12月3日
私はできるだけのおしゃれをした。髪にワックスなんかもつけてみた。普段かけている眼鏡も今日はコンタクトレンズに替えた。気合いのはいりようからお察しかもしれないが、合コンである。
大学の授業が終わり次第、会場に向かうことになっていたが授業に身が入らないくらい気持ちは高ぶっていた。人望も人脈もない私にとって、例え恋人にならなくとも女の子と会話ができるというだけで、それはもう小学生にとっての遠足、つまり楽しみだったのだ。
会場には先に男たちが集まった。軽く自己紹介をお互いに済ませ、打ち解けておくことで、女の子とも打ち解けやすくなるという作戦だった。やがて会場に女の子もやって来た。今回の合コンには男女合わせて8人、つまり4人ずつの参加者がいた。私にとってはキラキラとしたまばゆい女の子が4人も入ってきたことで急に緊張が高まってしまった。特に私の向かいに座った子はそれこそクラスのマドンナとか高校の時に言われていてもおかしくないようなルックスをしていた。先述の合コンを開いてくれた天使のようだと思った女の子が本当の天使を連れてきたのかと勘違いしてしまいそうであった。
緊張こそしたが、会自体は順調に進んだ。自己紹介をし、お互いの名前や大学、アルバイトなど無難なことを聞き出し、そこから会話は滞りなく進んでいった。
本当の天使ちゃんは、瀬尾さんと言うらしい。カフェで働いており、冬はスノーボードをやるのが趣味であるそうだ。私は向かいに座っていたこともあり、よく目があった。これはモテない男を勘違いさせるには十分であった。
(私に気があるのでは?)
(この後の展開も考えられる?)
(二人で抜け出しちゃったり…?)
などと私の頭のなかの妄想は都合のいいようにしか働かなかった。
だが、会が最後まで終わっても連絡先を交換することはなかった。向こうに気がないから、ではなく、私がそれを望まなかった。
私が連絡先を交換しようと思ってもその度に脳裏にちらつくのは清水さんのことばかりであった。




