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第十二章(下)

暴力シーン、『人殺し』『強姦』という単語、また殺害についての描写があります。

苦手な方は戻ってください。




2021/09/08改稿:内容大幅に追加しております。申し訳ございません。詳細は活動報告をご覧ください。






「では…。この五人について、伺います。」

 女はニマニマして、恵を見ている。

「野村明、という方のみ日本人。あとの四人は…ロシア人ですね?」

「そうやね」

「この日本人のことをどうも昔からご存知…と、お見受けしました。今回の事以外で、以前どこかで会われましたか」

「…!」

 女と入谷の目が驚きで見開かれた。

 恵は、見逃さなかったのだ。五枚の写真を出してきた時の、女のわずかな表情の差を。

「…あんた…」

 女は呆然と呟いた後、ハッと笑って、「大したもんやわ……。」

「おそれいります。」

 恵は頭を下げた。

「…この男は、イサーク達の通訳をしてる。イサーク本人は日本語も堪能なんやけど、あとの四人が喋れないからね。

 彼は…、日本こっちの外国語大学を結構な成績で卒業しててね…。小さいころから、頭のえぇお兄ちゃんやった…。」

(…幼馴染おさななじみか…)

「この人のおうちは、何不自由なかったはずよ。あたしが小さいころから見てた限りでは、ね。でも就職した先がまずかった。こっちの世界に飛び込んで初めてあたしも知ったんやけど、その会社、とある暴力団と関係のある、隠れ蓑の会社でね…。」

 いわゆる、フロント企業というやつだろう、と恵は思った。

「会社に入って二年目のことやった。彼の死亡記事が新聞に載ったのは。内容は、フィリピンのホテルの一室で、強盗か何かに刺されて死んだというもんやった。でも違った…彼は、その組織の捨て駒にされたんや。武器密輸の…。」

 女は遠い目になっていた。「…多分、今日までいろいろ、あったんやと思う。突然姿見たときは、息が止まったもんよ。」

「それは…。」

 そうだろう。死んだと思ってた人が生きていたのだ。そして、(これ以上聞くのは野暮、ってもんや。)とも思った。




「では…、中身と重複してるかもなんですが、伺わせてください。」

「えぇよ。」

「このロシア人四人。今回大河内製薬を脅している、彼らはいったい何者ですか。」

「えぇ質問や。」

 女は言って、「リブニツキ兄弟って知ってる?」

 恵は首を横に振ったが、女の背後で入谷は思わず舌打ちをしそうになった。知っているのだ。

「リブニツキ兄弟ってね、今ロシアでとぐろを巻いているマフィアでね。ここ10年近くで勢力をロシア全域に広げてて…従えている構成員の数は数万とも言われてるんよ。

 イサーク・イグルノフは、そのリブニツキ兄弟の構成員や。それも、上から数えた方が早い。」

 女は丁寧に説明してくれた。

「そんな大物が、なんで日本の、それも神戸くんだりへ…。」

 普通、東京とかを狙うもんではなかろうか。

「それは分からない。ただ目的ははっきりしてるね。」

 女は厳しい表情になって、「目的は、日本の暴力団を根絶やしにして、新たな日本のマフィアとなることや。」

「そんな…そんな…。」

 恵は思わず、「…夢物語みたいな事考えてるんですか」

 恵は、とてもそんな話信じられなかった。

「ウソやと思うやろ?でも多分本気や。」

 女はほろ苦く笑った。その顔を見た恵は、(あ、姐さん…多分この件に巻き込まれとるんやわ…)と思った。

「日本にやってきた彼らはまず、関東の奥地でくすぶってた半グレ組織、柳枝会りゅうしかいをカネで買収した。

 多額のカネと武器と、イサーク直伝の犯罪のノウハウを思う存分吸収した彼らは、調子に乗って一度はイサーク達を裏切ろうとした。でも負けた。ものの見事に返り討ちにうてね。イサーク達の恐喝術は、ロシアの本場仕込みや。まだ出来て10年経ってない柳枝会の付け焼刃のようなソレとじゃ月とすっぽん……そんな事があって、まぁ、彼らはイサーク達のあやつり人形となったわけや。総勢200人のな…。それで、次に目を付けたのがメグもよう知ってる、あたしも良うしてもろてるあの組やった。……手始めに、彼らは柳枝会の若い子を潜り込ませて、幹部の坊ボン一人殺した。それがメグ。あんたにストーカーしてた、あの子や。」

 なんということだ。あの恵にストーカーしていた、あのお坊ちゃんも、巻き込まれていたのだ。

「…で、そのまた次に目を付けたのが、大河内製薬やった。」

 女は煙草を灰皿に押し付けた。




 きっかけはやはり、あのアリシア・ミラーの一件だった。

 彼らもまた、あの映像を見てすぐに気づいたのだ…彼女が薬物中毒の状態で大会に出場し、その結果世界新記録を叩き出した、という事実に。

 しかし、彼らはどういうわけか、すぐには動かなかった。



 動いたのは年が変わった、2000年1月の事だったのである。



 1月31日。

 1台の外ナンバーが、大河内製薬の本社に滑り込んできた。

 この頃、大河内製薬本社はアリシアの一件に伴う各所への対応で混乱の最中さなかにあった。この時対応に当たったのは、社長室に所属していた初老の社員と、社長の秘書の内の一人だったが、二人とも、その五人のいでたちと北欧人特有の見た目から、アリシアのご家族の関係者か弁護団の人かと信じ込んでしまい、結果社長室のそばにある応接室まで五人を通してしまった。

 事は数分もしないうちに起きた。

 話を聞いているうちに、(いや、これはあやしい…)と感じたその初老の社員が、適当に伝言と連絡先を聞いてお引き取り…事実上の門前払いである…願おうとした、その時だった。

 五人いたその男の内の一人が突然、その社員の白髪交じりの頭を後ろから引っつかみ、大理石製のローテーブルへ叩きつけたのである。

 パァン、という音と共に、グチャ…と、まるで何かが潰れたような音が混ざったような、凄まじい音がした。

 居合わせた女性秘書が、たまぎるような悲鳴を上げた。

 悲鳴を聞きつけた別の社員が何事かと飛び込んできたが、これも五人のうちの一人に取り押さえられ、銃を突きつけられてしまう。 大変なことになった。


「時間稼ぎは見え見えだ。社長を出せ。今すぐに。」


 混乱に陥るその場をしり目に、リーダー格とおぼしき男…のちに、その男こそが、イサーク・ペトローヴィチ・イグルノフと判明した…が、灰色の瞳を細め、流暢な日本語で、こう言った。





 血みどろになった男の身体が、駆けつけた救急隊によって運ばれていく。

 大河内製薬社長、青木あおきひろしは厳しい顔つきで、その男らと対峙していた。

「……。」

 青木は、ちらりと時計を見た。

 おかしい。通報から20分近く経つのに、警察が来ない。

「彼女に投与された薬のデータと現物。一式こちらへよこしてもらいたい。」

 開口一発、通訳の日本人…野村明が言ったのは、これだった。

「…それは出来かねます。」

 青木は即答した。「何故、見ず知らずの者にそのような事をせねばならんのです。あの一件はまだ、警察の捜査とご遺族による対応の最中だ。我々の手を離れているのですよ」

「――!」

 イサークの隣にいた、暗い蒼い目をした大柄な男がロシア語で何か怒鳴り散らしたかと思うと、突如目の前にあったお茶を青木にぶっかけた。避けきれず、青木の頭に鋭い痛みが走る。男が湯呑を投げつけたのだ。

「申し訳ない。うちの部下は少々短気でね。」

 この中では唯一日本語が喋れるらしき灰色の目をした男……イサークがにこやかに言った。

「しらばっくれるな。捜査も対応も全て終わっているはずだ。こちらは分かっている。」

 野村が表情一つ変えず、怒鳴った内容を伝えていく。

「…確かに。私たちは初対面だ。見ず知らずとはその通り。お気持ちは分かる。しかし貴方がたは大事なことを忘れておられるようだ。」

 まるで日本人のような丁寧な言葉づかいに、青木は気味が悪くなった。しかし次にこの男が言い放った一言に、青木の心は氷水を浴びせられたようになる。

「貴方がたは、人殺しなんですよ。」

(…!!)

「あの薬さえ投与しなければ良かったものを。あれのせいで彼女は死んだ。この人殺し。」

 人殺し。

 ここ数ヶ月の一連の出来事…罪悪感にかられ自殺した担当の研究員、怒り狂うアリシアの遺族の顔、連日報道するマスコミ、パパラッチ、山のようにやってくる苦情の電話、そしてあの薬物が人体に与える実際の効果などのデータ…それらが一気に、青木の脳裏を駆け巡った。

 こいつらは、知っているのだ。あの薬物の真実を。

「今日のところは、これでおいとまするとしましょう。」

 イサークはまたにこやかな顔に戻って、「また、お伺いします。貴方がたとは今後とも良い関係を築きたいと思っております。」

 そして、立ち上がりかけながら青木の顔を覗き込み……。

「…よく、お考えになることだ。この件が世間に広まれば、貴方の下におられる2000人の社員、全員が路頭に迷うことになるのです。」

 こう言い放ち、「また。」と笑ったものである。




 その後も、執拗な脅迫は続いた。




 恵は、押し黙ってしまった。

「その後の詳しいことも、時系列でその中に書いてある。あとでゆっくり見たらええよ。」

 女は言った。

「…ありがとうございます。」

 恵は言って、「彼らがそんな、裏の人たちとも関わりの無い、いわゆるクリーンな企業に目を付けた目的は何なんですか。」

「あぁ。それはね。」

 女は言って、「ドラッグの製造、加工拠点を手に入れたいからや。」

「あぁ…なるほど」

 恵は合点がいった。

 大麻や覚せい剤…特に大麻は、乾燥した草で取引されるとは限らない。多くの場合は液体であったり、樹脂状の固体であったり、何かしら加工されることがほとんどだ。

 しかし、イサークらはまだ日本に来たばかりだ。その薬物の加工拠点がまだ、無い。そこで手っ取り早く手に入れようと、その製造ラインが確実に整っているであろう大河内製薬に目を付けた…と、こういうことのようだ。

「イサークは、元々リブニツキ一味の中では密輸で頭角をあらわした男や。」

 女は言って、「あとはその製造拠点があれば完璧や…しかし誤算やったろうな。」

「誤算…ですか。」

「そう。正直、ここまで大河内が粘るとは思ってなかったと思うよ。」

「では、今もまだ大河内さんとこは大麻に手を出していないんですか。」

「…今のところはね。でも…奴らが乗り込んできてからもうすぐ半年や…正直かなり、状況は悪くなってる。時間の問題やと思うよ。」

 女は重々しく言って、「…あとは、」

 …まだあるのか。と恵は思った。

「あのアリシアに投与された薬物自体にも、充分な魅力があったんやろ。」

 恵は例の、国際マラソンでのアリシアの映像を思い出していた。

「あれは、覚せい剤タイプの薬物でもあるんやけど、一時的に筋肉と、神経にも強い作用を及ぼすとのことやった…彼女があの大会で、世界新を叩き出してることからも、それは明らかや」

「つまり…ドーピングとしての価値があると…?」

「充分あるね。ロシアというお国柄からしても、欲しいと思うよ。これ飲ませて、大会出場させたら表彰台独占やで」

「あぁ……」

 なんとなく、想像できてしまった。

「そうしたら、次は例えば、あの国でこの薬の製造を独占して、他国との取引に…なんてことも出来てくるわけや」

 外交カードとして、あの薬を利用しようというわけか。なんてことだ。

「だから、イサーク達は、あの薬を是が非でも手に入れた()()()んよ。」

「入れた()()()…ということはまさか」

 恵の顔が引きつった。

「…先月。6月やね。奈良にある大河内製薬の研究所が襲撃に遭った。そこに薬の現物100mgと原料の植物、一鉢あったそうや…それを、全部奪われてしもうた。」

 なんてことや。恵は心中でまた、こう言って舌打ちした。

「頭抱えたなるやろ。中の人間も、同じやったと思うで。」

 女は言った。




「もう少し、聞いてもええですか。」

「えぇよ。」

 女は飄々と応える。

「あの、アリシアに投与された新種の薬がどういうものか、ここに書かれていますか。」

「それがねぇ…」

 この質問には、女は表情を少し曇らせた。「一応書いたけど、詳しいことは分からんかった。分かってるんは、全くの新種の化合物であるってこと。」

「そうですか…。」

「あと、さっきも言うたけど。脱法ドラッグや、ドーピングとしての価値はかなり高いということやね。それから、原料は植物。人工で合成する方法は、まだ確立されてない。そして…」

「…。」


「薬物の通称が、"Blackブラック Narcissusナルシッサス"。」


「……!!!!!」


 恵と入谷の心臓が雷に打たれたように轟いた。


 ブラックナルシッサス。和訳すると黒水仙ではないか。


 繋がった。ここで、ようやく、繋がったのだ。



「なんや、知ってるみたいやね。」

 女が笑った。

「…少し、別のところから調べていて、この名前が出てきてたもんですから。びっくりしたんです。」

 恵はなんとかごまかした。

「…そう。」

 女は追及しなかった。「なかなか悪趣味な名前よね…。黒い水仙なんてこの世に無いのに。あの世にトベるからこの名前にしたんかな、とか思ったよ。」

 女は灰皿に煙草を押し付けた。




「もう少し伺っても大丈夫ですか。」

「そうやね…あと2つくらいにしとこ。あたしもこの後あるから。」

 女のしている時計は23時を指していた。

「ありがとうございます。」

 恵は頭を下げた。「では…。今回の、大河内製薬さんに対する恐喝に巻き込まれて、亡くなった方はいらっしゃいますか。」

「…それは、イサークらが殺した人間がおるか、ってこと?」

 女は言った。その眼が急に、闇を飲んだかのように真っ暗になったように恵は感じた。

「そうです。それも、素人の方で」

 素人、とは、いわゆる暴力団や半グレ、国外のマフィア、ギャングなどに所属していない人間のことだ。

「…ええ質問や。実は今回の件で一番腹立ったんが、このことや。」

 女はそう言うと、おもむろに写真を取り出した。

 恵と入谷は再び、心臓を飛び上がらせる事になった。

「菅原隆義さん。大学の教授。大河内さんとことは合同研究されてたみたいやね。おそらくやけど…黒水仙ブラックナルシッサスの発見者なん違うかと思う。

 菅原清子さん。奥様やね。

 近藤勲さん。菅原さんのご自宅の近くにお住まいやった。菅原さんご夫妻を殺害後、出てきたところを目撃してはったらしい。口封じで殺されてる。じょうごを口に突っ込まれて、ウォッカを一リットルも一気飲みさせた挙句、海に突き落としたらしい。酷いもんや…。

 岩田綾子さん。菅原さんの下で研究してた大学院生の方で、この方、ご実家の用事で静岡にウィークリーマンション借りて、色々とその用事を片付けされてたみたいなんやけど、そこで自殺に見せかけて殺されてる。

 マリア・ミラーさん。ジョン・ミラーJr.さん。アリシアのご両親やね。アメリカの自宅に戻られたところを強盗と鉢合わせて…。その強盗は捕まってるんやけど、これもイサークが雇った形跡が見つかってる。」

 何ということだ。アリシアのご両親まで手をかけていたのか。

「ここからは、大河内製薬側の犠牲者になる。」

「うっ…」

(まだ居はるのか…!)

 恵は吐き気をもよおしそうになった。その写真…3枚もある。

「…やめとくか。つらい話が待ってるで」

 女はまた、苦く笑った。

「…やめときます…」

 恵は、お言葉に甘えることにした。

「ありがと。あたしもちょっと、キツくて…。その中に書いたあるから。」

 やはり女の方が、この話は口にしたくなかったようだ。




 後日。ここに目を通した実行犯メンバーは全員、はらわたが煮えくり返るような思いをすることとなった。




 2000年一月の本社での一件で、大理石製のテーブルに頭を叩きつけられた…長野ながの浩章ひろあき氏。

 彼はあの後、救急病院での必死の治療も空しく、数日後に死亡した。

 さらに酷かったのは、先月襲撃に遭った奈良の研究所の職員たちだった。

 この日。

 イサークらは、前に買収した柳枝会の人間10数名を引き連れ、男性職員一名を人質に取り、電話線を切ると研究所の所長に黒水仙を出すよう迫った。

 所長は意味も分からず、拒絶した。当然である。本社から何も話を聞いていなかったのだ。

 すると、イサークが右手をさっと上げた。

 パァンという乾いた音がした。

 部下の一人が後頭部からその人質を撃ったのだ。

 所長の顔に、赤い血と一緒に白い脳漿が飛び散ってきた。

 所長室は地獄絵図と化した。


 ―この日亡くなったのは、この時の男性職員、槙野まきの和大かずひろ氏。


 そして関連死として、女性職員が一名…。これは二日後に、自殺している。


 あろうことか、あの例の五人の内の一人…セルゲイ・ゲルマノヴィチ・カシヤノフが、彼女をトイレに連れ込み強姦レイプしていたのだ。




「最低。」

 思わず雪乃は机をこぶしで殴っていた。そしてもう一度言った。「…最っっ低!!!」

「…親父おやじ…。彼らにモラルというものは、無いんやろか…」

 まどかは、荒松に聞いていた。その顔は真っ青になっていた。胃の内容物が出そうになっていて、気分が悪くなっているのだ。

「…奴らは目的の為に手段は選ばん。日本の奴らの任侠道のような物は、存在せん…しかし酷いわこれは…」

 荒松は、絶句していた。





 時をもう一度、三ノ宮某所のクラブの一幕に戻したい。

「それでは最後に一つ…」

 恵は女を見た。「今回、何故警察はここまで動かへんのでしょうか。一月の一件でも、通報したにもかかわらず到着した形跡が無い。この他の事件でも同様です。一体、どうなってるんです?」

「ええ質問や。」

 女はニヤ、と笑った。そして、こう聞き返してきた。

「メグ。外交特権、って知ってる?」

 ガイコウトッケン…?恵は首を横に振った。が、またもや入谷は女の後ろで舌打ちしている。知っているのだ。

「難しい話になるからカンタンに話すんやけど、」

 と女は前置きして、「外国の外交官って、一般の人とは違う特別な待遇が付くんよ。…で、今回こんなことになってる原因が、それやねん。それが…治外法権や。」

「治外法権…??!」

 なんか、最近日本史の教科書で見たような気がする。するが忘れてしまった。

「ざっくり言うと、日本国内で人を殺しても、盗みを働いても、恐喝をしても、暴力事件を起こしても。彼らを逮捕することは出来ない。これが治外法権や。で、今回奴らには、それが当てはまるのよ。なぜなら…イサーク達五人は表向き、在大阪ロシア総領事館の職員ということになってるから。」


 女の言葉に、恵は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。

 人を殺しても、逮捕することが出来ない。

 これだ。菅原隆義夫婦殺害の一件もこれのために、兵庫県警は捜査を打ち切ったのだ。どうせ逮捕出来ないのだから。


「…なんてことや…」

 恵は呆然とつぶやいた。



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