第七章(上)
ちょっと…短いですがキリがいいのでここで切ります。
こうして、実行犯にようやく戻ってこれた北島まどかがまず手を付けたのは、なまった身体の鍛えなおし。そして…、ここまで入谷と荒松が調べ上げてきた内容の把握、だった。
ただ、ここ数か月の事実上軟禁とも言えた生活で、まどかの精神は思ったより疲弊していたようだった。
張り切って毎晩建物の屋上を飛び回ったり、指の訓練をしたりしていたら、今度は熱を出して寝込んでしまったのである。
呆れる入谷の傍らで荒松が、「…知恵熱じゃな。ゆっくりやれと言うたっちゅうに…」
「だってぇ…」
真っ赤な顔でまどかがぶーたれている。
「パーティーの後、クルマの中で金枝さんとイチャ付いてて風邪でもひかれたのではないですか?」
入谷がしらーけたような眼でまどかを見下ろす。
「入谷さんそれはもう勘弁してぇや…」
まどかは布団を頭までひっかぶってしまった。
そう。
まどか、上層部の金枝昭一と交際していた事がとうとう発覚してしまったのである。
発覚した翌日の金枝の顔は、それは見物だった。
ものの見事に、両頬がグーで殴られたように腫れあがっていたのである。
これには、いの一番に発見した上層部と理事長の腹がよじれまくったそうだ…もはや、マンガである。
ちなみに殴ったのは荒松と…、養父、北島満だったそうだ。
5月も、真ん中が過ぎた。
つい数か月前まで真冬の気温が続いていたというのに、その日はまるで、真夏のような気温だった。
心なしか、須磨海岸から山へと登ってくる風も、いつもより潮のにおいが濃い。
そんな空気を吸い込みつつ、入谷の報告を聞き終えた荒松は、ややあってため息を吐きながらこう言った。
「…菅原研究室で、何かあったのは確かやわ…」
そこは、いつもの実行犯第四班の詰所だった。
ごつごつした岩に嵌め込まれた窓は開け放たれ、外から潮の乗った風が流れ込んでいる。
「研究してた物が原因で殺される…って、ありえるんかな…?」
ようやく熱から復活したまどかが首をかしげた。
「犠牲になったのが菅原隆義さんだけだったなら、違う可能性もあったでしょう。
しかし今回は違います。
菅原氏のご自宅の近隣に住んでいて犯人の顔を目撃したと思われるご老人も、亡くなっている。
研究室配下の学生、助教九名全員が、実質行方不明。これはどう見ても、無関係とは考えにくい。」
「…うーん。」
まどかはうなった後、「親父。どうするん?」
「…ふむ。」
荒松は思案した。
その後しばらくの議論の末、荒松は以下のように方針を定めた。
―まずは何とかして、行方が分からなくなった九名の研究員の行方を探る。
この言にまどかは思わず、気が遠くなりかけた。
まるで雲をつかむような調べになりそうに感じたからである。しかし。
(…???)
まどかは気が付いた。
荒松も入谷も、何かしら算段があるような顔つきだったのである。
(…玲奈からの連絡も、何も来てへんし…)
自分にできることは今は、無さそうだ。まどかはひとまず荒松の指示で、入谷の手伝いをすることとなった。
えー、と、突然ですみません。ここでちょっと「うん?」となりましたので、思い切ってまどかちゃんに質問したいと思います。
―まどかちゃん、金枝さんとはいつから付き合ってたの?
「おととし。」
―どういうアレで…?
「昭ちゃんは、幼馴染。一昨年会ったのが10年ぶり。」
―はいぃ?!!!!!
「荒松の親父に会う前、ボクと昭ちゃんは、児童養護施設におった。10歳以上上やった昭ちゃんが先にどこかに引き取られることになって、『いつか必ず迎えに行く』って約束してた。で、会った。迎えに来た。で、おつきあいになった。それだけ」
―ほ、ほう…
「…かっちゃん。もう訓練戻りたい」
―はっ…すみませんすみません。
以上、現場からでした…(これ以上よう聞けへん…)orz




