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第16話 地球の変遷4


「ここの南部の円形に近い大陸性地殻。ヒカル、ココは何と言う?」


「どう見ても南極大陸なんですけど、さっきからそう思ってたんですけど、そんな大災害で出来た形状だと思ってなかったんで、結構衝撃ですね」


「まあ、理解したくなかった感覚でもあったんじゃな。言うた通り、南極大陸は星間雷電流が地殻を融解せしめた結果出来上がった、非常に解り易い形状をしておる。ヒカルはオーロラの範囲を知っておろう」


「あー。そう言えば、オーロラの範囲が南極大陸の大きさに近いのって面白い一致だなーって思った事あった。あれ、電流が一番強くなるラインだから形が似てただけだったのか」


「そうじゃの。昔より弱くなった所為で、位置も範囲も多少ズレはしておるが、あの形は融解した表殻そのままの形状になっておる故、最初に分割された大陸性地殻という事になる。それに続いて何が起きていったかと言えば、溶岩と一緒に熱水が出て来おった」


「熱水って、何千キロも地下にあった対流層の事ですか?」


「そうじゃ。この熱水放出が表殻が蒸発した一部分で発生し内部対流の低下を促した為、外向きの重力が小さくなってしもうた。つまり、内向きの重力が大きくなった。これが先刻から言うておった重力豹変の流れじゃ」

 太陽の話の時に出て来た様な矢印付きの断面図が現れて、地表近くに点線が示されていた。それが、下の方に雷電流の光が走ってから徐々に変動を始め、途中にあった溶岩と深層にあった熱水が同時に噴き出してきた。と、同時に大きかった内側の矢印が小さくなり、内向きになっている外側の矢印が大きくなり、点線が地中深くに移動していった。


「この豹変は、あらゆる変化を増強させる働きをした」


「重力が増大した事で、地上の災害や生物への影響が増えたという事でしょうか」


「いいや、そちらではない。主に水面下又は地下への影響の方じゃった」


「先程の話からすると、高圧力になる事によって化石・石油・石炭などの化学反応が加速化されたという事でしょうか」


「うむ。それも1つ。じゃが、豹変と言う意味においては溶岩や熱水への圧力が、単純に3倍になったという意味以上の変動が起きた。それが岩盤層全周破断じゃ」


「えーと、溶岩帯の両側にある岩盤帯が全周、つまり…地球一周分破断…は?南極大陸一周分じゃなくて、丸ごと割れたって事ですか?」


「うむ、そうじゃ。形状的に最も脆かった鋭角状の地形近くより東西方向に2本の破断が生じ、そのまま北上しながら割れていった。ところが他の場所、即ち先程の鋭角地形より120度ほど離れた別の位置からも破断が発生し、4枚の表殻に分断していった」

 さっきの断面がひっくり返って、南極方向から見た球面図になった。そこで南極大陸部分の分断と同時に、とがった場所から両側に2本。オレンジ色の光が外側に向かって走り出した。その線が見えなくなってから、別の場所に2か所光が走り、外に向かって進みだした。確かに、4つに分割されている。


「先程も言うたが、この状態においは本来溶岩は泥水に隠れて見える状況では無い。溶岩は大陸性地殻とかいう層の下まで浮き上がって来たが、その部分で膨大な液体に触れて固体化していき、海洋性地殻となっていった」

 南極大陸が徐々に他の大陸性地殻と離れ、その間に黒っぽい色の海洋性地殻が広がっていく。それと同時に赤道方向に向かって行ったひび割れからも海洋性地殻が広がり始めた。


「内部は見えんが、こうなるとひび割れの所為で岩盤層が南側で膨らみ始める。内部は多量の熱水が気体に変わった為。外部は、溶岩が増加した重力で高圧化し、ひび割れた部分を膨大な溶岩がどんどん塞いで固まっていった為じゃ。そして、先ほど言うた一周破断は、亀裂は入っておったが、南部に出来た幾筋もの断裂で大部分の溶岩が南部側に抜けた為に、北側の一部は溶岩湧出まで行かんかった。そして、ここの2本は今の北緯60度辺りで合流した」

 南極側が見えていた球体が、パッと広がって地図になった。菱形をつぶして両側を丸くした感じの地図だったが、南側から伸びるオレンジの線が北に向かっている地図だった。じわりじわりと南極と上4つの地殻が離れていく。オレンジ色の線が移動している感じではなく、黒っぽい地盤がどんどん形成され広がっていく様に見えた。そして、左端の線が一番上まで進むと、かなり右に進んでから下に降りてきた。それと同時に、右側の2本の線が大分上の方で合流し、折りて来た線とも合流した。もう1本の線は赤道より北で止まっていた。


「えーと、ぬしゃらの言葉で海嶺と言うのがこの時期に出来たこのラインじゃ。因みに海溝はこの時点で存在しない」


「えっ?今は太平洋に何筋もありますけど」


「今はそうじゃな。と言うか、海嶺が海溝に変容しただけで、ひび割れという意味では変化しとらんのじゃがな」


「えー?そんな事あるんですか?海嶺って溶岩が出てくる場所だから、そこが凹む要素が見当たらないんですけど、どうやって潜り込んだりするんですか?」


「溶岩が延々と出てくるだけなら確かに潜り込む要素は無いが、先ほど言うた様に北側の溶岩は流出量が少なくなった事と、海洋性地殻とやらが滑るように移動した為、噴出位置がズレてしまうという条件が重なった為じゃな」


「あーっと、割れ目が移動して、下から押し出す力が無くなってしまったから、押し合っていた地殻同士が地中にめり込んでいった、感じ?」


「まあ、そんな受け取り方で構わんじゃろう。ほれ、今の大きさと大体同じになった大陸性地殻と海洋性地殻の分布がこのようになる」

 そう言われて目の前の地図を見ているが、今とかなり違う地形が見えている。いや、大西洋みたいな場所は、何か判る感じの形状ではある、大陸移動説を言い出した人が気にしていた南アメリカと、アフリカの海岸線の形状は完全に一致している様にしか見えないからだ。とは言っても、アメリカ大陸らしき地形が何やら幅広で、南北が繋がっている。

そして、ユーラシア大陸が又大分変だ。右下に長いから、オーストラリア大陸にまで繋がっている感じだろうか。しかし、一番おかしいのが太平洋の中だ。

どう見ても、相当に大きな大陸みたいなのが2つある。北に走った割れ目が繋がった後、更に真ん中らへんが分かれていったので、大雑把に言えば平行四辺形の様な2つの地殻が鎮座しているのである。


「あの、現在影も形もない大陸っぽいのが太平洋にあるんですけど、これは何ですか?」


「ぬしゃらの先祖はミヨイとタミアラとか言うておったな」


「え?名前あったんですか?って言うか、御先祖様が名前まで付ける位の場所だったんですか?」


「後年の話じゃ。まあ、聞きたい事は何故今存在しないのかじゃろうから答えるが、それより凡そ1万2千年後に消失したからじゃの」


「いやいや、待って下さい。消失って今の太平洋の何処に消えるって言うんですか。確かに、ムー大陸の沈没とかいうおとぎ話みたいな伝説はありますけど、太平洋の何処にも大陸性地殻の痕跡は無いんですけど」


「ぬしゃらは大陸移動説は信じておるじゃろう?」


「今の話でも出て来てますからね。古代のシミュレーションとかは無理にしても、地殻が割れて移動したというのは信じられます」


「では、その延長上に、地殻重合説という理論が在ったらどう考える?」


「は?」

「んん?」


「重合…と言うと、重なり合う事ですよね。え?地殻が重なり合うんですか?いやいや。厚さが4キロメートルもある重量予測が出来ない程のべら棒に重い岩盤ですよ?それが重なったら厚さ8キロにもなる洒落にならない地殻が出来ちゃうじゃないですか」


「そうじゃな。3枚重なれば厚さ12キロじゃの」


「えっ?」


「何じゃ?」


「そうおっしゃるという事は、8キロとか12キロとかの厚みのある場所が存在するんですね?」


「そうじゃな」


「そう来ましたか…。ひかる」


「何?」


「アイソスタシーの原理は覚えているか?」


「勿論。マントルの上にある地殻はその厚みで地表の高さが変わる事になる考え方だよね。大陸の厚みが4キロなら平衡点は地下2キロで、厚みが8キロなら標高が2キロ。厚みが12キロなら標高が4キロくらいになる計算だね」


「標高2千メートルとか4千メートルとかの高原って主にユーラシア大陸にあったよな」


「そうだけど…もしかしなくても、大陸性地殻がソコにあるってコト?」


「いや、バカみたいな話だけど、辻褄が合う話だからな。痕跡が無いから無くなったって考えられない、最初から無かったって言う結論にしかならなかったのが、荒唐無稽に聞こえる話でも、天変地異で地殻がソコに移動してしまったのなら、バカバカしい過程であっても矛盾が無いようにしか思えないからな」


「まあ、地図の色分け思い出してるけど、確かにパキスタン奥地辺りからロシア東南部辺りまで標高が高くて広く分布してる高原はあるね。でも、今見てる太平洋の地殻の大きさと高原の全体的な面積って、相当差がある気がするんだけど」


「形状はかなり違うが。今の高原は大体ここいらに存在するな」

 かみさまが言うと、ユーラシア大陸っぽい地形に薄茶色、茶色、こげ茶色の色が付いた。多分2千メートル、4千メートル、それ以上の山脈とかが表記されたっぽい。確かに、面積で言うと太平洋の大陸はかなり大きく見える。


「まあ、ヒカルの言い分も最もじゃが、極論を言えば重なる過程で嵩が減るから小さくなるのが当たり前なんじゃよ。身も蓋もない話じゃがな」


「四方が崩れていって、しかも重なったりするから更に崩壊する。とは言え、実際に一定標高の高原が広範囲にあるんですから、説得力ありますよね」


「儂は説得に力を与える為に話をしておるのではないぞ」


「あ、はい。事実と言うか史実と言うか見えた事を話しているだけなのは判ってます。自分に対しての説得力がある、という話です」



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