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#9:マゾ矯正施設

ドエヌの城に辿り着き、そこで『マゾ矯正施設』なるものに入った僕達は、

施設入口から受付を入った奥にある大きな扉を開いた。

その先にあった光景は、まるで怪しい新興宗教のような集まりだった。

中心人物のような男が大声で宣誓をあげる。


「我々はー、『普通の男でいる』と言う辱めを受け入れます!!」


すると、参加者達もそれに呼応した。


『『『受け入れます!!!!』』』


ひよるがドン引きする。


「何なんだコレは・・・。

 まさか、普通の男になるのもプレイの一環と言う事なのか?」


参加者達は互いを慰め合っていた。


「まぁ、しばらくの我慢だからな。」

「この国ではこれをやれば『アレ』が貰えるんだからよ。」


すぐにカーラが反応した。


「『アレ』・・・?

 まさか、噂されている薬じゃないでしょうね・・・。」


僕はカーラに尋ねる。


「噂されている薬?」


「そう、とっても気持ち良くなれる違法薬よ。

 呼び方は色々あるけど、一般に『アホニナール』って言う薬だよ。」


ファートがそれに反応する。


「それは私も聞いた事があるぞ。

 あまりの依存性に最後には廃人になると言うものだな。

 まぁそもそもマゾ達は既に廃人みたいなものではあるけど、

 それにしたってもしマゾ化が治った時に廃人になっていたんじゃ、

 この国の出生率を戻しようが無い・・・。」


話を聞くに、どうやらここは違法なやり方でマゾ達を矯正したように見せ、

その噂を聞き付けて他地域から来たマゾ達をまた犠牲にしているようだ。

そんな事はやめさせなければならない。

だがしかし、どうやって・・・。


そこでカーラが『ある奇妙な提案』をした。


「ここにいるマゾ達は快楽のために普通の男をやっているに過ぎない。

 それならアタシ達がそれ以上の快楽を与えてあげれば良いんじゃない?」


僕は「そんな事出来るのか?」と聞いたが、ひよるが口を挟んだ。


「出来る、かも知れない。なにせマゾの魅力は『チョロさ』だ。

 それに薬が貰えるのはいくらかの期間『普通の男』を演じた後だろう。

 それならば今、即効性の高い私達の調教を加えてやればあるいは。」


僕はひよるがマゾに『魅力』なんかを見出しているのが不思議だったが、

まぁこれだけ男達が総じてマゾの状況では、その存在意義についてを

無理矢理納得させなければ心が持たないかも知れない。


そこで僕達4人は、中心人物の男がこの場から一旦立ち去るタイミングを

見計らい、その男のいた中心部へと躍り出た。カーラが大声を張り上げた。


「さぁさぁ!マゾの皆。アタシ達がアンタらの女王様になってやるよ!!

 イジめられたいヤツから国への忠誠を捨てて、アタシらに斬られな!」



挿絵(By みてみん)

大勢のマゾ達をお仕置きする四人



するとマゾ達は『イジめてもらえる』というエサに飛びつき、

斬られる為に次々と大群で押し寄せて来た。

彼女らはそれを剣の峰打ちで、僕は鞭で捌いて行く。

マゾ達は口々に『アァッ』だの『ぎも”ぢい”ぃ”~!!』だの言いながら

次々に倒れて行った。ファートが言う。


「こんなに簡単に行くものなんだな・・・やっぱりマゾって、

 ある意味で本当に恐ろしいな。

 もしかするとこのマゾ達を使って何かするのが、

 魔族の長の目的なのか?」


しかしひよるが、「それは無い」と言い張った。


「マゾ達を使ってどうこうと言う事では無いだろう。

 既に無力、いやむしろ迷惑な存在になっているんだ。

 人間に対しての支配と言う面では、私達ヴァルキュリアを除き、

 ほぼ完全に完成していると言っても構わないだろう。」


そこへ中心人物の男が戻って来て、この惨状を見て怒りを露わにした。


「う”ぅ”~、僕チンの帝国を壊したのは誰だ~?

 許さないぞ~、チンチクリンどもめ~!!」


非常に幼稚な言葉使いになった男は、僕達を睨みながら本性を現した。

そしてその体はメキメキと魔族化して行った。


「七つの大罪の一つ、怠惰の悪魔・ベルフェゴール様だぞ!

 もうお前達、許さないからな!!」


角とアゴヒゲを生やし、尻に便器をくっ付けたこの悪魔は、

どうやら高位の存在のようだ。

しかし今回コチラには非常に強い剣士のカーラがいる。

僕は大船に乗ったつもりで言った。


「カーラ!!君ならこんなヤツ、余裕だよな?」


しかし、カーラは少し弱気に答えた。


「いやぁ、さすがに七つの大罪の魔族となると・・・

 ちょっと相手が強すぎるかな?」


頭を掻きながらそう答える姿に少し不安になるが、

そこにひよるが声を掛ける。


「大丈夫だ。今回は私達3人が居る。

 全員で連携を取りながら、高位の魔族でも倒して行くんだ。」


すると勇敢にもファートが最初に斬りかかった。


「先手必勝!!ハァー!!」


しかしベルフェゴールは尻を向けて便器でそれを受ける。


「なっ!?」


そのまま、尻を振り回してカーラに便器をぶつけて振り飛ばした。


「うわーーー!!!!」


ガッシャーン!!


部屋の隅に置かれていたダサい壺を割ってしまった。


ベルフェゴールが勝利の余韻に浸っているうちに、ひよるが正面から

ベルフェゴールのアゴの下から剣を突き刺した。


「うおおおぉぉぉぉ!!!!!」


グサッ!!!!!!!


剣は見事にベルフェゴールに突き刺さり、一瞬目を丸めた後、

ベルフェゴールはのたうち回った。


「ぐおおおぉぉぉぉ、しまった!!油断していた・・・!!」


更にそこにカーラが追い打ちをかける。


「まだだ!!起き上がられたら厄介だからね!!

 心臓を貰うよ!!」


カーラの正確無比な一撃が確実にベルフェゴールを仕留める。

僕の出番が無いまま、ヴァルキュリア達のみで簡単に仕留めてしまった。


「さすが、戦闘集団だ・・・やっぱりキミ達強いね・・・。」


関心している僕に、カーラが言った。


「ま、まぁ、アンタみたいなノーマルな男が見てるって言うのも、

 多少はモチベーションに関係してるんだよ?

 アタシらだってさ、ほら、その、乙女なんだからさ。」


このギャップが何とも可愛いのだ。

気高く美しいヴァルキュリア達も戦闘を終えれば一人の女性。

そしてこの世界では圧倒的に普通の男が足りない。

さらに期待していたこの国にいた『普通の男』達は幻想だったのだ。

『普通の男』の価値がこれほどまでに高いのは異常だ。


そして僕達は国王の元へと向かった。

この国の普通の男達は魔族によって作られた幻想だった事、

その裏には違法薬のアホニナールが関係している事を伝えた。


正直、賭けだった。

国王もマゾであれば、もうこの国はどうしようも無い。

しかしこの国王はまだマゾ化を免れていた。


「そうであったか・・・。いや、しかし誠に残念である。

 この国を立て直そうにも、兵も市民も皆、普通を演じておるだけなのか。

 それならばもういっそ普通を演じずとも良いと、

 王の私自らが演説を行おう。

 他の国と同じく、やはり我が国もマゾに支配されておったのだな。」


国王は肩を落としていたが、僕は一歩前に出て告げた。


「王様、落胆する事はありません。

 これから僕達が魔族の長を見つけ出し、

 必ずこの国中をマゾ化から救い出してみせます。

 そしてまた男女が仲睦まじく出来る国を取り戻しましょう。

 だからそれまで、頑張って国政を支えて下さい。」


国王は目に少し涙を浮かべながら「頼んだぞ」と言った。


結局、マゾ化を免れた国と言うのは幻想だった。

しかし僕達の心は折れていない。

必ず魔族の長を見つけ出し、マゾ化を止めさせる。

すると国王から、ある情報が語られた。


「ここから更に北に進んだ所に人間に友好的な魔族の村があると言う。

 もし恐怖を恐れぬと言うのなら、行ってみると良いのかもしれぬ。

 だが、くれぐれも気を付けてくれ。キミ達はこの国の最後の希望だ。」


王の言葉を受けて僕達は人間に友好的な魔族の村を目指す事にした。

もしかしたらそこで魔族の長に関する重要な情報が聞けるかも知れない。

僕達は礼を言い、旧ドエヌ城・現ドマゾ城を後にしたのだった。

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