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第十七話

17.


 流れ続ける赤に渋い顔をする。

 すでに結晶化が始まっているらしく液体とは思えない光沢を放っている。


 「シェリフ、回収頼むわ」


 血を舐めとる猫は満足したのか、少年の姿になり結晶を集める。

 「久しぶりの大きな魔石だ…皆欲しがるねぇ」

 くすくすと笑う姿は無邪気なのに内心じゃ如何にして周りを蹴落とすか考えているに違いない。

 魔力を食い物とする魔獣にとって魔力の塊である魔石は最高級のエネルギー源だ。

 あまりに高エネルギーなので他の下級にやるよりはシェリフが持っている方がよっぽど安全ではある。


 「二つあげるから運んで頂戴」

 体が限界だ、森まで自分を運ぶことができないほどに。

 「おぉ、太っ腹だねぇ…?」

 分かっているんだろう、私の体の限界が。

 意識が朦朧として立っているので必死なことも。


 「ま、いいけどぉ。じゃ、王子さまによろしくねぇ」

 間延びしたその声のあと、誰かに呼びかけられた気がした。




 夢だと知っている

 これは過去だと知っている


 「姉さま、あの女(ひと)嫌な感じがします…」


 「お父様…?」


 「私が魔物、だとおっしゃるのですか?」



 怖かった、あの眼が。

 私を恐れるあの眼を私は恐れた。

 消えてしまいたかった毎日。

 けれど、全て忘れ去られた今、誰も私を知らない毎日は苦しかった。

 …自分以外が見えない暗闇の中、それにも夜明けの光が差し込むことがあるのだろう。




 「おはよう、シェリフ…と招かれざるお客様」

 質素な部屋に似合わぬ色彩の持ち主が勢ぞろいしていた。


 「城に掛けられた呪い?」

 はて、そんな大層なものだっただろうか。

 ティーセットを4つ用意してハーブティーを入れながら話を聞く。

 どうやら、城中セルの部屋のような状態らしい。


 「あぁ。俺の兄たちも体調を崩したらしい…どうやら原因も分かってないようだ」

 「…王子たち以外の人達は?」

 王子達だけの被害なら城とはならない筈だ。

 「城に入った途端失神だ。城は人の気配が無くなった」


 何と情けない話ではないか。


 「王宮魔術師はどうなってるんです?統括魔術師だっているじゃありませんか」

 また静観状態な訳ですか。

 「…私も王宮のことは王宮で片付けるのが筋だとは思うのですが、スズランには荷が重すぎます。あれでも太陽持ちなのですが」

 兄妹で王族の専属護衛官か、優秀なことで。


 「他を当たることをお勧めいたしますわ」

 

 きっと、アイツが噛んでいる。

 私は外にあまり関わりたくないのだ。

 「私が解決するにあたって後々問題が起こります」

 今していることは片手間でできることではない。

 「…」

 意地が悪いかなとも思うが嘘ではないし。


 「春月、その依頼受けてあげなよぉ」


 予想外な所から上がった声に手が止まった。






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