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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第三章 その手を離さないで/never let me go
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17 それはあまりにも場違いな

 光の束を集めて、それを空中で幾重にも重ねていくイメージ。それは大きな力の渦になって、迸る。

 その力の名前を呼ぶ。

 

 「落下する電撃」(トルニトス)

 

 空中から、野原に向かって白い閃光が走り、弾けて消失した。


 地面に当たる前に消し去った。草花が焦げてしまわないように。

 そのくせ、踏みつけながら帰るくせに。

 矛盾した優しさ。何の気遣いなのか。


 相変わらず、電撃の威力は戻らない。

 当然、分かっていることだけれど。

 

 なにせ、私は警邏官の禁忌を犯したのだから。 

 あの日、私は嘘をついた。


 「警邏官殺し」をしたあなたが、私の前に現れて。

 

 私は、王都の警邏官達に、嘘をついた。

 

 あなたは、ここにいないって。

 

 そして、もう一つ。

 

 ーララ、もう二度と会えないかも知れない。だから、自分勝手だと思うけど、どうしても、伝えておきたくてー



 僕と結婚してください。


 

 笑顔で、でも真面目な瞳で。

 

 ー馬鹿なこと、言わないで!ー


 私は、そんな言葉で、場違いにも程がある、その申し出を断った。

 


 死ぬほど、嬉しかったくせに。



 涙で滲んだ視界の、瞬きの刹那。

 

 一瞬、あなたの寂しそうな笑顔が見えて、そして消えた。


 

 ハル。

 


 あなたは今、どこにいるの?


 「ララ、相変わらず、能力は戻らないんですね」


 振り向くと、そこには私の兄であり、警邏官の事務方の最高位の一つ、王都警邏官管理局第三位の官吏である、審理管理官ユーディキュアを務める、ユリウスが立っていた。

 

 「もう戻る見込みはありません。兵器登録、抹消してくださいな」


 「そう簡単にはいかないよ。兵器登録警邏官は、アレステリア国国防の要なんだから。その一つが機能不全だ、ということだけでも、国家防衛、果ては世界の治安そのものに影響を与えるのだから」


 「そもそも、荷が重いのよね、兵器だなんて」

 私は、背伸びをした。


 「スザクから連絡がありました。例のゴーレムは、ヘルバスティアに密輸された可能性が高いようです」


 「捜索依頼が出ていた物よね。特殊な機能が付加されているとか……」


 「自己再生機能、というものらしいです。破壊しても、すぐさま元の形に戻る、と。スコラスティアとマゲイアティアが秘密裏に研究していた技術を、兵器に転用したようです」

 

 「穏やかじゃない話ね」

 「世界が、ざわめいています。私がララのことを気にしているのも、分かるでしょう?」

 

 「……そうね。戦争は嫌よ。それを止められるなら……引き続き、力の戻し方は調べてみます」

 「ええ、頼みましたよ。それと、もしかしたらスザクから、ヘルバスティアのゴーレムの件で、協力依頼があるかも知れません。その時はよろしくお願いします」

 

 「スザク君がいれば大丈夫でしょう?」

 「さすがに、未知の機能を持つゴーレム相手ですから、念のためです」

 「まぁ、分かりました。ヘルバスティアも、随分昔に行ったっきりだし。教え子達にも会えるかも、ですしね」


 コテツ君やキリンちゃん達が、容疑のかかった施設に潜入捜査中と聞いた。

 

 マルカンティアで、コテツ君が窮地に陥った際。

 ハルが目撃された、という噂。

 

 何にせよ、生きていてくれるなら。

 もし、もう一度、会うことができたなら。

 


 不意に、視界をユリウスの顔が遮った。


 

 「何を考えてます?」



 「何も」


 兄は、ため息をついた。


読んでいただいてありがとうございます!

もしよければ評価★★★★★・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!


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