チームとして勝ちたい、という熱意に押されての出場だったが。適当なところで終わりにしないと。
相手の隙を見て……。
ふと、視界の端に映った赤い瞳に視線が奪われてしまった。
キリンがじっと見ている。
え、怒ってる?
いや、喧嘩してそれっきりだから、ずっと怒ってるのか?
そんなに怒らなくたっていいじゃないか。
そんなに悪いことしたかよ。
あーもう、なんなんだよ、あいつは……。
そもそも、勝手にチーム分けして、俺じゃなくて、ドレイクとスパナと組むって言って。
黒男に襲われたって、一人で何とかするって。
俺の力なんて必要ないって……。
「コテツ!」
「あ」
リオの声で、我に返る。
こめかみの辺りに回し蹴りが迫っていた。
速く動く力を発動させ、すんでのところで左腕の籠手でガードする。
籠手が紫に染まる。
相手のポイントだ。
もう1ポイントで、負ける。
勢いづいたファルタが、速度を上げて迫ってくる。
一瞬。
キリンが心配そうな顔をしたのが見えた。
次の瞬間、野外の特設会場が静まり返った。
上段蹴りをかわしざま、胴にたたき込まれた俺の掌底、弱めの「砲撃」(フラルゴ)で、ファルタ会場の端まで吹き飛ばされた。
審判がファルタに近づき、赤い旗を振る。
爆発したかのような、生徒達の歓声が響きわたった。
「勝者、コテツ!」
……やり過ぎた気がするが……。
とりあえず、リオも喜んでるし、良いか。怪我しないくらいには力を抑えたけど。
怒ってるのか、心配してるのか。
情けないことに、キリンの心配した顔を見て、嬉しいと思った自分がいた。
何考えてんだ俺は。
キリンは……。
いつの間にか、姿を消していた。
俺はため息をつきながら、笑顔を作ってリオの方に向かった。
***
大将戦は、一進一退の攻防を制した、リオの勝利だった。
陽光島の選手も強かったのだが……。
終盤、ミルカの声援で、明らかに動きの良くなったリオの気迫が勝った。
しかし、不思議なもので、別に自分の島の選手を応援する、というものじゃないんだな。
白銀島のリオの応援を全力でする陽光島のミルカ。それに対して、誰も違和感を持っていないようだった。
そもそも先鋒のラシャの試合の時だって、ラシャの彼女だという、陽光島の子が声援を送っていた。ドレイクが無慈悲に倒していたが……。
控え室で、リオが俺とラシャにコップを持たせ、ヤシの実のジュースを注ぐ。
「ありがとう、コテツ。今回はどうしても勝ちたかったから……卒業の前に、ね。勝って、ミルカと祝杯を上げようって。ほんと、いくらお礼を言っても足りないくらいだよ。向こうも強い助っ人を用意してるって聞いてたから……」
ラシャがため息をつく。
「俺も、卒業の前に良いとこ見せたかったんだけどな」
「ま、チームとしては、勝ったんだから、さ
「くっそ……リオ、このやろう」
ラシャがリオにヘッドロックをかける……、が二人とも笑ってる。
「ま、俺はリリアに慰めてもらうことにするわ」
「やっぱり、彼女の前では勝ちたいもんなのか?」
俺は素朴な疑問を二人に投げかけた。
「当たり前だろ? 勝った方が、夜のデートの会話も弾むってもんだ」
……。
「夜のデート?」
何やら怪しげな言葉じゃないか……。
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