第7話 太陽って全然違う?
「ツカサはアレか?星が星を引っ張る力は重力じゃが、ガスだと認識されるほどの弱い重力で、1万倍もの質量を引っ張り続ける事が出来るのか?とか、そういう事かえ?」
「ありがとうございます。今の言葉、スコンと嵌りました。そうです、表面重力と星同士の引力は乖離している様な気がしたんです」
「まあ、現象的には乖離しておらんが、言葉の意味としては乖離しておるな」
「「んん?」」
「では、説明じゃ」
太陽の断面図が大気のある状態に戻って、表面近くに点線が表示された。
「いま表示した点線が、「重力の転換ライン」。つまり、内向きの重力と外向きの重力が釣り合う場所、というラインじゃな。つまり、重力で観測すると、この星はこうなる」
点線の内側が奇麗に無くなった、空っぽの星が出来た。
「このように、あり得ない形状の星として観測される。この状態で周りの星を引っ張れるだけの引力を、がらんどうの星が創れる訳が無いように見えると、そういうのじゃろう?」
「は、はい。そうです」
「これを説明するのは…さっきの浮力で説明した方が良さそうじゃな」
言うなり、2つのボールと、10mくらいあるでかいメスシリンダーが現れた。
「コレは水圧で変形しない比重0.9の球じゃ。こっちは上が水面、下が深海の再現じゃと思え。そして、上と下に球を入れると、上に上がっていく」
球が2つ、上と下にするっと入って、その後、浮き上がっていく。と言うか、上の球は即水面に到達し、下の球は未だ上に向かっている。
「さて、ツカサよ」
「あ、はい」
「あの2つの球の浮力は同じか違うか答えてみい」
「え?いやそんなの同じに決まってますよ。水圧は違いますが、浮き上がる力は同じじゃないで…あっ、そうか。密度は高いけど、密度差が小さくなってしまってるから、重力は小さく見えるのか。じゃあ、太陽本体の重力は小さいけど、周辺の密度差は大質量分の変動があるって事?」
「ほう。まあ、そう言う事じゃな。つまり、現象としては太陽の重力が引力の働きをして、幾つもの惑星をソコに留まらせておるように見えるが、実のトコロ、表面の密度差よりもはるかに大きい密度差が、電場の影響が少なくなった辺りから始まっておる。太陽の重力は、実際の引力よりも遥かに小さい事になる訳じゃな」
「現象を、重力イコール引力としても不都合は無いけど、見えない質量を加えた現象が発生しているから、言葉の意味で考えれば、重力ノットイコール引力になる、と。成程」
「コレ、宇宙の方程式が全部切り替わる話だね」
「まあ、そうなんだが、それは意味の無い話だから止めよう」
「はーい」
「ではまあ、折角じゃから大気表面と表殻の関係性でも話しておこう」
「さっき、電子や原子が加速されて熱を有した、とおっしゃいましたが、何か他に言うべきことがあるのですか」
「知りたくなければ言うべきことでも無いが、火山の話をしたであろう?」
「あ、はい。でも火山は只の火山ですよね?」
「ぬしゃらが知っておる火山を豆鉄砲としたら、惑星のソレは大砲や機関銃で、太陽のソレは…レールガン?ICBM?くらいの差があるが、次の話に移ろうか?」
「ちょちょっと待って下さい。惑星の話はまた後で伺うとして、太陽の火山が大陸間弾道ミサイルとかレールガンとかの例えという事は、何万倍もの差があるんですか?」
「現実的にはもっと有るぞ?何せ、ぬしゃらの言う処の4つのガス惑星は、全て太陽の火山から生まれ出て来たものじゃからな」
「「はああぁぁぁあ!?」」
「何を驚く?さっきヒカルが宇宙の方程式が変わると言ったであろう?ぬしゃらの理論なんぞは、重力のみで見ていた狭い視野のファンタジーみたいなもんじゃ。膨大な質量がこんな狭い範囲に幾つも塊を造る訳が無かろう。歴とした過去の事象であり、4つともそっくりなのは正しく理由があるんじゃよ」
「そ、そんなはずは…」
「まあ、後で詳しく見せてやろう。とりあえずは、火山じゃが、赤道、から上下に少し離れた所に幾つも存在し、太陽の活動が盛んになると、大量の噴煙を上げておる。これは、視覚的にも判る現象として確認されておるが、何じゃと思う?」
「活動が盛んになった時の変化と言うのは、黒点以外には無いと思うのですが、火山と関係があるのですか?」
「む?何故に両者を因果で結ばんのじゃ?これ以上は無い位の因果が有ろうに」
「げ、原因が火山で、結果が黒点、ですか?大気は20万キロの厚みがあるんですよね?そんなに上空に影響が出るほど…いや、さっきの話なら、塊が宇宙に飛び出していく位だから、届くのか?届くなら、電子が高速で動き回っている場所に、大量の邪魔物が混ざって来るんだから、動きが悪くなる?遅くなる?エネルギーが失われる?つまり、温度が下がる?それは…黒点に、なる気がする。なるな。1000度から2000度下がればまんま黒点だ。じゃあ、本当に火山の煙で黒点が出来るんですね」
「じゃからそう言うておろう。噴煙は幾つかの周期で増減があるから、黒点の数は太陽のバロメーターみたいなもんじゃな」
「また理解した後に、聞き捨てならない言葉を放り込んできますね。黒点の基本周期は11年ですけど、幾つもの周期があると言うのはちゃんとした因果あっての言葉なんでしょうか?」
「あ~。ちょっと説明が面倒臭い所に喰い付いてきたの、ツカサよ。ソレを説明するには、太陽の形成から説明せんといかんのだが、聞きたいのか?」
「勿論です!」
「そうか、仕方あるまい」
言うなり、空中の表示がふっと消えた。床が真っ黒になったかと思えば、銀河系が床に映った。
「太陽系がこの辺じゃとして、ぬしゃらはこの部分を何と称しておる?」
「ええと、オリオン腕とかオリオン渦状腕と言ってますね」
「うむ。では拡大してみるぞ」
床に、銀河系の何本かの腕部分が広がった。と、同時に真上の空中に直径1m程の透明な筒2本を螺旋状にした、なんだか良く解らないモノが現れた。
「コレは、現実的には見えない電子の流れを可視化したもんじゃ」
と言うと、筒の中に更に直径50cm程の2本の筒が螺旋状に現れ、4本になった筒の中に更に2本づつ、25cm程の筒が8本現れて、3重の螺旋を形成した。
「まあ、概念だと思え。腕1本分のでかい電子の流れが、この束じゃ。この束が2つ螺旋状に流れており、この中にまた2つの束、更にその中に2つの束、という風な流れがある。これはニュートリノの流れとは別物じゃが、そこら辺は詳しく話さん。要は、この電子の流れが、物質を集約する能力がある為、星はこの中で出来上がる。そして、集まり具合で、片方に引き寄せられ1カ所に集積されるか、2か所同時に集積されるか、それとも4か所か、という風に別れる。ええと、連星?とか言うのかえ?それは、物質の集まり具合で決まる、という事じゃな」
流れの中に、1つの粒やくるくる回る2つの粒、2つの回る粒々が2つ集まって4つが筒の中をくるくる回っているのが、別々の場所に現れた。
「このうちの1つが太陽じゃが、集積初期の段階なら電束と連動してくるくると回っておったが、質量が増えると流れから外れるようになる。しかし、今度は何度も何度も電束と交錯するようになり、その度に大量の物質を受け取り巨大化する。そうして、先程の断面で見たような変化が起きて、太陽は発電機の様な機能を持つに至る訳じゃな」
1つになっていた粒々が大きくなり、形が判る様になるとピンポン玉位のオレンジの塊が、流れの方向と回転軸が同じ向きで回っている。その周りにさっき見た、外向きの電流の流れが線状に表記され、回転と同じ様にくるくると回っている。
「こうなって、漸く先程の火山の話に繋がるんじゃが、どう繋がっておるか判るか?ツカサよ」
「ええと、電子の流れが太陽に当たって来た時は、大量の電子流で熱水の対流が加速されて放出されるエネルギーが増加する。それに伴って上層の溶岩流も加速されて、それに繋がった火山活動も活発になって、大量の噴煙が上がり、黒点も増加する。加えて、周期がばらばらの電子流が太陽を通過したりしなかったりするから、1つの電子流が数種類のタイミングで交差するのを、幾つかの周期と言ったんですかね?」
「まあ、ほぼその通りじゃが、ココが違うの」
かみさまが太陽の周りの電子の流れに触れると、その数が何倍かに増えて広がった。そして電子流の筒にソレを入れると、その範囲が更に広がった。
「電子の流入でエネルギーが増えるのはその通りじゃが、コレがズレるとどうなるか。見ておれ」
大量に粒々が流れている所から太陽が外れると、電子線の流れが乱れていく。更にズレると、電子流によって電子線の方向が逆向きにどんどん変えられていく。それにつられて周辺の電子線の向きも徐々に変化し、とうとう太陽本体の電子線の向きまで変わってしまった。
「とまあこの様に、流入する電子が入っていく場所が一旦ひっくり返ってから、次の電子流で元に戻ると言うのが繰り返される。つまり1周で順流2回、逆流2回が起きる事になる訳じゃな。ここまで言及出来れば満点じゃったの」
「流石にそこまでは至りませんよ。まあでも、自分の中にヒントがあったのは、説明を聞いて思い出しましたけど」
「兄さんが言ってるのって、「磁場のポールシフト」の事?」
「ああ。確か11年周期で磁場が入れ替わるんだったのを、さっきの説明で思い出した」
「ぬしゃらの言う周期は4分の1周期じゃの。最小の周期が半世紀弱で、確か次は2世紀強、その次は10世紀弱じゃったか。まあ、今の太陽は、以前に比べるとかなり内圧が抜けたもんじゃから、大人しいもんじゃ」




