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#3:ソグンの死

ヴァルキュリアの女性との一夜の後、僕は深い眠りに就いていた。

目覚ましも無い為、起きるタイミングは完全に自分の本能だ。

しかし、何やら外が騒がしい。

僕は何やらザワ付く心のままに村の広場に出てみた。


するとそこには一本の杭が立っており、人が串刺しにされていた。


「昨夜の・・・ヴァルキュリアの女性だ・・・。」


僕は全身の力が抜け、その場にへたり込んでしまった。

マゾの男達は何をしたら良いかわからず、ただおろおろとしている。


村の女性達がそれを制したりしながら、

一方でヴァルキュリアの女性達が杭を抜こうと試みている。


すると、ひよるが僕の元にやって来た。


「やっと起きたか。

 彼女はあの夜、外を歩いている所を襲われたようだ。

 あんな事があった後で体も隙だらけだったんだろう。

 ・・・本当に残念な事だ。」


僕は言葉が無かった。


あの夜、もしひよるが来た後も行為を続けて、

そのまま僕の家で二人で寝ていれば彼女は死なずに済んだのか?

強引に彼女を引き留めて押し倒していれば、こうはならなかったのか。


彼女が言っていた言葉を思い出した。


━『だって私達、明日戦いで死んじゃうかも知れないんだよ?』━


まさかそれが、こんなに早くに来るなんて思わないじゃないか。


周囲でおろおろしているマゾ男性達の中には、

好奇心から恐る恐る近づいて遺体を覗き込む者達がいた。


僕は怒鳴りつけた。


「やめろ!!

 お前達だらしのない男達の代わりに命を捧げて戦っている戦士を

 愚弄するような事をするな!!」


マゾ男性達はビクッと身を震わせて逃げて行く。

ひよるが僕をなだめた。


「気持ちはわかるが、そういら立つな。

 彼らだって最初は勇敢に戦おうとした者もいたんだ。

 ただ、魔族の瘴気は男だけを的確にマゾにした。」


「あんな役に立たないヤツらの為に、

 ヴァルキュリア隊が命を賭けて戦う意味なんて無いじゃないか!

 卑屈で弱くて愚かで惨めで・・・。」


ひよるが僕の頭を撫で、落ち着かせようと努めた。


「男達のマゾ化により、女達は男に魅力を感じなくなり出生が途絶えた。

 しかしもし、マゾ化を解く方法がわかれば男達だって大切な存在なんだ。

 彼らだって望んであんな風に


ヴァルキュリアの女性との一夜の後、僕は深い眠りに就いていた。

目覚ましも無い為、起きるタイミングは完全に自分の本能だ。

しかし、何やら外が騒がしい。

僕は何やらザワ付く心のままに村の広場に出てみた。


するとそこには一本の杭が立っており、人が串刺しにされていた。


「昨夜の・・・ヴァルキュリアの女性だ・・・。」


僕は全身の力が抜け、その場にへたり込んでしまった。

マゾの男達は何をしたら良いかわからず、ただおろおろとしている。


村の女性達がそれを制したりしながら、

一方でヴァルキュリアの女性達が杭を抜こうと試みている。


すると、ひよるが僕の元にやって来た。


「彼女はあの夜、外を歩いている所を襲われたようだ。

 あんな事があった後で体も隙だらけだったんだろう。

 本当に残念な事だ。」


僕は言葉が無かった。


あの夜、もしひよるが来た後も行為を続けて、

そのまま僕の家で二人で寝ていれば彼女は死なずに済んだのか?

強引に彼女を引き留めて押し倒しておけば、こうはならなかったのか。


彼女が言っていた言葉を思い出した。


━『だって私達、明日戦いで死んじゃうかも知れないんだよ?』━


まさかそれが、こんなに早くに来るなんて思わないじゃないか。


周囲でオロオロしているマゾ男性達の中には、

好奇心からおそるおそる近づいて遺体を覗き込む者達がいた。


僕は怒鳴りつけた。


「やめろ!!

 お前達だらしのない男達の代わりに命を捧げて戦っている戦士を

 愚弄するような事をするな!!」


マゾ男性達はビクッと身を震わせて逃げて行く。

ひよるが僕をなだめた。


「彼らだって最初は勇敢に戦おうとした者もいたんだ。

 ただ、魔族の瘴気は男だけを的確にマゾにした。」


「あんな役に立たないヤツらの為に、

 ヴァルキュリア隊が命を賭けて戦う意味なんて無いじゃないか!

 卑屈で弱くて愚かで惨めで・・・。」


ひよるが僕の頭を撫で、落ち着かせようと努めた。


「男達のマゾ化により、女達は男に魅力を感じなくなり出生が途絶えた。

 しかしもし、マゾ化を解く方法がわかれば男達だって大切なんだ。

 彼らだって望んであんな風になっているワケじゃない。」


「そんな事言ったって・・・!!」


僕は悔しさに涙が出て来た。

そして気付いた。

僕はこれからヴァルキュリア達から戦う為の訓練を受ける。

僕が強くなればもうこんな悲劇を繰り返させる事はない。

それならば誰よりも強くなって、魔族の長に会いに行こう。

僕は決心を固めた。


「ひよる!

 僕を誰よりも強い戦士として鍛えてくれ!!

 もうこんな悲劇は繰り返させない。」


ひよるは真剣な眼差しと静かな頷きで応えた。


やがて亡くなったヴァルキュリアの葬儀が行われた。

村の墓地の一角にはヴァルキュリア専用の区画があり、そこに埋葬された。


「そう言えば、彼女の名前は何て言ったの?」


僕はひよるに尋ねた。


「彼女の名は『ソグン』。

 ヴァルキュリアにはよくある事だが彼女は最初、名を持たなかった。

 そこで北欧神話のヴァルキュリアの名を与えた。

 名の意味は『沈黙』だ。」


「ソグン。沈黙、か・・・。

 昨夜は饒舌なように感じたけど、普段はあまり喋らない人だったの?」


「いや、会話は普通に饒舌だったよ。

 ただ彼女は静かに黙って善行を積むような所があってな。

 例えば水だって村人の共通の資源だから、

 彼女はあまりそれを使う事を好まず、風呂にあまり入らなかった。」


「あ・・・。」


僕は昨夜の事を思い出した。

彼女の尻が僕の顔の前に来た時、あまりの臭さに顔を逸らしてしまった。

今思えばあれも、村の水を使わないよう風呂を控えていたからか・・。


「他にも、こうした墓標を建てるような普通なら好んで行わない事も、

 彼女は率先して引き受けた。本当に、気高きヴァルキュリアだったよ。」


僕は、名前も知らないままにそんなヴァルキュリアと交わろうとし、

更には結局彼女の欲求を満たす事さえせずにみすみす帰してしまい、

最後には最悪の結末を迎えてしまった。


自分がどうしようも無く情けなくなった。

だけどこれはマゾ化の衝動じゃない。強さへの渇望だ。

僕はひよるに言った。


「すぐにでも!訓練を初めて欲しい!!」


わかった、とひよるは答えた。

そして彼女は村の方へと歩いて行くので、僕はそれに付いて行く。

一体どんな訓練が行われると言うのか。

たとえそれがどんなに厳しいものであっても僕は耐えるつもりだ。

もう悲劇を繰り返さない為に。


「着いたぞ、ここだ。」


ひよるがある建物の前で足を止めた。

そこは周囲の家々よりもひと際大きく、何らかの公共施設のようだった。

中からは何かを叩くような音や悲鳴が聞こえる。

これは・・・かなり厳しい訓練になりそうだ。

僕はゴクリと喉を鳴らし、ひよるに付いて恐る恐る建物へと入った。


そこには、・・・圧巻の光景が広がっていた。


ヴァルキュリアやヴァルキュリア予備軍と思われる一般女性達が、

マゾの男達を追いかけたり固定したりしながら、

鞭や木の棒で叩いているのだ。


マゾ男達からは「ありがとうございます!」や「ヒィ!」と言った、

嬌声に悲鳴、様々な声が上がっていた。

・・・僕はこの異様な光景に圧倒された。


「これは、一体・・・?」


「コレは私達ヴァルキュリアの戦闘訓練であると共に、

 マゾ達への調教も兼ねている。

 逃げ回るマゾを追いかければ、私達もマゾも同時に

 体力作りにもなるからな。後はストレス解消にも役立つ。」


とんでも無い施設だ・・・。

だけど、鞭で打たれたり追いかけられるマゾ達は嬉しそうだ。

心底女性達からイジめられる事が心地良いようだった。


「コレを僕にやれと?」


「あぁ、基礎体力作りと的確な武器のコントロール、

 複数体を相手する時の反射神経、様々なものが磨かれる。

 もし気分を上げたいなら、鎧を着てみるか?

 ホラ、私のを貸してやろう。」


そう言ってひよるはいそいそと鎧を脱ぎだし、僕に手渡した。

その首元の穴からは蒸気が上がり、むわっと蒸れた匂いがした。

僕はそれを嗅ぎ思わず下半身が滾ってしまった。


「あ、あの、コレを着て訓練したらちょっと支障があるって言うか、

 その、やっぱり良いよ。」


ひよるはニヤリと妖艶に猫のように笑う。


「フフ。そんな事を言って、私のメスのフェロモンに反応したんだろう?

 可愛いじゃないか。」


ひよるは僕から鎧をヒョイと取り返すと、今度は古びた鞭を手渡した。


「コレには、多くのヴァルキュリア達の手汗が染み込んでいる。

 コレを使いそこら辺のマゾを叩いてみろ。

 まずはお前の鞭捌きを確かめてやる。」


余計な情報を教えられて、僕は必要以上にドキドキしてしまう。

多数のヴァルキュリア達の手汗・・・いやいや、そんなのもう、

とっくに乾いてるし、手汗が何だって言うんだよ。

大体、強くなるのにそんなの関係無いだろ。


僕は鞭を強く握り、そこらにいるマゾに向けて放とうとした。


・・・しかし、打てなかった。


何の理由も無く無抵抗なマゾを叩く事が出来なかった。


ひよるが近づいて言う。


「まぁ、いきなり出来るものでは無いな。

 よし、わかった。

 そのマゾは実はソグンの下着を盗んだ泥棒だ。本当だぞ。」


え、あのソグンの下着を盗んで困らせた泥棒!?

だったらコイツ、悪いマゾじゃないか。


僕は手に力を込めて怒りと共にマゾを叩いた。


━バシィィン!!━


思った程全力は伝わらなかったが、確かにマゾにヒットした。


「ヒギィ!!」


悲鳴があがったが、その後すぐに恍惚の表情で蕩ける。


「ふふ。実は今言ったのは嘘だ。」


えぇ!?

じゃあ、このマゾはソグンの下着を盗んだわけじゃないって言うのか!?


「ちょ、ちょっと!それはさすがにヒドくないか!?

 僕のピュアな怒りをそんな風に使われるなんて、しかもこのマゾも・・・

 って、マゾはまぁ満足してるから別に良いか。」


「良いか、戦いの場においては敵にも家族や愛する者がいるかも知れない。

 それでもただ無心に倒すべき存在として全力を向けるだけだ。

 余計な事は一切考えるな。」


そうは言われても難しい事だった。

このマゾ達だって元々は普通の男だったはずだ。

それをマゾになったからと言って一方的に叩いたり・・・


「強くなるんじゃなかったのか?

 ソグンへの弔いの気持ちはそんなもので削がれてしまうのか。」


ハッとした。

僕は目の前のマゾに対する憐れみの気持ちだけで、

本来の目的を忘れかけていた。

そうだ、誰よりも強くなり、もうあんな悲劇を繰り返させない。

僕は鞭を強く握った。

そして同じマゾ目掛けて再度、全力で打ち放った。


━バッチイィィィーーン!!━


「ブッヒィ~」


マゾは惚け切った顔をしながら気絶して崩れ落ちた。

よほど気持ち良かったのだろう。


ひよるが口角を上げて、しかし目の奥は真剣なままの表情で言った。


「そうだ、それで良い。

 今の一撃、実戦なら確実に有効打だ。

 よし、昼食にするか。」


僕はこうして、誰よりも強い戦士になる為、訓練を始めたのだった。

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