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アノマリー -from SCP foundation-  作者: 梶原めぐる
戦闘用核工学擬似体 適応化実験
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生存する苦悩②


「瀬戸さん。瀬戸さん。……。いつまでそうしているつもりかしら」



 三影と名乗った女性は、医療班らしく、私の様子を見によく訪れた。あれこれ質問したり器具を取り付けたりして私のデータをとっているのだ。私はというと、監視カメラがいくつもついた無機質な部屋に移送させられ押し込められていた。壁の監視カメラが私をじっとりと眺めている。四六時中監視されるということがこんなにも不快だとこの時初めて知った。


 

「まだ体調が悪いの」



 嘘だ。実際は、悔しいほど順調に回復している。しかしそう言わないと、私は酷い目に遭うのが分かっていた。財団のことだ。恐ろしい実験を計画しているに違いない。財団職員やヒトのことをなんとも思っていないあの連中にとって、私の人権なんかは無いに等しいのだから。



「うぅん……。数値は正常なのだけれど……。仕方が無いわね。今日はリハビリだけにしましょうか」



 そのリハビリとやらも、実験の一つなのだろう。だがこの部屋にはあまりにも何も無いので、気分転換も兼ねた運動がどうしても恋しくなるのだ。まんまと思惑にハマっている気分がして癪だ。昨日雑誌や本といった暇潰しを与えて欲しいと要望したが、呆気なく却下されてしまった。娯楽を与えずに私が退屈でおかしくなりそうなのも、財団の狙いなのだろう。



「ねぇ、いつになったらここから出してくれるの?」


「そうねぇ。貴方の調子が良くなったら、かな」


「……そう」



 三影さん(この女)の事は信用できない。騙して私の体をこんな鉄くさい化け物に変えた張本人だ。本当にこの監獄のような場所から出してくれるだろうか?彼女の言葉は信憑性に欠ける。



「それじゃあ、西館リハビリセンターへ行きましょうか」



 そう言うと、三影さんはインカムで誰かと言葉を交わした。すると、間も無く壁面の巨大なシャッターがキリキリと音を立てて上昇した。



「どうぞ」

 


 シャッターの先には出口さえ見えないほどの長いトンネル。湿った匂いが鼻をついた。

 私はのそりとベッド代わりの台座から上体を起こすと、脚に該当する鉄塊へ意識を集中させた。ギギ……と軋む音ののち、ゆっくりと立ち上がる。重い身体は不安定で、気を抜くと前方へ転んでしまいそうだった。これでもかなり慣れた方で、3日前なんかは何度転んだか分からない。

 

 ゆっくり1歩ずつトンネルを歩く。地面にはレールが付いており、かつて何かを輸送する為に使用された通路であることが伺える。折角なら乗せて運んで頂戴よ、と憎らしく思ったがこの長い歩行もリハビリの一つと考えると怠慢であるように思われた。

 

 トンネルは暫く使われていなかったらしく、鼠やらカマドウマやら、身の毛のよだつような生き物が明かりに照らされてにげまどっていく。とてもじゃないが、20代前半の女子を通らせるにはあまりにも似つかわしくない。その壁面にはアクリルかガラスが嵌め込まれており、あちらの様子がわからない仕様の窓が細長く続いている。あの窓から、一体何人の財団職員が私の事を見ているのだろう?想像しただけで怒りが込み上げる。

 トンネルはまだ長い。私はひたすら歩みを進めた。


 やっと目的のリハビリセンターへとやって来た私を待っていたのは、リハビリという名のデータ収集だった。様々なトレーニング器具のようなものを試される。

 絶対にここから出てやる。その想いだけが私を突き動かしていた。



 

 

* * * * *


 


 2週間後——私は長距離の輸送をされていた。睡眠薬を投与されて眠らされた挙げ句、檻みたいなコンテナに入れられていた。外の景色は見えないが、大きく揺れるこの感覚と、遠くから香る潮の匂いが海が近いことを物語っている。ここから出して、と叫ぶことはしなかった。この船や乗員全てが財団の息の掛かっていることは明白で、財団所有の運輸会社の名前が僅かなコンテナの隙間から見えていたからである。そこから差し込む光が、唯一の光源であり全てだった。

 そこを覗くようにして私は数日間を過ごした。どれだけ心細かった事か。自分が何故このような扱いを受けているのかも、どこへ何のために連れて行かれているのかも、全てが謎だった。

 食事を与える必要が無いからか、この航海中誰も私の元を訪れない。核が私の生命エネルギーとなった為に食事を必要としなくなり、空腹を感じることが無いのことが心底不思議だった。


 そしてある日、ずっと続いていた揺れがピタリと収まった。港に着いたのだと理解した。隙間から外を覗くが、どこか分かるような情報は得られなかった。それから浮遊感がコンテナ全体を包んだ。クレーンを用いてコンテナは船から積み降ろされ、これまた巨大なトラックに積み替えられたのだ。作業員の雰囲気やそこら中に見える文字からして、ここは英語圏のどこかなのだろう。

 そしてトラックに揺られて数時間後、目的地へと着いたらしい。隙間から覗くと、コンクリートで塗り固められた屋内に私は運び込まれていた。壁に描かれたロゴマーク——私はそれを見て確信していた。ここは外国の財団支部だ。



「ねぇ、私をどうする気?ここはどこなの?」



 ダメ元でコンテナの外に向かって私は久しぶりに声を発した。意外なことに、返事が返ってくる。



「セト マリナ。貴方はこれから実験に参加して貰います」



 声の主は淡々とそう述べる。やはり、私は実験のために輸送されていたのである。

 


「実験?私が?何の?そんなの、勝手に決めないで!」


「貴方の力を知りたいのです。貴方は膨大なパワーを秘めています。今から貴方にはアノマリーと交戦して貰います。」


「何言ってんの?嫌に決まってるでしょ」

 

「抵抗しないと貴方が死ぬだけです。その時は、また貴方を蘇生して再び同じ実験をするだけですが」


「あんた正気!?そんなこと…………」


 

 ——許されるわけ無い。そう言おうとして言葉を飲み込んだ。財団ならやる。


 

「コンテナの扉が開いたら、相手を殺すつもりで戦ってください。では、健闘を祈っています」


 

 そうして、コンテナの扉が開かれた先に待っていたのは——。



「……嘘でしょ」



 私は息を飲んだ。

 爛れた皮膚をした、巨大な体躯の爬虫類。財団職員で知らぬ者はいない。



 「……クソトカゲ!」



 噂に聞いたことがある。SCP-682。最悪のアノマリーの一つ。

 ——不死身の爬虫類だ。

この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。


Author: m0ch12uk1

Title: SCP-682 -不死身の爬虫類-

Source:http://scp-jp.wikidot.com/scp-682

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― 新着の感想 ―
イナミちゃんとの実験で目玉をいくつも増やすことで対策したのはめっちゃ笑ったw scp-5000で財団とクソトカゲの目的が一つになった時はヒーロー系アニメでお馴染みの「敵と共闘して世界を守る」的な感動を…
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