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想像以上に大変な家事

予定より苦戦しています……

冗長で申し訳ありません。


中世あたりの平均的な庶民の住居や衛生システム


井戸水や水の利用のしかたなどは、戦後すぐあたりの日本で普通だったことを参考にしています。

日本は水に恵まれている土地が多いですが、そうですら、今みたいに水が簡単にどうにかなっていたわけではないようです。(山から湧き水を引けるような環境や、家に井戸があるような階級のところは別です)



とりあえず、父親にねだって古い(たらい)をふたつ手に入れた。

(どうしてこんなものが2つも欲しいのかと言われたけど)


幼い子どもが、古びた盥をふたつ欲しがるというのがかなり変なことはわかる。それでもどうしても自分専用の手洗いに使える盥がほしかった。2つのうち小さなひとつは、すすぎ用に準備した。


(本当は流水で洗いたいんだけど……)


水は汲んできたものを水瓶に溜めてそこから使うものである。井戸から汲んだ飲み水とは分けているが、生活用水と言えど、自由に使えるわけではない。


衛生観念が違うせいで余計にそうだった。泥や煤や灰など(燃えかす)、刃油のような金属さび止め、潤滑油(機械油)、汚物、あるいは肉や魚を捌いたあとの腸の中身や血などで汚れたわけでもない――見た目には汚れているようにも見えない手を洗うだけで、変わっているというような目で見られる。


(流行り病の時期は川の水も怖いんだけどな……)

沸かした白湯を生活用水として使うのはさすがに許されないだろうと思う。言うまでもなく、アルコール度数の高い蒸留酒で消毒を、などというのも許されるわけがない。


(できるだけ、口に入れるものは手で触らないようにしよう。)

器や箸なら、熱湯に浸けることくらいはできる。火を起こし湯を沸かすのも一苦労で、限りある薪を使う以上、そんなレベルのことでさえ、家のものにいやがられないように気を使う必要があった。


(水道で手が洗えるって、恵まれてたよなぁ……。)


コンロや水道なんて贅沢は言わないから、せめて、自由に使える井戸が欲しかったと思う。共同の水汲み場に並ぶのも大変だ。そこから水を持ち帰るのも一苦労で、たくさん運ぼうと頑張りすぎると、途中でこぼしてしまう。


(日本は川の水がきれいだったな……)

ここの川の水も、庭の水やり、洗濯、床掃除までなら利用できる。だが、前世を過ごした日本の山村のように、たとえば川の水で野菜を洗ったりするのは厳しい。


(本当はこんな水で洗濯するのも嫌なんだけど……)

仕方ない。絶対に不衛生な気がするので、せめて、としっかり天日干しをする。


(こんなに大変だと思わなかった。)

消毒用に湯を沸かすなんて言えなくて、煮炊きのためと言いつつ多めに沸かして取り分ける。

(かまど)ひとつ、バーベキューの火の管理ようなものだと想像していたらまるで違っていた。庶民の家にあるものは、小石とレンガを組み合わせて作られたようなもので、その辺の材料でも壊れにくさや安定性を重視したのだろう、膝を床について背をかがめ覗きこんで火の状態を確認しなければならないほど、位置が異常に低いのが地味にツラい。


そして火を焚き続けるために必要な風をいれる(ふいご)もなければ、薪を入れたりなかで調整するときに必要な鉄製の火箸(ひばし)さえ、庶民レベルでは、ある家庭は限られていた。代わりに薪を入れる手の感覚で調整しなければならない。――そういう熱源である薪もけっこう高くて、使う前によく乾燥させたものを割っておかなければならない。火力も不安定になりやすく、前世の知識をいかして料理などとやりたくても難しい。


(領主や貴族の屋敷には、もっと扱いやすい竈やオーブンのようなものがあると聞いたけど)


それでも、前世の日本には普通にあったような温度設定や管理などできるわけもない。そもそも温度計さえ見たことがない。調理器具もずいぶん違う。


吊って使えるような鉄製の大鍋と、片手鍋はかろうじてあった。あとは土鍋のような煮炊きのものは 空の状態でも信じられないほど重い。

ナイフや木製のへらやスプーンはあるけれども、フォークもないようなレベルである。そして調理器具は乏しい。


(不便だったから、じょうぶな木の破片をもらって削って(はし)を作って使っていたら、おかしなことをする子だ、って目で見られたっけ……)

これは便利だ、少ない材料で作れるし、器用だな……と褒めてくれたのは、娘に甘かった父親くらいで、人と違うことをする私は変な子として見られたものである。


(今度こそ、間違えないようにしなきゃ。)

魔女だ、などと言われてしまわぬように言動や振る舞いには気を付ける。実際には信じてもいないけれど、敬虔な信徒のふりをして生活をする。聖書はどのページに何が書かれているのかも覚えてしまった。が、庶民の女は識字率も低いこの世界で、書物が読めるというのも悪目立ちしかねないので、毎週通う教会で教えられる神父様のお話を覚えてしまったのです、という真っ赤なウソで貫こうと思う。ゆくゆくは、それで聖書を開くなかで文字を覚えたとうそぶくのもいいかもしれない。


(もう二度と――ごめんだわ。)

すっかり疑心暗鬼になってしまった気がするが、これくらいなければ生きていけない気もしてしまう。


(……あまり美味しくないわね。)

味見をして息をつく。干して燻製にされた塩漬け肉を砕いて使ってみたが、灰汁が大量に出たわりには期待したほど旨味もでなかった。

できれば骨付き肉などを出汁がでるほど煮込みたいものだが、そんな材料もなければ、燃やす薪もない。時間もとられるわけにはいかない。――やるべき仕事は山ほどある。


(せめて、もっとまともな調味料やスパイスがあれば)

調味料は塩でさえ高い。ハチミツも高いけれど砂糖は信じられないくらい高かった。にんにくやチャービルっぽい草(ネギのように使える草)など一部は辛うじてあったけれど、コショウなんて言うまでもなく存在しない。


(キノコは怖いし――)

日本とは異なり、毒キノコを毒抜きして食べる習慣がある。風通しがよい場所で何度もゆでこぼす(※ゆでて、そのゆで汁も捨てること)処理をすれば旨いと言われるが怖い。

それ以上に怖いのは、一人でキノコを探すために山に入ることのほうだ。


(野犬やオオカミ、山賊も怖いけど……)


魔女だから薬草を採りに行ったのだろうなどと妙なこじつけをされる原因を作りたくない。


(本当にめんどくさいわね……)


煩わしくて自給自足できるものならしたいと思うが無理である。かつての日本のように――そんなに都合のいい作物はこの世界にはまだ存在していない。


(ジャガイモっぽい花の植物は観賞用だし)

深刻なのが、芋というとものがほとんどないことだ。カボチャはあるが、日本で食べていたようなほくほくとして甘味も栄養価も高く、切らなければ日保ちもする――ようなカボチャではない。


せいぜい、豆かライ麦のような雑穀が関の山だが、それさえ一人で管理しきれるかは厳しい。無事に育て上げられたとしても、次のみが実るまでの間、野性動物からも、盗人からも、ネズミからも守らなければならないのだ。


(水が自由に手に入るような良い土地は、すでに誰かのもの――だし)

女の立場では、たとえ購入資金を準備できたって、土地の権利証ひとつ手に入りはしないだろう。現実的に自給自足をしたいなら、どこかの領主のもとで小作人という形式で農民となるしかない――が、その扱いなど言わずもがなである。


(ほんと、選択肢が無さすぎるわ……)

それでも、とりあえずやれることをやるしかぬい。まともな両親がいるだけ恵まれている。なんとしても、この現状を守らなければならない――この時わたしは、そう思っていた。

ジャガイモ。芽や日光が当たって緑っぽくなった皮が有毒(ソラニンなどの発がん性物質を含み、大量に食べると一過性でも食中毒のような症状を呈する)というのは有名ですが、


これは「先祖がえりのようなものだ」ということはご存知でしょうか。(堀田もたまたまテレビで見るまでは知りませんでした)


原種となったジャガイモは、芽や緑色になった皮だけでなく、芋全体が有毒な物質を大量に含んでいて、とてもじゃないけれどそのままでは食べられないものだそうです。


最初は園芸用に持ち帰られたものが、品種改良を繰り返され、食べられるジャガイモになったのは比較的最近のこと。


他にも色々ありますが、おいしさはもちろんですが、「収穫量」でも、品種改良の積み重ねでたいへん向上しているのが、私たちが普段目にする作物なのです。


なので、現代において「自給自足をする」よりも中世っぽい時代において「自給自足をする」ほうが難易度は爆上がりです。


それこそ、地面を掘るスコップなどからも使い勝手はちがうでしょう。そして何よりも 課題は


「土地の確保」と「安全な淡水の確保」です。

これが猛烈に難しい。日本は比較的、安全な淡水を得やすい土地柄であり、それこそが、「鮨」などのなまものを食する文化が発展した土壌に影響していると言われています。


もちろん、雪解け水の恩恵で、地下水に恵まれるような地域も限定的には存在しますが基本的には恵まれないと思ったほうが正しいと思われます。


そして 井戸を掘るのも けっこうたいへんです。深井戸はプロが何人もいて掘れるものだと思います(深井戸とは、地下水脈でも、浅いほうではなく、その下の深い層の水脈からのものです。


※前提として……

地下水というものが存在するためには、地質学的に一定の条件を満たす必要があります。


ざっくりいうと、山や湖や湿地帯(湿田と呼ばれる日本で馴染み深い田んぼも含みます)のように、地面に水が大量に染み込むところが近くにあること。その水はどこから来ているのか?ということですね。


何もないところから、自然にわいてる訳じゃないです。(例外的に、氷河期の氷河の氷床が地下に残留していてというケースもあるらしい)



そして、水が浸透しやすい層と、水を通しにくい層が交互に存在し、その地層の境目に地下水の層ができるというのが一般的らしいです。


で、浅い層と深い層などにそれぞれ地下水脈があることも、というわけです。


で、天然では断層だったり、何らかの侵食作用でその地層の境目が露出したところとか、擂り鉢状になったところで出やすいところから湧水となって湧いたりするらしいです(堀田は地質学に詳しいわけではないので、たぶん、というところが多いです。間違っていたら御指摘、ご教授いただけるとありがたいです)


日本は山が多く、それも火山が多いですよね。帯積層の兼ね合いで地下水が多いところはけっこうあるようです。

砂漠のオアシスなども、そこそこの距離に高山があったり、どこかしら水が大量に染み込むことができる場所があることが通例のようです。


で、深井戸というのは、より深い層の地下水脈からの湧水を採れる井戸のことです。

泥などの不純物が混じりにくく水質がよく、こちらのほうが水量も安定しているらしいです。

ただし 素人が掘れるものではないと思われます。)


というわけで、現代でも私たちが個人的に趣味と実益をかねて掘る場合でも、素人の独力では、一番地表に近い地下水脈層と結びつく浅井戸が限界です。


それでも危険は伴います。地面を掘ることそのものもけっこう大変ですが

掘り進めるなかで出る土をどう除いてどこに置いていくのかとか、側面をどうするか なども厄介です。深い穴から這い上がる手段も準備する必要があります。


さらに、

生き埋めになる危険

酸欠になる危険

と隣り合わせです。 大変です。自分で掘ろうと思って調べてみるとわかると思います(堀田がやたら詳しいのは自分で独力で井戸を掘ってみようと思って調べた過去があるからです)


それと浅井戸からの水を非加熱(生水として)で飲むと、ピロリ菌のような土壌に普通に存在する菌をとりこんでしまい、胃がんの原因のひとつになったりするので、危険です。


農業用水や、生活用水、あとは沸かして飲めば大丈夫だと思われます。


白湯(さゆ)はからだにいいと言われますが、堀田的には、

歴史のなかで「白湯は安全だったから(非加熱の水が感染症リスクが高かったため)」ではないかと考えています。夢がないですけど、(西洋)医学的見地で考えたらそうなるのです。


それは昔の人の経験則(それまでに数多の人が病で命を落としたことでしょう)から推定したことで、当然、細菌学の知識なんてなかったでしょうから、白湯というものに特別な効力が備わっているのだ、というとらえかたをされたとしてもなんの不思議もないわけです。


それに白湯って沸かすときに、その入れ物も煮沸消毒されているわけですから、沸かしたものから直に注ぐと、より安全というわけです。


白湯が健康にいいというよりは、

白湯には生水のような、感染症リスクがあまりない(沸かした容器、あるいは、沸騰した湯を注ぎ入れた容器から直接注ぐ場合のみに限る)


だから、病人を(病原体で汚染された水を飲むことでもたらされる害が起こらないので)悪化させることがなかった。

だから、白湯が体に良いと言い伝えられるようになったのでは

と思うわけです。


なので、安全な淡水が手にはいるなら、

べつに白湯でなくてもいいんじゃないの、健康効果なんてプラシーボ効果(信じていると自己暗示でそういう方向性に向く)では、と堀田はちょっと思います……


ともあれ、井戸って

知識と準備があっても、原始的な道具だけでは女の子にはムリではないかと思うのです。どこ掘っても出るとは限りませんし――


そう、意外と大変なんですよね。


もし魔法が扱えるなら、堀田は「淡水を自由に操れる。生み出せる」と「治癒回復能力」がツートップで欲しい能力です。そのふたつがあれば過酷な環境でも、人間なんとかなる確率が高いと思います……。



毒キノコを食べる地域


これはあるらしいです。

日本でいう「シャグマアミガサタケ」と呼ばれるキノコです。致死的な猛毒キノコのひとつです。


アミガサタケ(モリーユ、と呼ばれ、高級なディナーに添えられるキノコでもある)と同じ仲間です


毒キノコとひとえにいっても、ほんといろんな種類の毒があります。カエンタケは一時話題になりましたし、

ドクツルタケやシロタマゴテングタケなどはご存じのかたもけっこういるかもしれません(有名な小説でもそれらしい記述のものを拝読したことがあります)


すべて別種の毒です。オオワライタケなど、「ワライタケ」も少年漫画などにたまに出てきますがああいうのも別のものです。


で、シャグマアミガサタケ の毒って揮発性があるらしいのです。ゆで汁にどんどん煮だして、揮発させて飛ばせ方式です。ほんとに大丈夫かは不明です(繰り返しますが、茹でても分解しない毒をもつ毒キノコもたくさんあるので、安易に試さないでもらいたいです)


堀田も詳しくはありませんし、この文章を読んで試してみるのはやめてほしいですけどね。

毒茸の毒性の強さは生息地で変わる可能性もありますし――


とりあえず毒抜きして食べる地域もあるらしいです。


まぁ、日本も青梅の毒を毒抜きして食べてますよね。梅干しとか梅酒とか梅シロップとか。

青梅のような、桃やすももの仲間の多くは青い果実にアルカロイド系の毒を持っているものが多く、


それは植物が未熟な果実を鳥や動物に食われることから身を守るために身に付けた手段だと言われています。

本来は、鳥や動物に、己の子孫となる種を遠くまで運んでもらうのを期待して、植物は栄養価のある果実をつけるのです。


発芽能力がまだ備わっていない未熟な果実を食べられるのは都合が悪いのです。だからこそ、渋かったり酸っぱかったり、場合によっては実が青いうちは有毒だったり というタイプの果樹がある。


植物も、決して、人間から食べられるために実をつけているわけではないのですよね。人間がそれを食べるために都合のいいように品種を変える努力をしてきただけのことなのです。


いっぽう、ネギの仲間は 人間とかそれに近い霊長類(ゴリラとかチンパンジーなど)にとっては、

血液サラサラ効果があったり、体が暖まったり 有益な野菜となりますが、


犬や猫など動物を飼育した方はご存知でしょう

多くの動物にとっては猛毒です。血液サラサラどころか溶血毒――


ヤギなどを放してみると、身近なところでは野蒜(ノビル) 細いワケギのような野草だけキレイに食べ残していたりします。


ノビル、おいしい野草のひとつですが 野生のネギの仲間で、人間とか例外的にといった猿の仲間以外には猛毒の物質を含むのです(人間にとってはありがたく食べられる身近なところでは、貴重な野草のひとつ)。アブラムシもつかないし、害虫も少ないですよね。


同じ理屈で、虫などにとっては無毒でも人間が食べるとヤバイものなどもあります。

絶対に安全なもの以外は むやみに試さないことが重要です。


ものによっては、内臓などに重大な後遺症が残り回復しないタイプの毒もあります。あえて記しません(いたずらや犯罪に悪用してほしくないので)


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― 新着の感想 ―
[良い点] 昔の人の不便さを感じることで、現代の便利さを再認識できます。 [一言] 電気でお湯も湧く→お湯をかける→カップ麺 牛乳をかける→コーンフレーク 本編の世界に比べると何と簡単なことか!…
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