#6:クサクサ村
ボンデジ村を後にして、魔族の長を探す旅に出た僕とひよるは、
まずは近隣の町や村を探していた。
「まさか、何のアテも無かったなんてな..。
何かしら目的地を知っているものだとばかり思っていたよ。」
僕は落胆しながら、ひよるにそう言った。
すると、ひよるから反論が出た。
「し、仕方がないだろ。
元々私はボンデジ村のヴァルキュリアだ。
旅をする吟遊詩人みたいな生き方をして来たわけじゃないんだ。」
「まぁ、確かにそうだけどさ…。」
と言った所で、何やら村のような集落を見つけた。
「おっ、どうやら村があるみたいだぞ。
とりあえず何か情報が無いか聞いてみよう。」
「そうだな。しかし何か・・・臭く無いか?」
何やら村からは異様な匂いが漂っていた。
それは怪しさの比喩では無く、文字通り物理的な臭さ。
硫黄臭、もっと言えば屁のような・・・温泉でも湧いているのか?
村に入るとその匂いは更に強くなった。ひよるが咳き込んだ。
そこへ、村マゾ達が犬のように四つん這いで駆け寄って来た。
「クサクサの村にようこそだワン!
この村はあえて臭くする事で魔族達を近寄らせない天才的な村だワン!」
ひよるが早速、村のクセの強さにやられているようで頭を抱えている。
もっとも強いのはクセだけでは無く硫黄臭、いわゆる屁臭さだ。
その時、奥の方から一人の茶髪ポニーテールのヴァルキュリアが現れた。
「ようこそクサクサの村へ!
旅人とは珍しいな。私はこの村の唯一のヴァルキュリア、ファートだ。」
クサクサ村のヴァルキュリア・ファートとクサクサ村のマゾ達
彼女からは屁臭さでは無いが強烈なメス臭さが漂っており、
僕は体が反応してしまいそうになった。いや、反応してしまった。
しかしすぐに村の屁臭さにかき消され、それさえも忘れてしまった。
「この村はマゾ達が色々と垂れ流しにする事で自衛をしている。
もうかなり長い間魔族達も来ていない。
本来ならもう私も必要ないのかも知れないがな、アッハッハ。」
彼女の甘酸っぱい口臭にまた体が反応してしまう。
しかし、ひよりは冷静に言った。
「そうか、ならば魔族の長についての情報は何も知らないか?」
「うーん、そうだなぁ。残念ながら魔族とは何十年も接していなi・・・」
そこへ、村マゾ達が何名か走って来るのが見えた。
「ヒイィィィ、助けてー、魔族に襲われちゃう!!」
見るとその後ろには虫のような形をした魔族?達が群がっていた。
ファートが驚いたように言った。
「そんな・・・魔族だと!?
もう何十年も襲って来た形跡は無いのに・・・
仕方ない、私一人で何とかするしか無いか!」
しかし、それをひよりが制する。
「何を言う!
同じヴァルキュリアとして共闘するぞ。
それにこの男は女(装)王だ。少しは役に立つ。」
僕はいつの間にか定着していた謎の呼び名に違和感を持ちつつも、
襲い来る魔族達をジッと見ていた。
どうやら一番の親玉は大きな蠅のような姿をしている。
魔族達が言った。
「俺達、臭いの大好き!!」
何と臭いのが好きな魔族達の集団がこの村を発見してしまったようだ。
村マゾ達が右往左往して助けを求めている。
「キャアァァ、私達非力なのよ~、助けてヴァルキュリア様!!」
いつ見ても大の大人の男が女の子みたいな悲鳴をあげる様は情けないが、
今はそんな事を言っている場合では無い。
ひよるが声をあげる。
「来るぞ!みぎゃー、ファート殿、気を抜くなよ!!」
ひよるはすぐにボスの蠅の魔族と交戦を繰り広げ、
ファートが他の魔族達を相手する。
そこから更に漏れた魔族達を僕が相手する事になった。
しかし今回は、前回のボンデジ村の時のようにマゾ達が使えない。
逃げ回っている為捕まえられそうにないのだ。
仕方なく僕は自らの鞭捌きのみで相手をする事にした。
「オーッホッホッホ、女王様に跪きなさい、虫ども!!」
すると虫の魔族達は素直にジッとして、僕に叩かれるのを待った。
─ビシィッ!バシッ!─
僕の的確な鞭捌きに、虫魔族達は次々に満足して成仏して行く。
『アァッ、良い!女王様、もっと~!!』
『来世生まれ変わるなら、次はマゾ人間になりたい!』
こうして見事、雑兵の魔族達は僕とファートによって一掃された。
しかし、ひよるは蠅のボス魔族に手こずっていた。
ファートが言った。
「ソイツはまさか、『蠅の王・ベルゼブブ』!?
だとすると、相当高位の魔族では!?」
しかし、ひよるがそれを否定した。
「ファート殿、それは誤解だ!
本来は『バァル・ゼブブ』と言う高貴魔族だが、
この蠅の王はそれが入植して来た際の別称、コイツは別物だ!
それにしても、少々手こずる相手だがな!!」
蠅の王はどうやら、ひよるの胸の谷間や脇をめがけて向かっている。
本当にどこまでも匂いフェチの魔族のようだった。
よし、それならば・・・と、僕はファートに『あるお願い』をした。
「ファートさん。あなたをフェロモンの女剣士と見込んで頼みがあります。
今すぐそこに放尿をして下さい。きっと匂いフェチの蠅の王なら、
それに吸い付かずにはいられないはず。
そこを全員で一気に叩きましょう!」
ファートは最初少し戸惑ったが、ひよるが苦戦する姿を見て意を決した。
「よし、わかった。
しかし紫の女王よ、少し他所を向いていてはくれないか?」
僕は『わかった』と答えながらも、横目でチラッと見ていた。
我慢していたのか、相当な量と時間と匂いと音だ。色も濃かった。
『ふぅ・・・』とファートが息をつくと、すぐに蠅の王が向かって来た。
『俺様、臭いの大好き!!』
目がハートマークになっているのが最高にキモかった。
僕は二人に向かって『今だ!』と合図をした。
そして三人で一気に蠅の王をタコ殴りに斬りかかった。
『そ、そんな、ヒドい!俺様はただ可愛い女子のおしっこを・・・』
そう言いながら、やがて蠅の王は息絶えた。
その顔は虫なのでハッキリとは言えないが、どこか嬉しそうだった。
「魔族達も、相当ド変態なんだな・・・。」
と僕が言うとひよるが、
「いや、ただマゾなだけだ。変態と言う程バリエーションは無い。」
と冷たく答えた。
僕は不意にある事が気になり、ファートに尋ねてみた。
「そう言えばさ、しばらく魔族と接していないみたいだったけど、
そもそも男達がマゾになった原因はやっぱり、もっと昔に
魔族が襲って来たからなのかな?」
するとファートは、不思議な事を言い始めた。
「いや、それについては実は魔族が原因では無いんだ。
ある時、村の男が不思議に光る宝石を拾ってな。
それに魅了された者達から、マゾになって行った。
そんな伝説が村では囁かれているんだ。」
ひよるがすかさずに質問した。
「その宝石は、今どこに?」
「西の洞窟の中に、私の先々々代のヴァルキュリアが隠した。
厄災の元だ、と言う事でな。」
それを聞いてひよるが、少し顎に手を置いて考えた。
「ふむ、もしかするとその宝石を見つければ、
何らかの解決にならないか。
ファート殿、案内して貰えないだろうか?」
ファートは『もちろん、喜んで。』と返した。
気付けば村の匂いに鼻がすっかり慣れてしまい、
むしろスパイシーでクセになる匂いとさえ感じていた。
慣れとは恐ろしいものだ。
ひよるはまだ慣れないようで、自分が匂っているのでは無いかと
何度も自身の脇を嗅いだりしていた。少し可愛かった。
そうして夜にはクサクサ村の名物料理 [スカトローネ] が振る舞われた。
村の女性達の汗で煮込んだ煮物料理らしく、とても美味しかった。
さらにこの料理は男性が食べると自身の匂い消しにもなるらしく、
実際に僕も自分の体の匂いから男性らしさが消えたように思えた。
村のマゾ達による屁の我慢大会等の出し物が催され、宴は賑わった。
そして翌朝、僕とひより、それにファートは西の洞窟へと向かうのだった。




