第二話:権限なき代理と、迫るタイムリミット
「バートン代理! 警備室のアサルトライフルを取り出してください! 隔壁を閉じて感染区画を隔離するんだ!」
「無理だ! システムが前船長の『生存』を検知して制御権をロックしてる! 俺の代理認証じゃ安全ロックが解除されない!!」
広大な《IZANAGI-05》のメインブリッジは、悲鳴と怒号が飛び交う地獄絵図と化していた。
システム上、前船長が生きて動いていると判定されたことで、セキュリティシステムが凍結されていたのだ。防衛兵器の解除や緊急ゾーンの遮断権限は、「正規の副船長」が完全に覚醒・認証されるまで受け付けない。
「こちらコールドスリープ管理室! 助けてくれ、寝ている奴が襲われ……うわあぁぁぁ!?」
「第5区画途絶! 悲鳴のあと、通信が切れました!」
「このままだとあの船団と同じだ……全員殺されて全滅するぞ! なんとかしろ!!」
通信回線からは、船内各地で巻き起こる悲惨な悲鳴と肉が引きちぎられる凄惨な音が途切れることなく溢れ出していた。犠牲者の数は数分ごとに跳ね上がり、パニックは留まることを知らない。
「解凍室! 副船長はまだ起きないのか!?」
「システム凍結を解除し、手動オーバーライドで強制解凍を終えるまで、あと30分かかります!」
「くそっ、あと30分もつか!? 現場の作業工具でバリケードを張って時間を稼ぐんだ!!」
現場近くの通路へ駆けつけたケンジと警備員のエレーナが目撃したのは、目を疑う惨状だった。
暗い通路に転がる数々の遺体。そして昨晩船長に襲われて絶命していたはずのあの警備員の体が、ピキピキ……と嫌な関節音を立てて起き上がり始めていた。
「離れろ! 船長だけじゃない……殺された奴ら全員が起き上がってる!!」
犠牲者が犠牲者を呼び、死の連鎖は留まることを知らなかった。




