21 島間交流3/日差しの中で心は裏腹
「わ、私はそうは思わなかったかな。陰のある感じって言ってたけど、そう、何か、ちょっと暗そうだし? 何となく、へこんだらそのまま落ち込んじゃって、励ましてやんないと立ち直らなそうで心配だし? ああいうタイプって、一般的には、女子受けしないんじゃないかなーって」
思わず一気にまくし立て、ミルカの硬直した表情に、ようやく、しまった、と思った。
えー、そうかなー、くらいで、適当に話を合わせるところじゃないか。こんな話。
何を私は口走っているのだ。
「……もしかして、案外、ああいう子、タイプなの」
「へ? 何を……」
「あ、大丈夫だから。私はリオしか眼中にないから。心配しなくていいよ!」
「ち、違う……」
勘違いだ。まるで私が、気になる男子を取られまいと、悪口を言ったかのようじゃないか。
ミルカは微笑みながら、へー、ふーん、などと言いつつ、私から離れ、先を行くリリアの方に近付いていった。
ああもう。
滅茶苦茶だ。
全部コテツのせいだ。
後で絶対文句を言って……。
胸がちくりと痛んだ。
一ヶ月ぶりに会うのに。
また、コテツに喧嘩をふっかけるのか、私は。
そんなことしたい訳じゃないのに。
何で私は、あいつに対して、こうなんだろう。
「ほんと、何なのよ」
潮風のそよぐ、明るい日差しの中。
2つの学園の、生徒達の、楽しげな話し声に、私の心はひっそりと沈んでいった。
***
「ほんと、最悪なんですけど……何で断らなかったの? ドレイク君」
キリンさんが、怒り心頭の様子で、「コルダ」部対抗戦の控え室にやってきた。
僕は先ほど、団体戦の先鋒として出場し、白銀島「コルダ」部の先鋒のラシャ君を倒したところだった。
「すみません、キリンさん……内緒にしていて」
どうも、今日のキリンさんは、機嫌があまり麗しくないようだ。
怒った顔もお美しいのだが……。
さすがは僕の初恋の人。
まぁ、それは置いといて。
「少し、考えがありまして。この島間交流で目立つ必要があったものですから」
「それなら、そう言ってくれたら良かったのに。情報共有・情報交換は大事でしょ。いきなり試合出て、冷や汗かいちゃった……。上手く相手に合わせてたとは思うけど……力の差が大きすぎるんだから、気を付けてもらわないと。目立ちすぎると怪しまれるから」
「すみません。若干言いづらい作戦で……また島間交流が終わって、陽光島に帰ったらお話します」
キリンさんがため息をついた。
「……敵を欺くには、まずは味方から? ちゃんと、帰ったら教えてくださいね」
膨れ面のキリンさん。
他にも何か要因があったのだろうか。
「もしかして、倒した男の子、ラシャ君でしたっけ。何かまずかったですか?」
「まぁ、それはそれなんだけど。……あの男の子、ミルカの友達のリリアの彼氏なの。絶対勝つからって言ってたみたいで、リリア泣いちゃってて……」
ああ、ミルカとリリア。キリンさんがよく一緒にいる美人さんたちの一人か。
「まぁ、勝負は勝負なので。僕じゃなくても負けてたかも知れないですし」
「先鋒同士の試合は、ずっとラシャが勝ってたんだって。中堅は陽光島が勝つことが多くて、大将戦でリオ君が勝つか負けるかが、いつもポイントらしくて……」
「まぁ、でもそれなら、今回は、中堅のコテツが勝つからいいんじゃないですか?」
キリンさんが沈黙した。
白銀島の「コルダ」部の中堅としてコテツが出場する。
それをさっき知った時のキリンさんの硬直ぶりは凄まじいものだった。
どのような感情がキリンさんに浮かんだのかは定かではないが、とにかく、「コルダ」の試合はこの島間交流の花形。
目立つのだ。
あいつに限って、女子に注目されたい、という動機ではないとは思うが。
「あいつも、本当に、何考えてるのか……」
「そう、ね」
いかん、まるで背中から炎が上がっているようだ。僕に向ける感情とは質が違う。
「み、見に行かなくて良いんですか? コテツの試合ー」
「必要ないです! 私は午後の「ウェバー」競技の準備に行きますので!」
くるりと背を向けて、キリンさんは控え室から出ていった。
ほんと、コテツ。
早く仲直りしてくれよ……。
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