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アノマリー -from SCP foundation-  作者: 梶原めぐる
戦闘用核工学擬似体 適応化実験
103/105

生存する苦悩③


「なんで、なんでなんで!」



 私はだだっ広い部屋に奴と共に閉じ込められていた。アノマリー——不死身の爬虫類は、その二つ名の通り不死身だと言われている。財団は幾度となくそいつの殲滅に挑んでおり、その度に苦渋を味わされていた筈だ。そのアノマリーが、何故私と相対している?



「私に何しろって言うのよ!!」



 私の大声が癪に障ったらしい。化け物は私目掛けて猛烈なスピードで突進してきた。



「ぐぇ……ッ」



 そのあまりの質量に、避ける間もなく私は薙ぎ倒される。爬虫類の垂れ下がった泥のような皮膚が、体に触れてゾッとした。



「た……助けて!誰か!!助けてぇっ!!」



 私は壁面のガラス窓に向かって叫んだ。ガラスの向こうは見えないが、財団職員はどうせ見ているのだ。どんな顔で私を眺めているのだろう?無様に床に転がる私を、どうせ特段感情を持つことなく見ているに違いない。まるでモルモットがもがき苦しむのを眺めるのと同じように、無感情に。



「逃げなきゃ…………」



 爬虫類は、押しのけて逃げようとする私の脚に食らいついた。鋼鉄でできた脚にも関わらず、強靭な顎から生えた牙が食い込んでヒビが入ってしまう。神経の通っていない筈の脚に鋭い痛みが走った気がした。



「やめて、離して……!」



 メキメキと嫌な音を立てて、脚がもぎ取られる。千切れた関節部からケーブルがだらりと垂れ下がり、オイルが漏れ出した。本物の脚ではないとわかっていても、あまりの光景に顔から血の気が引いた。

 もぎ取った脚をその辺に投げ捨てたそいつの次の狙いは、私本体だった。脚を損傷させたくらいでは大したダメージが無いと理解したらしい。私の頭部めがけて大口が迫ってくる。



「うぅッ」



 機械の腕でそいつの顎を掴む。その牙が届くほんの数センチ手前で押し留めた。いっそのことその骨を砕いてやろうと両腕に力を込める。

 腐臭がその腹の底から漂ってきて、思わず顔を顰めた。一体この化け物は、どれだけの人や物を喰らってきたのだろうか?

 顎を掴まれた爬虫類は、暴れ狂う。振り回され、私がたまらず手を離すとそいつは距離を取った。その隙に私は再び窓ガラスに向かって叫んだ。



「…………ねぇ!三影さん!助けてってば!聞いているんでしょ!」



 私がしつこいからか、ブン、と何かのスイッチが入る音がして、ようやく壁のスピーカーから返事が聞こえた。


 

『ごめんね助けてあげられないわ』


「どうして!?何でこんなことするの!!?」


『貴方のためなの。頑張ってね……』



 ブツン、と回線が落ちる音。



「…………それだけ?」



 無情にも、その後再びスピーカーから三影さんの声がすることは無かった。愕然とその場に項垂れる。そのせいで再び突進してきた爬虫類に気付くのが遅れた。

 振りかぶった強靭な前肢を避けることも受け止めることもできず、張り倒される。



「いっ…………」



 生身の部分にもその爪が届き、裂かれた皮膚からどくどくと血が溢れ出した。

 床に突っ伏した私は絶望の最中にいた。



「……なんで、私ばっかり」



 誰にも聞こえない程の声量で、ぽつりとつぶやく。このまま死んでしまえば、財団におもちゃにされずに死なせてくれるだろうか?……否、再び治療されて身体を改造されてしまうに違いない。利用価値があると見なされれば、簡単には死なせてくれないだろう。


 異形の咆哮——爬虫類は私を仕留めにかかった。驚くべきことに奴は背中の細胞を急速に変化させ、悍ましい音と共に腕を2本生やしてみせた。そして私の機械化した両腕と、ぶらんと垂れ下がった1本の脚を掴んで、力任せに引き裂こうとしてきたのだ。あまりの痛みに絶叫する。走馬灯のように、色んな思いが頭を駆け巡った。



「いあぁぁぁあッ!!」



 どうして私だけ?

 なんでこんな目に遭わなきゃいけなかったの?

 なんであの時死なせてくれなかったの

 全部財団のせいだ。

 復讐してやる。

 財団が憎い、憎い、憎い、憎い———。


 憎しみが私を突き動かす。

 

 私は無意識のうちに身体に行き渡る核エネルギーを丹田に集中させていた。

 1…2…3…4…5。

 5秒のカウント。その間に、エネルギーは渦を巻き、圧縮され、凄まじい密度へと変化する。

 何となく、この力の使い方が理解できた。

 

 丹田から上昇する光を帯びたエネルギー。私は胸に埋め込まれたコアから、無我夢中でそれを爬虫類に向けて放出した。

 超高密度で放出された核エネルギーの威力は凄まじかった。不死身の爬虫類の肉体が8割ほど消し飛んでしまった。ボロボロになった奴は残った部分でのたうちまわった後、動かなくなった。



「わ……私が……本当に?」



 自分がやったなんて信じられなかった。それは一種の達成感だったに違いないが、それと同時に、これでは財団の思惑通りだと気が付いてがっくりした。奴らの狙いは、私を追い詰めて装置の真価を発揮させることだったのだ。


 不死身の爬虫類は名の通り既に身体の再生が始まっており、みるみるうちに身体が修復されていくのが見てとれた。一方、私は身体中軋んで煙を吹いており、もう動けそうにない。奴が私に報復してきたら、本当におしまいだろう。動きが止まっているうちに何とかしなくては。

 そう思っていると、背後の壁が左右にスライドして空間が現れた。壁だと思っていたのは巨大な扉だったらしい。私は財団職員に大急ぎで回収された。


 



 


 

 

この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。


Author: m0ch12uk1

Title: SCP-682 -不死身の爬虫類-

Source:http://scp-jp.wikidot.com/scp-682

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― 新着の感想 ―
普通に強いじゃんこいつ… それと倫理員会はどうなってんだよ…無申請の実験?それとも誤魔化してる?
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