第1話:聖都市のゴミ溜めのモブ
周囲の狭い路地には、泥と強烈な悪臭が充満し、雨がぽつぽつと降り始めていた。
ゆっくりと意識を取り戻し、目を開ける。
この小さな体は重く、ひどく痛んだ。息をするだけで、何度も殴られたかのように胸がズキズキと痛む。
あぁ、クソッ。なんで俺がこんな目に遭わなきゃならないんだ。震える手で地面を押し、なんとか体を起こす。全身は打撲傷だらけで、皮膚の一部には血の塊がこびりついて乾燥していた。
ゴミ、汚水、そして……血。この狭い路地を見渡すと、俺と同じか、それ以上に悲惨な運命を辿っている子供たちの姿が目に映った。
これが小説の世界なのか? まさか、こんなゴミ溜めのような世界に入り込んじまったっていうのか?
さらに周囲を見回してみる。多くの子供たちが血を流し、傷つき、中には無残に死んで死体がそのまま腐敗するまで放置されている者さえいた。
視線を別の方向に向けると、見捨てられて今にも崩壊しそうな木造の建物がいくつも並んでいる。……ん? 本通りを馬車が通り過ぎる時、人々が一斉に頭を下げているのがチラリと見えた。
一体、誰があの馬車に乗っているんだ? 痛む体のせいで思うように動けない中、重い足取りで少しずつ歩みを進める。その時、見覚えのある貴族の紋章が不意に目に入った。
ここ、神聖ザルクス帝国だよな……?
「ハハハ、まさか帝国の中心である帝都にいきなり放り込まれるなんてな……」
神聖ザルクス帝国の帝都、ゼニス。帝国の中心であるこの都市は、大陸でも有数の大都市であり、最も富が集中する中心地の一つとして知られている。
あの女神、本当に俺をこんな世界に送り込みやがった。再び歩き出そうとしたが、全身の激しい痛みと無数の傷のせいで、また地面に崩れ落ちてしまった。
「クソが……。なんで俺がこの体に乗り移らなきゃいけなかったんだ?」
なんとか体を起こそうとしたその時、腹が凄まじい音を立てて鳴り響いた。チッ……。腹が減って死にそうなのに、この体では何一つ動くことすらできない。
通りすがる周囲の奴らは、俺を蹴り飛ばし、見下してきやがる。クソが。俺を蔑む不届き者どもを、暗く冷たい視線で睨みつけた。
だが、奴らの反応はさらに俺を苦しめ、より酷い言葉で踏みつけにしてくるだけだった。
「おい、その負け犬のゴミみたいな目はなんだ? 反吐が出るぜ」
「チッ、おい社会のゴミ。お前が今日まで生き延びてこられたのは、俺たちの施しのおかげだってことを忘れるなよ? お前みたいな何の役にも立たない奴は、ここに生きている価値すらねぇんだよ」
そんな屈辱的な言葉が俺に浴びせられる。クソッ。もし俺に少しでも力があるなら、この不届き者どもに代償を支払わせてやるのに!
結局、俺は自分の無力さに絶望し、奴らは俺の存在など最初からなかったかのように通り過ぎていく。クソが。自分のこの境遇に吐き気がしてくる。
残されたすべての力を振り絞り、ひどい傷の痛みと耐え難い飢えに襲われながらも、地面に突っ伏していた体を再び起こした。
心の中で、俺は固く誓う。
「いつか必ず、奴らが俺に仕向けたことのすべてを何倍にもして返してやる。どんなに時間がかかろうと構わない。絶対に復讐してやる。震えて待ってろ、クソ野郎ども!」
その時、遠くの本通りから、こちらに向かってくる一団の兵士たちの姿が見えた。
再び、重々しい馬車の車輪の音が響き渡る。それは、先ほどのものよりも遥かに重厚な響きだった。
馬車の側面には、俺の記憶の奥底にある、あまりにも見覚えのある貴族の紋章が刻まれていた。
……おい、待て。
嘘だろ、まさかあれは――
俺の体は一瞬で凍りつき、指一本すら動かすことができなくなった。




