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アレステリア国物語  作者: 鳩峰浦
第三章 その手を離さないで/never let me go
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8 らしくない

※この話で、三章1話冒頭に繋がります。

 「ソラ・リードベルト。私、あなたと会うのは10年ぶりよ。あなたはまだ小さかったから、覚えてないでしょうけど。ニナ・リードベルトは、私の親友で、優秀な警邏官だった」

 

 何を言っているの??

 

 「……隊長、頭が追いつきません」


 「ニナは、諜報部の警邏官だった。家族にも自分の仕事は隠していたのよ。あなたに対しても、ね。そして、ある日を境に、忽然と、姿を消した。行方不明、という扱いね」

 

 お母さんが。

 お母さんの、足跡が。


 「最後に会った時、あなたへの伝言を預かった。これ、私、結構なリスクを負ってるから。誰にも、何も相談しないニナが、「秘密にして」と言ったの。そして、自然に、私とあなたが二人きりになれる日は、今日くらいなものね。あなたたちは少し仲違いしていて、とりまとめ役ができそうな子に、作戦を伝達した。私が今日したことは、それだけ」


 ジェステリーナ隊長が、私の耳元に口を寄せた。


 「青の書架で待ってる」


 肩が、自然と小刻みに震えていて、自分の頬を伝っている涙にも気付かなかった。

 ジェステリーナ隊長が、私を抱き寄せてくれた。

 

 ふわりとした、ハーブの香り。

 

 「ニナは生きてるわよ。でも、どこにいるのか、何をしているのかは、私たちにも分からない。私たちも行方を追っているの。今、私が伝えられることは、これだけよ。だから、もっと警邏官としての経験を積みなさい」

 

 あ、本当だ。

 私は、この人を知っている。

 

 この人の手に、抱かれたことがある。


 「大きくなったわね。歳食うわけだわ。でも、28が38になるのと、4歳が14歳になるのとは、重みが違うと私は思うのよ。色々あったでしょ。まだ、先は長いけど、それがあなたの望みなら、大丈夫よ」


 こんなのずるい。

 不意打ちにもほどがある。

 馬鹿みたいに、涙が出て止まらなかった。

 

 間違ってなかった。目指す場所も、方法も。

 

 ずっと不安だった。全然違う場所に向かってるんじゃないかって。私はただ迷ってるだけなんじゃないかって。


 このまま進んでいい。


 こんなに心強いことが、あるだろうか。

 

 ***


 聞きたいことは山ほどあった。

 でも、母のことは、「機密に触れる」可能性があるので、これ以上は今は話せない、とのことだった。

 まずは、星4つの警邏官を目指しなさい。星4つは幹部候補の職位に就ける。そうすれば、仕事として話せる事項は、はるかに多くなるから、と。

 多分、今日だって、処分のリスクをとってまで話してくれたんだと思う。

 あなたが泣きついてきたら、私は流されるかも知れないわよ、だなんて言ってたけど。

 私がそうしないことも見越して、そう言ってくれたんだろう。


 ちゃんと自分で我慢した、と思えるように。


 成長しなくちゃ。

 目指す場所が鮮明になった。そのことが、私に力を与えてくれていた。


それはそれとして……。


 宿舎への道を歩きながら、現実に引き戻される。


 目下の懸案は仲間内の問題だ。


 ……何で喧嘩してんの、あの二人……。

 面倒くさい……。


 どう考えてもお互い好きなんだから、さっさと付き合えば良いのに。別にそんなの私は気にしないし、キリンちゃんの中で、私が「女子一位」ならそれで満足だし。

 それなのに、付き合うどころかこじれて喧嘩するとか、最悪なんだけど。

 

 ジェステリーナ隊長の言うとおり、キリンちゃんとコテツ君をペアにして、私とドレイク君、スパナ君が一番良かった。


 だって、コテツ君、キリンちゃんいないと能力半減以下だし。多分単体で戦ったら、今、5人の中で一番強いのは、ドレイク君。コテツ君はキリンちゃんとくっついてる時だけ最強。


 私とコテツ君が組むのって、全然強くない。


 ああ、不安しかない。

 とはいえ、あんな状態で一緒にしておいても、作戦に悪影響だし。

 

 てか、仕事に私情を持ち込むのはどうなの?

 コテツ君はともかく、キリンちゃんは、ちょっと、らしくない。

 なんか、ちょっと思い詰めてるような、気負っているような。

 普段なら、あんな風に強引に話を進めたりしないし。

 

 昨日の様子だと、コテツ君が何か言ったんだろうけど……。


 ***


 結局、コテツ君とキリンちゃんは、その後一言も交わさないまま、2グループに分かれ、それぞれの島に向かうことになった、

 そして、陽光島への定期便で降り立った私とコテツ君は、島の中で地図通りに進んだはずが、いきなり道に迷い、巨大蝙蝠の襲撃を受ける羽目になった。


 「……やっぱり、私がドレイク君とスパナ君と一緒にいた方が良かったと思うよ……戦力バランス的に……」


 やたらめったら電撃槍を放出して、蝙蝠達を撃退した私は、今更だけど、文句を言わずにはおれなかった。

 

 まさか、コテツ君が方向音痴でもあったとは。

 そう言えば、学校に入学した時も、道に迷ったとか言ってたな。

 でも、きっとキリンちゃんといたら、正解の道をすぐ見つけるんだろうな……。

 

 「結局、何で喧嘩してるの? キリンちゃんと」

 「……知らねーよ、あいつが勝手に……」

 

 と言いかけて、コテツ君が止まった。


 「心当たり、あるんでしょ?」

 「……」

 「何言ったのよ?」


 「お前みたいな噛みつき女、心配なんかするもんか。俺がいなくたって、一人で撃退するだろ。噛むなり蹴るなりして」


 ……。

 

 「……最低……」

 「いつも、これぐらいのことは……」


 「そういうの、良くないよ。いくら照れ隠しでも、度が過ぎる」


 ちょっと頭に来た私は、放電の疲れもあってとげとげしくなってしまった。

読んでいただいてありがとうございます!

もしよければ評価★★★★★・ブクマ、感想等いただけたらとっても嬉しいです!


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