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#15:灰の王

挿絵(By みてみん)

対峙する白と黒の女王


「話、ですって?」


真央が女王に聞いた。


「あぁ。そもそもを言えばこの城は私のものだった。白黒両面の女王。

 魔族とヴァルキュリアの数を調整しながら世界の均衡を保っていたんだ。

 そこへお前が来て黒の女王となった。

 だから私は白の女王の役割だけを受け持つ事にしたんだ。

 一人が白黒両方を受け持てばいずれは均衡が崩れる、

 それならばいっそ黒の女王の役目を他の者に任せてみよう、そう思った。

 しかしお前は際限無く魔族を増やし続け、男達をマゾにした。

 ヴァルキュリア達ではもう対応し切れないくらいに勢力を強めた。

 そんな時にやって来たのが、お前が望んだ男だった。」


僕、と言う事か。

それにしてもヴァルキュリアの女王の口から出た言葉が衝撃的過ぎて、

僕は真央がやって来た事の罪深さを改めて知った。


「そんな、アンタの思った通りに上手く行くわけ無いじゃない。

 それで、アタシにどうして欲しいって言うのよ。

 もう今更、ここまで来て黒の女王を止める事は出来ないわよ。

 アタシ、向こうの世界で自〇してコッチに来たんだから。」


それは衝撃の告白だった。

黒魔術の副作用によりコチラの世界に来たと聞いていたが、

それはあくまで僕のように存命しながらの事だと思っていた。

それがまさか、自らの命を絶っていたなんて・・・。


「あぁ、黒の女王を止めろとは言わぬ。

 だがこれからは白の女王の役割も兼任しろと言う事だ。

 そうであればお前はこの世界のバランスを取る難しさを知る事になる。」


「えぇ!?

 何を言っているのかしら、アタシは望んで黒の女王なのよ。

 わざわざ興味も無い白の女王役なんて引き受けるワケが無いじゃない。」


「いや、私が意図すればお前は受けざるを得ない。

 それは好むと好まざるとに関わらず、世界の仕組みなのだ。

 放棄しようとしても死ぬ事も出来ず、管理を続けなければならぬのだ。」


そうか、真央の圧倒的な強さと言うのは、

もし辞めたくなっても黒の女王を辞める事は出来ない、

その力の代償があるが故の強さだったのか。

それに白黒両女王の役割を担わされる可能性もある。

そうしたリスクの上に成り立っていた圧倒的な力だったのか。


「な・・・本当に拒否は出来ないの?

 そんな面倒な役割、まっぴらごめんよ!」


真央は少し涙目になった。

黒の女王は彼女の性に合っていたのかも知れない。

だが、白の女王に関しては彼女の性に全く合わないのだろう。


「断る事も出来るぞ。いや断ると言うよりも、

 白の女王を受けてくれる者を探し、その者に継承すれば良いのだ。」


「受けてくれるってそんな、アタシの配下に白の女王になりたいヤツなんて

 そもそももう魔族はかなり壊滅されたし・・・。」


僕は真央に言った。


「ひよるがいる。

 彼女の高潔の意思ならきっと、白の女王を引き受けてくれる。

 だがそのためには、あの黒い球から彼女を出して欲しい。」


しかし、真央が抵抗を示した。


「そんな事したら、あの女が出て来てしまって、

 アンタはあの女に夢中じゃない!

 アタシは何のためにこの世界に来たのかわからなくなるわ。」


何と、真央は僕を取り戻すためにこの世界に来たと言うのか。


「最初はただ、マゾだけの世界を作って自分を満たそうとした。

 だけど結局その根本にあったのはアンタが原因だった。

 やっぱり、調教してマゾにしてずっと側に置きたい、

 そう思ったのよ。それがこの世界でのアタシの目標なの。」


・・・。


僕は何とも答えられなかった。

もう僕はマゾじゃない。いや正確にはただ感情に蓋をしただけだ。

別にマゾに戻る事は出来るのかも知れない。

だけど本当にそれで良いのか。僕の幸せは一体━━━。


「とにかく一度、ひよるを球から出してやればどうだ?

 彼女が本当に白の女王を引き受けるかはわからんぞ。」


言われて真央は不服そうにしながらも、ひよるを元に戻した。

良かった、彼女はまだ生きていた。

僕はひよるに事の経緯を説明した。


「私が、白の女王に・・・?

 うぅむ・・・考えてもみなかった事だ。

 それに一度受ければ次の継承者が現れるまで辞められぬと。

 それは本当に慎重に考えなければならない。だが・・・。」


彼女は言い淀んだ。


「お前が側にいると言うのなら、私はその役を引き受けよう。」


何と、ひよるは白の女王になる条件に僕が側にいる事を挙げたのだ。

白の女王が言った。


「ふふ、マゾ気質を持っているクセにモテ男だな。

 さぁ、どうする?お前がひよるに付けば白の女王の誕生だ。

 しかし黒の女王は満足せず、また魔族を生み出し続けるだろう。

 黒の女王に付けば彼女はその両方を引き受けるかも知れぬ。

 しかし、お前はマゾとして女王に一生仕えなければならない。

 お前の選択次第、と言う事だ。」


突然、僕にこの世界の命運が任せられてしまった。

そもそも僕はアチラの世界に戻ってやりたい事・・・は、

あるのかわからないけれど、だけどまだ死にたくは無・・・


「あぁ、そうそう。」


白の女王が言った。


「お前ももう、アチラの世界では死んでいるぞ。」


えぇぇぇぇぇ!?

まさかの言葉に頭が真っ白になった。

嘘だろ?と言いたかったが、女王の言葉に嘘があるはずが無い。


「どういう、事ですか・・・?」


「お前は仕事で非常に疲れていたな。

 コチラの世界に来る前、意識を失った時のお前は既に帰らぬ人だった。

 ストレスと過剰な睡眠不足から、意識が飛んだと言うよりも死んだのだ。

 気付いておらぬかったのか?」


何と言う事だ。

僕は元の世界に戻るかどうかと言う選択肢以前に既に死んでいた!?

じゃあここは何なんだ、死後の世界なのか!?


「ここはアチラの世界の抽象を具現化した魂のパラレル世界だ。

 こちらの世界での白と黒のバランスが現実世界へも影響する。

 白と黒のどちらがバランスが欠けても世界は崩壊へと向かう。

 この世界で白と黒のバランスを取る事でアチラは成り立っているのだ。」

 

この世界にそんな大切な役割があっただなんて・・・。

だけど僕は、それでも悩んだ。

ひよるを取れば真央が絶望し、真央を選べば僕に自由は無い。

それならば、僕は━━━━━。


「僕が、白と黒両方の王になります。

 そして、ひよると真央を僕の配下に置きます。

 しかしそれは支配と言う形では無く、真央のマゾ奴隷として、

 そしてひよるのパートナーとして、彼女達と関係を築きます。」


「ふふ、本当にそれで良いのか?

 相当歪んだ王になるぞ?

 しかしまぁ、内に白と黒を抱えた灰の王と言うのも面白いかも知れん。」


真央は言った。


「アンタ・・・本当に良いのね。

 そこのヴァルキュリアのモノでもあるって言うのは気に食わないけど、

 アタシの元にいる間はちゃんとマゾ奴隷として仕えなさいよ。」


そして、ひよるも言った。


「そうか・・・。半分闇に染まったお前の事を

 どうやって愛せるかはわからんが、やってみるぞ。」


そうして僕は、真央と白の女王から白と黒それぞれの王位を継承した。

白と黒のエネルギー体が僕の体の中に入り、強い衝撃と共に

一瞬気を失ってしまう。しかしすぐに目が覚め、心が満たされた感覚。

それは決して幸福というものでは無く、使命感。

全てを管理し、バランスを取りながらも二人を愛すると言う覚悟。

複雑な自分の立ち位置についても、驚くほど納得し受け入れていた。


「あの、女王。ファートとカーラは・・・。」


「女王と呼ぶで無い。もう今はただのヴァルキュリア、スクルドだ。

 心配するな。ヴァルキュリアの魂は巡る。

 彼女達の魂はまた運命の円環に導かれて、ヴァルキュリアに転生する。

 そう遠くない間に、彼女達の魂を持った存在に出逢う事になるだろう。」


僕は、二人の魂が消えてしまったワケでは無い事に安堵しつつ、

ひよると真央の後ろ姿を見つめた。

僕と共に苦楽を共にして来た大切な仲間だったひよると、

死んでも尚僕を歪な形で愛し続けた真央。


二人と共にこれからどういった世界を築いて行こうか。

玉座に座り、僕はこの世界の将来の姿を思い描いた。

次回、最終回か!?

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