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#8:裏切りのヴァルキュリア

クサクサの村から西の洞窟へ向かった僕とひよる・ファートの三人は、

洞窟を抜けた先の出口でマゾと魔族達に掴まってしまった。


牢の前に大柄のオークが現れ、

僕達の両手を天井からぶら下がった鎖に繋いだ。



挿絵(By みてみん)

オークに捕らえられた三人



「グェッヘッヘッ、まさかこんな上物が三匹も捕まるとはなぁ。」


気高い女騎士ヴァルキリーであるひよるとファートは、

お決まりのセリフを言った。


「お前らに好き放題されるくらいなら・・・くっ、殺せ!」


「グェヘヘヘ、殺すワケが無いだろう~?

 そりゃもう、意識が飛んでも体が使える限りは最後まで

 美味しく頂いてやるぜぇ、グェヘヘヘ・・・ブッ!!」


最後に大きな屁までかまして、それが地下室中に蔓延して

思わず気が飛びそうになってしまう。


そして、今回は何と人間側にも裏切り者がいるのだ。

僕達が洞窟から出て来る事を予想していたマゾが言った。


「ププ、実はクサクサの村に僕ちゃまの兄が住んでいるのさ。

 冒険者達が洞窟の出口を見つけて来るだろうって伝書鳩で

 教えて貰っていたから先回りしたのさ、プププ!」


どうにもイライラする口癖のマゾだ。

手枷が付けられていなければ今すぐにでも鞭でシバき倒したい。

そして、ひよるがボソッと小声で言う。


「とにかく一旦、コイツらがどこかへ行った隙に作戦を立てよう。」


しかしオークは耳が良いらしく、それを聞き逃さなかった。


「グェッヘッヘ、無駄だぜ。

 一旦作戦を立てるなんて間も与えずに、今すぐにイジめてやるぞぉ。

 小賢しい真似はやめるんだな。言っておくが俺様はドSだ。」


最悪だ。

何かしら糸口を見出す為には時間が必要だと言うのに。

とは言え、この状況では時間があっても同じような気がした。


と、突然ひよるが泣き始めてしまった。


「う”ぅ・・・ひぐっ・・・みぎゃー、すまない・・・。

 お前が元の世界に戻る為の何かを掴めればと思い、冒険を提案した。

 それなのに、こんな事になるなんて、本当にごめんだ・・・。」


ひよるの真剣な思いに胸が痛んだ。

ファートだって、ここまで付いて来なければこんな事にはならなかった。

僕は心底、このオークとそして人間を裏切ったマゾを憎んだ。


「ププッ、この町はなぁ、トレイターの町って言うんだ。

 別名-[裏切者の町]-さ。皆他の村や町を裏切りここに辿り着いた。

 だから、こうして外部侵入者に対するお仕置き地下牢がある。

 最高だろ?こうしてイジめてもらえるなんてさ、ププッ。」


どう考えたって最低だ。

マゾのくせに、自分の快感の為に同じ人間を売りやがって。

だけど僕にはもうこの状況をどうする事も出来なかった。


オークがまず、ファートを品定めし始めた。


「フン、まぁ見た目は悪くねぇが、メス臭ぇなぁ。

 悪いけど俺様は臭ぇ女は嫌いでな。まぁ嫌いだが、別にイケるんだがよ。

 ただ、臭ぇ女は大事には出来ないんよ。

 俺様のを咥えさせる時につい勢い余って、頭を千切ってしまうかもな。

 グェッヘッヘへ・・・。」


頭を引きちぎるだって!?

横を見るとあまりの恐怖にファートは失禁していた。

またそれが匂いを拡散して、オークの逆鱗に触れたようだ。


「お~い、やっちまったなぁ、お前。

 まずはお前から、めちゃくちゃにしてやるから覚悟しろよ。

 この清潔な地下牢を汚した罰は高く付くぞぉ~!!」


ふざけやがって、何が清潔だ。

クサクサの村が可愛く思えるくらい、ここは悪臭に塗れている。

そしてそれは排泄物のそれでは無く、おそらく死の匂いだ。

そしてオークが恐ろしい一言を口にした。


「裏切りのヴァルキュリア、カーラをここへ呼べ!

 仲間の手でコイツを血祭りにあげてやるぞ!!」


何と、この町にもヴァルキュリアがいるのか。

しかもここは裏切り者の町トレイター。

と言う事はここにいるヴァルキュリアは、裏切者と言う事か。


階段を降りて来る、コツコツと言う音が聞こえて来る。

僕はどうする事も出来ないまま、ファートを失ってしまうのか。

おそらくその後には僕もひよるも同じ目に遭うのだろう。

終わった━。ただ、それだけが心を支配した。


「カーラ、ここに参りました。」


金髪のショートヘアーのそのヴァルキュリアは、

丁寧に跪きオークへの忠誠のような態度を見せた。

僕は今から起こる残酷なショーに目を向ける事は出来ない。

ただ、目を瞑っていようとそれだけしか考えられなかった。


「首を刎ねてやる。だが、楽には死なせんぞ。

 苦しむように、薄皮一枚残してやる。

 私の剣は切れ味は鋭いが、剣技もとても上手いんだ。」


怖ろしい言葉が並んだ。

そしてこちらへと剣を向けて彼女は続けてこう言った。


「今言ったのは、お前に対してだ、オーク!!

 これまで数多くの罪の無い人々を殺して来たのだろう!

 私が先日ここに来たのは潜入調査のためだ。

 やはりこんな事をしていたのだな、許せんぞ!!」



挿絵(By みてみん)

オークに剣先を向ける金髪のヴァルキュリア・カーラ



何と、彼女はまだこの町に来たばかりだと言うのか。

そして何より、この窮地を救おうとしてくれているのか。

しかしオークは体躯が大きくボス級だし、取り巻きも結構いる。

彼女一人で大丈夫なのだろうか。


「三人とも心配するな。アタシは強い。

 この程度のヤツらに負けはしないよ。」


彼女は『ハァッ!』とオークの懐に飛び掛かり、そのまま剣先を上へ向けて

オークの腹をかっ捌いた。酷い匂いのする臓器が溢れて来る。

慌てふためく雑兵達を続けて次々と斬り付けて行くのだが、その動きが

ひよるやファートのそれよりも流暢で軽やかだった。

まるでツバメの飛行シーンのようにスピーディーに事が運び、

一瞬何が起きているのか理解が追い付かない程だった。


あっと言う間に敵を全滅させた後に、僕達の手枷を解く彼女。

僕を見て、声をかけた。


「おっと、キミは男だったのか。

 もしかして、このまま縛られたままでいたかったかな?」


少しイタズラに笑うカーラ。

ひよるがすぐにそれを否定しにかかった。


「いや、違うんだ。この男はマゾでは無い。

 そして女装させた事で女王性に目覚めている。

 サドなのかも知れないんだ。」


「へぇ、それは中々、面白いじゃん。

 こんな町、滞在する意味も無いからサッサと出て行こう。

 そして北にはマゾ矯正施設を備えた国があるんだ。

 そこへ行けばマゾでは無い男もいるはずだよ。

 マゾばかり見てうんざりしてたでしょ?

 たまにはノーマルな男を見に行こうよ。」


とてつもない剣技と明るくカラッとした性格。

カーラが仲間にいてくれれば心強い。

そしてマゾは矯正出来るものだったのか。

僕はこの世界を少しずつ知る度に、僕がここに来た理由を考えていた。

きっと何か一つ一つに意味があるはずだ。

何よりもあのマゾ化しかけた西の洞窟での一件。

あの時の口をついて出た言葉は一体何だったのだろう。


僕達は地下牢を出て裏切りの町トレイターの中を通り抜け森へと出た。

四人になったパーティーは心強く、やはり旅は道連れだと思った。


そして1時間少し歩いた所で、城が見えて来た。

カーラが言う。


「アレがドエヌ城だよ。

 マゾ矯正施設、楽しみだろ?」


僕達は歩を進めて、ドエヌ城へと入って行った。

門番達はマゾでは無く、普通に門番然としていた。

普通であると言う事がこんなに珍しく映るなんて。


そして、カーラが言っていたマゾ矯正施設へと向かった。

そこは大きな施設で、体育館程度の大きさがあった。

中からは様々な声が響いていた。

恐る恐る入ってみると、ジムトレーナーのような男性が受付だった。


「いらっしゃい!

 見学者さんかい?好きに見ていってくれよ。

 ドエヌ城名物のマゾ矯正施設。

 『マゾは治せる』コレがウチのポリシーさ。」


僕達はついに、マゾ矯正施設内部へと足を踏み入れた。

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