第五話
5.
「また来たの?」
あれから、セルは『また』と言われるくらいにはこの森にやってくる。
「いつも言ってるだろ?『また来る』って」
どうも、誰にも邪魔されず昼寝のできるこの場所が気に入ったらしい。一応、此処は『魔女の森』だということは理解しているのだろうか?しかも、この森の主に(分かっているのか甚だ疑問だが。)昼寝をしに領地に無断(かどうかは微妙だが)侵入してきたと正面切って言うコイツの図太さと言えばかなりの大物であるし、適性も十分…やめよう、ここからは私は知らないことになっている。
「来るなら来るにしてももっと警戒心を持ったらどうな訳?」
例え、先祖返りの紫水晶の瞳が魔術の『無効化』の力を持っているとしても使いこなせないんじゃこの森に取り込まれてしまうというのに。
「そんなこと必要ないだろう?春月がいるんだから」
そう言われても仕方がないのだ。セルが森に来たと知れば、マントを必ずかけに行き、彼が目覚めるまでその場を離れることはない。
「私が来ることができなかったらどうするつもりよ…」
実際はそんなことは無いけれど。
「ありえないだろ、それこそ」
確信があるかのように言い切るセルに嫌な予感がする。
「この森に入った奴はうちの国の者も大勢いるけど、帰って来なかったものは一人もいない」
ぴくり、と後ろに回した指が震えた。
この数年の間に何があったというのだろう?コイツはこんなにも頭の切れる奴だったか?こんな含みのある言い方をする奴だったか?
確かにこの言葉の通り、この森の資源を求めて狩人やきこりたちは大勢入ってきた。大事な棲みかを荒らされることは気に食わない(というか、仮に外に持ち出せたとして役に立つとは思えない)けど、仕方のないことだとも分かっているのだ。彼らにも生活があり、生活を守るために何かを犠牲にする。私の生活と何も変わりはしない。…第一、消したら消したで騒ぎになる。私はそれを望まないのだ。
それをセルは分かっている。情報を手に入れ、分析し、この森を管理している私に気付いている。それを利用してこの森にきていると考えるとかなり、性質が悪い。
「いつか痛い目にあっても知らないからね!」
腹立たしいものだ。努力してきたつもりだがまだまだ一人前にはなれないらしい。悔し紛れと分かっているが言ってやった。
「覚悟しとく」
笑いながら言うコイツにはいつか絶対仕返ししてやろうと思う。
憎まれ口を叩いてはいるが、何だかんだ言ってこんな時間が好きだった。狩人やきこりたちは見てはいけないものを見て、記憶を弄らざるを得なくなる。だから、私のことを知る者はいない。けれど、セルには必要がない。名を握り合う関係だから。どちらかが動けば傾いてしまうシーソーのように危うい関係…本当なら、緊張感を持っておくべきなんだろうけれど。
「また来る」
その言葉を聞けば、
「またね」
と言ってしまう。
きっと、まだまだ半人前の私は甘えているのだろう。
だから、彼女は気が付かなかった。
予知した未来の時間をはかり違えていることに。
波が静かに近付いていることに。
影が背を叩くまで、望んでいるよりも残っていないことを、誰も知らない。
お疲れさまでした!!今回は必要ない回だったのでは…と思われるかもしれないですが。一応、端々にこの先のことを織り交ぜさせてもらった、筈です(多分)。
今後も皆様に楽しんで読んでいただけるよう、楽しみながらキーボードを打たせていただきます。まだまだ続くのでお付き合いよろしくお願いします!!




