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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第三章 その手を離さないで/never let me go
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10 可愛い制服と可愛くない私

※一章5ー7話あたりと少し繋がってます。

 「制服が、ね」

 「かわいい、わね」


 宿舎の個室。


 私は、アレステリア王都から、この任務のために特別支給された、携帯型個別回線通話器でキリンちゃんと連絡を取っていた。


 対になった通話器同士でのみ会話が可能で、アレステリア国と科学の国スコラスティアが共同開発した試作品とのこと。一見、四角い筆箱か何かにしか見えないのっぺりとしたデザインで、例え見つかっても何だか分からないだろうと思う。


 今回の任務の中心は、白銀分校、陽光分校それぞれの日常を調べ、何らかの違和感や疑問をリストアップすること。そのためには、2班の連絡調整が欠かせない。


 「なんか、リボンとか付いて、スカートもふんわりしてるし、ま、ちょっと体のラインが出過ぎかなって気はするけど……こんな可愛いの着ていいのかしら……。宿舎の部屋も、何かおしゃれじゃない? 棚とか机とかも、ちゃんと女の子っぽいっていうか、色もパステル調で、警邏官宿舎とか、警邏官学校の簡素で無骨な造りとは、ぜんっぜん違うよね」


 「そうなの! なんて言うか、これが、普通の女の子の部屋なのかな……」


 ……別に、学園の環境にテンションが上がっている訳ではない。


 そう、あくまで、これは情報交換。


 そう、決して、日頃縁遠くなっている女子的なあれこれに触れて、浮かれているわけではない。 

 そう、容姿端麗な生徒さん達にどきどきしている訳でもない。

 

 「その……何か、生徒さん達も、おしゃれっていうか、みんな髪の毛も綺麗に整えて、女の子達は、その、軽くお化粧もしてるよね? みんな女の子っぽいっていうか……その、男子も何だかやたら女子に優しいし……ふ、普通の学校って、みんなこんな感じなの?」


 キリンちゃんの感想に全く同感だった。今思えば、警邏官学校の頃なんて、女子とか男子とか全く意識してなかったし、何なら平気で組み手や能力のぶつけ合いをしていた。


 アレステリア人で、特にノードの発現過程にある子供や、ノードを発現した者は、体つきはともかくとして、身体能力的には男女差が無くなるということもあって、正直、あんまり男子女子、という感じがない。


 一方、ここでははっきりと、男子は男子、女子は女子、なのだ。

 それが、改めて、ひどく新鮮で。


 「……いや、どうなんだろう……私たち、警邏官学校しか知らないし……とはいえ、よく考えたら、これが普通なのかもね。そう、こっちでね、道案内してくれたリオ君って子がいるんだけど、その、すっごく優しくて、笑顔も素敵でね……」

 「え、何それ、どんな感じ?」


 ……それから、私たちは重要な情報交換を深夜まで繰り広げた。そう、あくまで、任務遂行であって、決して旅行先での女子の夜の会話ではない。


***


 今となっては、その全てに吐き気がする。


 容姿端麗で、気遣いのできる優しい同年代の生徒達に、明らかに歓迎されていて、その楽しさや心地よさに、私たちは、正直、浮かれていた。


 さっさと、この段階で、強い違和感がある、と報告しておくべきだった。


 この時、私はまだ何も分かっていなかった。こんなにも、優しさや、可愛らしさや、美しさを強調した生活環境の全てが、いかにおぞましいものだったかを。


 ***


 ソラとの通話が切れて、部屋に静寂が訪れた。 

 

 深夜の離島。


 海沿いの生徒用寄宿舎は、微かに波音が聞こえる。

  

 ーコテツ君は、道に迷ったけど、まぁ、とりあえず元気だよー


 通話の最後に、ソラはそれだけ教えてくれた

 私が、全然コテツの話題に触れないのに、気付いてたんだと思う。

 


 もう、寝たかな。 


 

 よく考えたら、警邏官学校に入学してから、今日まで。

 私、ずっとコテツの近くにいた。


 警邏官学校の長期休みも、結局本当に、一度も帰らなかった。

 別に、私のためにあの学校に残ってくれてたわけじゃないのは知っているけど。

 自分を待つ家族を失った私にとって、それがどれだけ心強かったか。


 思えば、同じ意地の張り方。

 ミリアムには、警邏官になるまで帰らないって啖呵をきって。コテツもお母さんに同じ様なこと言って。

 

 お互い、手紙を送ったっきりで、結局帰る間もなく旅に出てしまったけど。

 

 この波の音の向こう。

 海を隔てた島に、君はいるわけで。


 私はため息をついた。


 情けないなぁ。

 

 やっぱり、一度離れて良かったんだ。

 こんなにも、コテツを頼りにして。

 いつも守られるばかり。


 こんなんじゃ駄目だ。今回の任務は、まぁ、戦闘になる可能性も低いだろうし、何があっても、とにかくコテツに頼らず、最後まで終わらせるんだ。

 

 大体、いつも、噛むだの殴るだの。こっちは、年頃の女子なんだが。

 女子として全然見てないでしょ。

 花火大会の日のドレス姿も、結局、どう思ったのか。ちゃんと聞けずじまいだったし。


 人の気も知らないで。私が君をどう思ってるかも知らないで。

 

 「コテツのバカ」

 

 可愛くない私の悪口は、寄宿舎の白い壁に吸い込まれていった。

読んでいただいてありがとうございます!

もしよければ評価★★★★★・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!


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