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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第三章 その手を離さないで/never let me go
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9 それはひどく美しい生徒だった

※この話は一章6話(キリンとコテツの出会い)と関連してます。

 「なんだよ。ソラに何が分かるっていうんだよ」 

 「何も分かんない。素直になればいいじゃん。キリンちゃん、喜ぶよ。普通に」


 「え?」

 「夜中、起きてたんでしょ? たまに、夢を見るんだって。詳しくは聞いてないけど、黒男の夢」


 「……」

 「怖かったんじゃない? でも、コテツ君がいたら、心強いでしょ? 黒男、吹っ飛ばしちゃうんだから」

 

 「……次会ったら、ちゃんと謝る。月に1回、学校の、交流行事とか、あるんだろ?」

 「そうだね、ちゃんと謝った方がいいよ」


 「ソラ」

 「ん?」


 「ありがとう」


 しおらしく頭を下げるコテツ君。


 「何で私に素直なのよ! それはキリンちゃんにやって!」

 「それは……難しい……」


 憮然とした表情のコテツ君に愕然とした。


 何でなの!

 めんどくさい! めんどくさい!

 何にひっかかってるの、この人?!

 

 「……とにかく、行事も何も、学校にたどり着かないと……さっきの道、右だったんじゃないかな」


 森の中で感電して気絶している蝙蝠達を避けるように、道を引き返す。

 しかし、程なくしてまた、不快な鳴き声と羽音が響く。


 電撃、これ以上撃つと、本当に動けなくなるよ……。

ノードの使用可能量も、もっと鍛えて増やさないと。

  

 もう一度だけ、放電の準備をしようとした瞬間、蝙蝠達の羽音が遠ざかっていった。


 「もしかして、転校生さん達?」


 明るく、穏やかな声が、森の中に響いた。茶色の髪に少し日焼けして赤みのある頬、そこに広がる暖かみのある笑顔。

 

 「たまに道に迷っちゃう人がいるんだ。しかも、この辺、血吸い蝙蝠が巣を作っちゃってて。中央政府には、駆除の依頼を出してるんだけどね。こないだ大雨があって、看板も流されちゃったと聞いて、ちょっと様子を見に行こうと思ってね」

 

 「クレイモア学園の、生徒さん?」

 「そう、リオって言うんだ。君たちは?」

 

 あたりをぱっと明るくするようなその笑顔は、思わず見入ってしまうほどだった。


 その時は、ただただ、素敵な笑顔だな。

 私の心に浮かんだのは、それだけだった。


 ***


 「初めまして、クレイモア学園陽光島分校へ。案内担当のミルカです」


 第一印象は、妖精のよう。

 何だろう、すごくかわいい。 

 同い年くらい、だよね? ほんの少し年上?

 

 白に近い銀色の髪の毛が、強い日差しを受けてほんのりオレンジ色に輝く。アレステリア国より、世界の輝度が何段も高く見える。そんな明るさの中でも、ミルカの肌は雪の様に白かった。


 長く、美しい髪の毛を、左右それぞれ束ね、おさげにしている。

 少女らしさと少しの大人っぽさを感じさせる。なんて言えばいいんだろう、艶やかな赤い唇のせいか、適切かわからないけど、不思議な妖艶さ。

 この肌の透き通るような白さ。何か良い日焼け止めの薬草とかあるのかな。

 

 「お疲れでしょう? 荷物、こちらのカートに乗せてください。えーと、結構あるから、全部は無理だけど、少しは運ぶの、お手伝いしますから」

 ほんとうに、すまなそうに笑うその顔が、また、かわいい。

 

 いいな。

 最初の出会いが、こんなだったら。

 

 コテツと初めて会ったあの日、こんなかわいい笑顔で、挨拶できてたら。

 

 もっと違う関係だったかな。

 今回みたいな喧嘩もしなかったかな。

 

 いや、性格が全然違うから、無理か。

 私、こんな雰囲気にはならないもんなぁ。

 

 「じ、女性に荷物を運んでもらうなんて、アルベ……我が家の家訓が許しません。僕はドレイク。自分の物は自分で運びますので。宿舎だけ案内いただけたら」


 うん、やっぱりそうよね。

 第一印象が可愛かったら、男子の反応って違うわよね。

 

 「あ!」

 あ?


 「き、キリンさんの荷物も、ここからは僕が運びましょうか?」

 

 「えーと、大丈夫」


 うん、まったくもって。減点よ、減点。

 てか、ここからって何?


 ふふふ、とミルカが口元を手で隠しながら笑う。

 同性ですら、嫌味なく、可愛らしいと思わされる、そんな仕草。

 私は思わず見惚れてしまった。


***


 そう。

 今思えば、それは魅力的過ぎたのだ。

 そこに違和感を抱けるほどの経験が自分にあれば。

 もう少し早く、この島の狂気に気付けていれば。


読んでいただいてありがとうございます!

もしよければ評価★★★★★・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!


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