17 それはあまりにも場違いな
光の束を集めて、それを空中で幾重にも重ねていくイメージ。それは大きな力の渦になって、迸る。
その力の名前を呼ぶ。
「落下する電撃」(トルニトス)
空中から、野原に向かって白い閃光が走り、弾けて消失した。
地面に当たる前に消し去った。草花が焦げてしまわないように。
そのくせ、踏みつけながら帰るくせに。
矛盾した優しさ。何の気遣いなのか。
相変わらず、電撃の威力は戻らない。
当然、分かっていることだけれど。
なにせ、私は警邏官の禁忌を犯したのだから。
あの日、私は嘘をついた。
「警邏官殺し」をしたあなたが、私の前に現れて。
私は、王都の警邏官達に、嘘をついた。
あなたは、ここにいないって。
そして、もう一つ。
ーララ、もう二度と会えないかも知れない。だから、自分勝手だと思うけど、どうしても、伝えておきたくてー
僕と結婚してください。
笑顔で、でも真面目な瞳で。
ー馬鹿なこと、言わないで!ー
私は、そんな言葉で、場違いにも程がある、その申し出を断った。
死ぬほど、嬉しかったくせに。
涙で滲んだ視界の、瞬きの刹那。
一瞬、あなたの寂しそうな笑顔が見えて、そして消えた。
ハル。
あなたは今、どこにいるの?
「ララ、相変わらず、能力は戻らないんですね」
振り向くと、そこには私の兄であり、警邏官の事務方の最高位の一つ、王都警邏官管理局第三位の官吏である、審理管理官を務める、ユリウスが立っていた。
「もう戻る見込みはありません。兵器登録、抹消してくださいな」
「そう簡単にはいかないよ。兵器登録警邏官は、アレステリア国国防の要なんだから。その一つが機能不全だ、ということだけでも、国家防衛、果ては世界の治安そのものに影響を与えるのだから」
「そもそも、荷が重いのよね、兵器だなんて」
私は、背伸びをした。
「スザクから連絡がありました。例のゴーレムは、ヘルバスティアに密輸された可能性が高いようです」
「捜索依頼が出ていた物よね。特殊な機能が付加されているとか……」
「自己再生機能、というものらしいです。破壊しても、すぐさま元の形に戻る、と。スコラスティアとマゲイアティアが秘密裏に研究していた技術を、兵器に転用したようです」
「穏やかじゃない話ね」
「世界が、ざわめいています。私がララのことを気にしているのも、分かるでしょう?」
「……そうね。戦争は嫌よ。それを止められるなら……引き続き、力の戻し方は調べてみます」
「ええ、頼みましたよ。それと、もしかしたらスザクから、ヘルバスティアのゴーレムの件で、協力依頼があるかも知れません。その時はよろしくお願いします」
「スザク君がいれば大丈夫でしょう?」
「さすがに、未知の機能を持つゴーレム相手ですから、念のためです」
「まぁ、分かりました。ヘルバスティアも、随分昔に行ったっきりだし。教え子達にも会えるかも、ですしね」
コテツ君やキリンちゃん達が、容疑のかかった施設に潜入捜査中と聞いた。
マルカンティアで、コテツ君が窮地に陥った際。
ハルが目撃された、という噂。
何にせよ、生きていてくれるなら。
もし、もう一度、会うことができたなら。
不意に、視界をユリウスの顔が遮った。
「何を考えてます?」
「何も」
兄は、ため息をついた。
読んでいただいてありがとうございます!
もしよければ評価★★★★★・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!




