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アノマリー -from SCP foundation-  作者: 梶原めぐる
戦闘用核工学擬似体 適応化実験
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生存する苦悩④

 目の前でシャッターが閉じられる直前、爬虫類の口元が僅かに動く。それは、こう言っている気がした。



「お ま え も お な じ」



 ……お前も同じ?私はその言葉の意味を図りかねていた。ズシンと重い音を立ててシャッターにより視界が遮られる。呆然とする私の元に、三影さん(あの女)が歩み寄った。



 「想像通りよ!実験は成功ね!よくやったわね、瀬戸さん!」



 私に掛けられた第一声は予想通りだった。やはり、三影さんはハナから私を有効利用するために改造したのだ。



「……三影瑠璃、なんで私をこんな姿にしたの!?」



 私が怒鳴ると、三影さんはきょとんとした顔で、困ったように首を振った。



「なぁに?なになに?貴方は財団の機動部隊員でしょ?貴方にとって喜ばしいことじゃないの?」


「誰もこんな姿にしてくれなんて頼んでいない!あんな……あんなアノマリーと無理矢理戦わされて。どこまで人の命を蔑ろにするの!?」


「馬鹿なことを言うのをやめなさい。蔑ろ?むしろ逆だわ。命を慈しみ、財団職員を愛して、財団のことを誰よりも考えているのよ、私。貴方の命を無駄にしないために、こうするしか無かったの。何が不満なのか、さっぱり分からないわ」


「……あんた、おかしいよ。……私は……財団職員である前に……起動部隊員である前に……。……一人の人間なのよ」



 傷の痛みが私を襲う。頭がくらみ、目の前がかすんだ。

 


「…………ちょっと、疲れが出ているようね。そこの、あなた。彼女を部屋まで輸送してちょうだい。クオリア値諸々のデータを纏めておいて。今日はこれでお仕舞いにするわ」



 私は輸送用のトラックの荷台に載せられ、部屋という名の格納庫に収納された。




 


 それからというもの——





「いやだ!いやだ、いやだ!!」



 叫びは聞き入れられない。私は傷が治る度に、どこかへ輸送されアノマリーと戦わせられた。あるときは、ドロドロに溶けた老人と、またある時は気味の悪い彫像と。その度に傷を負い、身体の一部が無くなって機械に置き換わっていった。だんだん、私が私じゃ無くなっていく。



「だだをこねないの、瀬戸さん!人類の為なのよ!?」


「もう戦いたくない!もう嫌……」



 私は、部屋の中で巨大な身体を縮めて丸まっていた。



「もう、分かったわ。今日のリハビリは中止にするから」



 根負けした三影さんは中止の指示を部下に出したのち、私の側に座った。ちらりと彼女を見る。何を考えているのか分からないが、これで寄り添ったつもりだろうか?



「……瀬戸さん、貴方に辛い思いをさせていることは分かっている。本当に申し訳ないと思っているわ」



 思っても無いことを、よくもまぁ平然と。私は聞く耳持たずでそっぽを向いた。



「……なら、私を解放して」


「今はできない。でも、貴方の有用性を示す根拠となるデータが揃ったら、貴方は外に出られる。機動部隊員としてアップグレードしてね」


「…………」



 だんまりを決め込む私に、彼女はぽつりぽつりと語り始めた。



「…………聞いて、瀬戸さん。私は——貴方のお父さんの望みを叶えたいの」


「……私の、お父さん?」



 思わず復唱する。私の父のことを三影さんは知っているというのか。



「ええ。貴方のお父さん——瀬戸博士のね」


「博士?私の父も……財団職員なの?」



 予想の斜め上を行く衝撃の事実に、いつの間にか私は身体を起こして彼女の話に食いついてしまっていた。



「えぇ、そうよ。知らなかったでしょう?……貴方のお父さん——瀬戸博士は、偉大な研究者よ。とあるアノマリーの研究をずっとされているけれど、並大抵の覚悟では出来ないわ。彼はこう言っていた。——”しあわせになれるとしても、我々の理念を忘れてはならない”って。……仕事熱心な彼らしいわよね。そんな彼が、娘である貴方にはしあわせになって欲しいとこぼしていた」


「嘘。父はずっと前に家を出て行って……」



 父は家庭に無関心な人だと思っていた。私が幼い頃、家に父が帰ってくることは稀で、母がそのことでよく私に愚痴を聞かせていたものだ。子育てを放棄しただとか、家族より仕事が大事なんだ、とか。いつしか父は本当に帰って来ることが無くなっていて、後に知った事だがいつの間にか父と母は離婚していたらしい。大人になって実は離婚していたと聞かされるまで、父は家を出て行ったのだと思い込んでいた。



「本当よ。貴方を含む人類のしあわせを願って、彼は研究に身を捧げている」


「…………」


「私、あなたをしあわせにしたいの」


「……………………ちょっと、一人にして」


「分かったわ。明日また来るから。じゃあね」


 

 複雑な心境を整理したかった。父のことなどすっかり忘れていたのに、まさか同じ職場に父がいるなんて思いもしなかったからだ。もう何年も会っていない。



「…………」



 私は、再び膝を抱えた。


 

後書き

この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。


Author: m0ch12uk1

Title: SCP-682 -不死身の爬虫類-

Source:http://scp-jp.wikidot.com/scp-682


Author: KanKan

Title: SCP-1374-JP -大団円-

Source:http://scp-jp.wikidot.com/scp-1374-jp

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クソトカゲも大団円に感染するんだろうか?
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