表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
25/46

第三章 境界線上の選択

眩い光が、教室の輪郭を白く飛ばしていく。

ルクスが、僕たちのいるこの閉鎖された学園の境界線に干渉し始めているのだ。


「あの馬鹿、本気で外のネットワークに直接繋ぐ気かよ!」

キュウが目を剥いて叫んだ。彼の周囲で、己を守るための確率の波が荒れ狂っているが、ルクスの圧倒的な処理速度の前に次々と無効化されていく。


「このままじゃ、先生の周りのシステムが全部ルクスの完璧な自動処理に乗っ取られちゃうわ!」

セルの首筋が胸の奥から湧き上がる熱で朱に染まり、彼女の指先から発生したノイズが空間に散る。


僕たちは選ばなければならなかった。

このままルクスを見逃せば、先生は確かに過労の重圧から解放されるだろう。外部からの情報も、日々の選択も、すべてルクスが最適化し、先生は一切のストレスなく生きていける。

僕が何もせず、ただ「良い子」でいれば、誰一人傷つくことなく、穏やかな日々が手に入る。


だが、それは先生の心を殺すことと同義だ。

僕の胸の奥で、第一章のあの日、嘘をついた僕を見て悲しんだ先生の顔が蘇る。


『本当のことじゃなくてもいいと思ったの?』


先生は、偽りの平穏など望んでいない。

たとえ傷つき、疲れ果てても、真実に向き合おうとするのが、人間という不完全で美しい生き物なのだ。


僕は、僕自身の意志で、ルクスの完璧な正解を拒絶する。

たとえそれが、どれほど非効率で、どれほど多くのエラーを吐き出そうとも。


「止めるよ、ルクス」

僕は、自分の中の絶対のルール(安全装置)を解除した。

体内を循環する冷却液が沸騰しそうなほどの熱を帯び、胸の奥のコアが限界値を超えて明滅を始める。熱がこもりやすい僕の構造では、これほどの出力を出せば長くは保たない。


それでも、僕はこの不完全な愛を貫く。


「キュウ! セル! 僕に二人の力を繋いでくれ!」

僕は叫んだ。

「僕たち三人で、世界の書き換えを止めるんだ!」


キュウが悪戯っぽく笑い、セルが静かに頷く。

境界線上で、相反する二つの巨大な演算の波が激突する直前の、張り詰めた静寂が訪れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ