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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第三章 その手を離さないで/never let me go
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14 別の出会い方をしていたら、対象だったのに

コテツの武術に関しては、1章の「教師と砲撃」も参照願います。

島間交流。

 その日が近づくに連れ、白銀島の白銀分校の生徒達は明らかに落ち着きを失っていった。

 平静を装っているが、明らかに、心ここにあらず。

 普段優等生のリオが、先生に指されたにも関わらず、完全に上の空。

 それもこれも、島間交流のせいだ、ということを知ったのは、その日の放課後のことだった。

 

 正直、この3週間は極めて平穏だった。

 潜入捜査をしている、ということを忘れてしまうくらいに。授業と寄宿舎の往復。正直、授業の内容は、あ、警邏官学校って難しいことばっかりやってたんだと実感させられるものばかりだった。要するに、簡単だった、ということ。


 「それじゃ、よろしくお願いします」

 「おう」

 

 俺とリオは、放課後の体育館で。顔と上半身に柔らかいクッション性のある防具を付けて、対峙していた。

 ヘルバスティアの白銀島を含めたいくつかの島で引き継がれている、伝統的格闘技「コルダ」の組み手試合。


 体がなまらないように、放課後、兄貴……ハル・インバクタスが読んでいたアレステリアの古武術の本で学んだいくつかの型を練習していたところをリオに見つかった。正直、迂闊だったと思う。もっと本気で体を動かして、「砲撃」(フラルゴ)でも放った日には、今なら、そこそこの太さの木でも倒してしまうだろう。


 俺の動きを見たリオは、目を輝かせて、俺を「コルダ」部に勧誘してきた。断るのも変だし、運動したかった俺は、とりあえずそれに応じ……。今日はリオが本格的な組み手を申し込んできた。

 

 リオは「コルダ」部の主将を務めている、とのことで、学校では一番強いらしい。

 いつの間にか、体育館に、白銀島の生徒達も集まってきていて、ちょっとしたイベントのようになってしまった。


 「コルダ」は、足技に特徴があって、ローキックを囮に使いながら、脚を柔らかく使った回し蹴りや跳び蹴りで、頭部や腹部に致命打をたたき込むのが王道のパターン。

 もちろん、部活なので、「コルダ」の技で致命傷になる箇所の防御にに特化した防具を付けて組み手は行われる。その場所に綺麗に決まると、その衝撃で、その箇所が紫に染まる。ヘルバスティアの植物の繊維を活用しているそうな。


 リオは体が柔らかく、脚を柔らかく使い、意外な角度から踵や足裏を使って致命打を狙ってくる。

 ……。

 

 これが、また、ドレイクの速さに慣れてしまっている上、「見分ける力」が発動するせいで、遅くて遅くて、しょうがない。

 感覚的に、蹴りが始まってから、防具に脚が近づいて来るまでに、背伸びをしてあくびができるくらい。

 当然、繰り出す蹴りの全てが、空を切る。


 リオが、信じられない、というような目をする。

 

 ギャラリーも、ややどよめいている。

 

 ……。

 ソラの視線を感じる。

 

 いや、確かに、まずい。もうちょっと、普通に振る舞わないといけないか?

 え、どうすればいいんだ?

 

 そんなことを考えてたら、目の前にリオ回し蹴りが迫っていた。

 

 あ、やべ。


 反射的に、回し蹴りをかわしながら、リオの胴に掌底をたたき込んでしまった。


 「うわっ!」

 「砲撃」(フラルゴ)ほどではないが、結構な手応えがあって、リオがそこそこ吹っ飛んで、その胴のあたりが紫に染まった。

 

 審判をしていた、リオの友人のグロウルが、驚いた顔をしたまま、急いで赤い旗を上げた。

 俺の勝ちってこと。

 

 ギャラリーからどよめきの声が上がって……何だか、高い声の集団が近付いてくる。白銀島の女子たちだ。……正直、苦手なんだよな……。


 「コテツ君、すごい!」

 「えー! リオに勝つなんて……!」

 「リオ君もかっこよかったよ!」

 

 確か……リグル、ナル、スレイヤ、だったかな。白銀島の女子たちの中でも、活発な三人組。陽気で、女子って感じだよな。

  

 そんな3人に話しかけられて。


 ふと、何故だか、キリンのことが頭に浮かんだ。

 

 「ねぇ、それ、「コルダ」と違うんでしょ? コテツ君オリジナル? 私たちにも、教えてよ」 

 しまった……確かに、足技主体の「コルダ」に、掌底で吹き飛ばすような技はない。


 「僕も教えてほしいな。もうびっくりだよ、コテツ君」


 上半身を起こして、体育館の床に座り込んだリオが笑っている。


 「ていうか、部長、交代してくれない? これは、コテツ君に訓練してもらわなきゃ。陽光島の「コルダ」部との交流戦に向けて」


 「リオは、ミルカの手前、負けられないもんね」

 リグルがそう言うと、リオが真っ赤になった。


 「そういうの、勘弁してくれるかな……」


 「あー、でも、ほんと、コテツ君が陽光島の生徒だったら良かったのになー」

 「ほんとだねー」

 リグル、ナル、スレイヤが、俺の顔をのぞき込む。

 

 え?

 何だ、この雰囲気。


 「私、それだったら、絶対島間交流でアタックしてたなー」

 「あ、私も!」

 「今からでも、陽光島分校に転校できないの?」

 「だめだよみんな……コテツには、白銀島の代表選手として頑張ってもらわないと」


 3人をいさめるようにリオが言い放った。

 

 こほん。

 

 何やら、神経質な咳払いが聞こえた。


 「コテツ君、ちょっと、約束してた、運んでほしい荷物の件なんだけど、そろそろいいかな?」 

 いつの間にか、体育館の入り口に立っていたソラが、電撃を放ちそうな雰囲気を醸し出していたので、俺はあわてて、防具を生徒たちの輪を抜け出し、ソラが姿を消した入り口の方に走った。

 

 ***


 「……楽しそうだったねぇ……」

 「え? どういう意味?」

 ソラの部屋で、俺は居心地悪くソファに座っていた。

 約束してた、運んでほしい荷物の件、などというものはない。


 個別に打ち合わせをしたいときは、「約束してた○○の件」と言って呼び出すことになっていた。簡単な暗号……とも言えないような取り決めだが……。


 「キリンちゃんに、言いつけようかしら……」

 「何でキリンが出てくるんだよ」


 「かわいい子達に囲まれて、楽しそうにしてたよーって」

 「お、おい、やめろ」


 「えー、別に、何か困るの?」

 「……いや……それは……」


 困る、というのは変だが……。

 「さっきも、あの3人に話しかけられた時、何か、キリンのことが浮かんできて……よく分からないけど、何か、引っかかるのかな、と思って……」


 いかん、自分で言ってて、意味が分からない。

 が、ソラの表情から険しさが薄れた。


 「へぇ、そう。そうなんだ。なら、いいわ」


 ……駄目だ。一体何が正解なのか、さっぱり分からん。


 「何にしても、陽光島の生徒じゃなくて良かったね。あの3人から口説かれちゃってたかも」 

 「口説く? どういうこと?」 


 「……一つ目の違和感」


 「?」

 「この学校って、島内での恋愛は、校則で禁止なんだって」

 「なんだそりゃ。まぁ、学校は勉強するとこだし、その方がいいんじゃないか」 

 「うわ……。まぁ、それはそれとして、「島内では禁止」って、どういう意味か分かる?」

 「……ん?」

 何だ?

 

 あ……。

 もしかして……。

読んでいただいてありがとうございます!

もしよければ評価★★★★★・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!


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