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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第三章 その手を離さないで/never let me go
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15 あの子は妙に艶かしい

島間交流の少し前から、ミルカの様子に違和感があった。

 ずっと上の空というか……心がここにない感じ。どこか、遠くに持って行かれているような。普段はずっと集中して授業を聞いているのに、先生に指されても反応せず、3回名前を呼ばれて、ようやく反応する有様だった。

 

 変だ。

 

 いくら楽しみにしているからって。ここまで生活に影響が出るものだろうか。

 

 放課後の教室、ミルカが、長い黒髪の少女と話をしているのが見えた。

 クラスでも、一番大人びた雰囲気の生徒、リリア。歳は私とほとんど同じくらいのはず何だけど……妙に艶めかしい。

 怒られそうだけど、何ならララ先生より、色気みたいなものは感じるような……。

 

 美しい二人の少女が、夕日の中で語らっている様子は、それだけで見とれてしまうほどだったけど。


 同時に。


 何故か、胸が締め付けられるような。

 不安を感じている自分がいた。

 

 何を話してるんだろう。

 廊下で立ち止まった私の背中を、陽気な声が包み込んだ。

 

 「キリン! 今日も部活、来てくれるんだろ?」

 「先に射撃場行ってるからさ!」

 「ほんと、島間交流試合、楽しみだなー」


  にぎやかな男子3人組。ティンバー君、サウス君、レッチェロ君。

 あんまりにものんびりした生活で、腕がなまらないようにと、放課後、裏庭でスリングショットの的当てをしていたところ、この3人組が急に歓声を上げて近付いてきたのだ。

 

 裏庭の木々に、なんか、丁度良い的が吊されてるな、と思い、うずうずした挙句、調子に乗って当てまくっていたのだけど……。


 陽光島の伝統競技「ウェバー」。

 

 これが、陽光島特産の衝撃吸収性に優れた「ヒラギ」の木で作られた規定のスリングショットで、大木に吊るされた的を射抜く競技らしく。


 ルールも知らず、とりあえず、3人に言われるまま、いくつかの的を打ち抜いたところで、私を見る目が変わったのに気づき、「あ、この精度、普通の腕前じゃないっぽい」と思い、途中から手を抜いた。 

 それでも誤魔化しきれず、「ウェバー」部にほぼほぼ強制加入となったのだが。

 

 「準備して、着替えたら行くわ」

 「3連敗中だからさ、今度の島間交流は、絶対勝ちたいんだ。キリンが居れば……」

 「白銀島の奴ら、絶対びっくりするはずさ」

 「頼むぜ! 救世主! 「コルダ」と「ウェバー」、両方負けは絶対回避したいからな」

 「やっぱ、勝った方が夜のキャンプファイヤーも盛り上がるからな」

 

 どうも、島間交流では、伝統競技の「コルダ」部と「ウェバー」部で、生徒同士が競い合うらしく、まぁ、勝った方が、盛り上がる……。


 要するに注目されて、モテるんだそうな。

 

 ソラが語っていた、一つ目の違和感。

 

 島の中では、恋愛禁止。

 学業優先のため、というのが学校の建前だ。

 でも、これを裏返すと、別の島との間では、禁止されていない。


 むしろ、「島間交流では、お互いに切磋琢磨の機会になるよう、積極的に意見交換するように」と教育されていて、どんな関わり方も制限されていない。


 そんな学校の方針を背景に、陽光島分校と白銀島分校では、島間交流を通じて、交際している生徒が何組かいて、それについては学校側も黙認、という姿勢のようだ。

 

 まぁ、好意的に見れば、島の中で交際していると、学業に身が入らない可能性があり、離れた島同士なら、物理的に、月に一回しか会えないから、そのくらいなら良い、ということなのかも知れない。


 だが、ソラはそこに強い違和感がある、と言っていた。

読んでいただいてありがとうございます!

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